なんで異世界来てまで法務やらなあかんねん

みみずく

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第1章 不良品買うなボケ

1.約定書は作ってません

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翌朝。
ギャース、ギャースという叫び声で目が覚めた。窓を開けて空を見上げると、見たこともない鳥…のようなものが飛んでいた。怪鳥、とでもいいだろうか。
あれが魔物だろうか。
昨晩、おっさんから渡された資料には、この世界には人の暮らす国がいくつかあること、魔物の縄張りになっている地域があることが書かれていたが、詳しいことはわからない。

おっさんとは日本語でコミュニケーションがとれたし、約定書を作れと言うくらいだから、日本語での取引やらはあるのだろう。
そもそも、俺に書けるのはせいぜい日本語と英語の契約書だし、約定書とやらも日本語か、せめて英語で作らせてほしい。もしそれができないなら、わざわざ俺を転生させた意味がない。

そういえば、契約以外のコンプラ関係(その概念があるのかどうかすらわからない)も俺になにかをやらせる気なのだろうか。

ベッド脇の椅子に腰掛けてぼーっとしていると、ノックの音がした。

「ハマモト!起きているか?クローゼットにこちらの世界の衣服があるから、着替えて出てきてくれ」

おっさんの声だ。
こちらの世界の衣服…といっても麻布のシャツに、綿のズボンのように見える。元いた世界のそれと大差はない。

そういや、おっさんもこんな服を着ていたな。
こっちの世界に来たときから来ていたジャージを脱いで、着替える。

部屋から出ると、いきなりおっさんは仕事の話を始めた。

「さっそくだがな、隣国との取引で少しトラブルが起きたんだ。対応してくれないか」

そうだ、トラブル対応も法務の仕事だ。

「わかった。で、どんなトラブル?」
「うむ、隣国から薬草を購入したのだが……不良品が混ざっていたようでな。クレームをつけたい」
薬草、ね。
なんとも異世界だ。

「…取引相手は国なのか?ま、詳しい話は朝飯食ってからだな。関連する契約書…じゃなかった、約定書を準備しといてくれ」
「そんなものはない」
俺は耳を疑ったが、異世界に飛ばされてることを思えば小さなことだ。

「まあ、ええわ。とりあえず飯や」
「君は腹が立つと訛りが出るな」
うっさい、ボケ。

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