65 / 115
魔王が俺の子どもを孕んでいる
しおりを挟む
別の国の王様に謁見《えっけん》するために俺達は馬車に揺られていた。謁見というのは目上の人に会うことである。
街の復興だったり、国として独立するために大臣を任命したり、色々と忙しいのにワープホールを使わずにわざわざ馬車に揺られていた。
なぜなら俺1人で行けばいいという問題ではないからである。
軍事力を見せるために騎士団も連れて行かないといけなかった。騎士団は警察である。ちなみに我が街の騎士団は馬に乗っていない。ペガサスに乗っているのだ。総勢50人のペガサス乗りが謁見のために付いて来ていた。
それに王様との食事もあるので、2人の妻も連れていかないといけなかった。
ナナナは食事のマナーができていないので、アニーだけを連れて行くつもりだった。
だけどナナナも付いて来てしまった。この日のために食事のマナーを完璧に覚え、貴族の女性としての振る舞いを覚えて来たらしい。マジかよ?
どうしてこんな邪魔臭いことをしているのかというと、俺の街が国として独立するためである。
独立するために動くのは世界情勢が不安定になった今しかなかった。
我が国の王族が魔王に殺されたことで近隣国家の戦争が始まった。
王族が殺された国を誰が統治《とうち》するのか? 王族が殺された国を統治することが出来れば莫大な領地を手に入れることができる。
戦争の隠された理由には星のカケラの存在もあるのだろう。国同士は星のカケラを奪い合っていた。
星のカケラは誰が持っているかわからない。3つ手に入れることができれば願いが叶う。世界すらも支配できてしまうのだ。
戦争に参加していない他の国は、1つの国が莫大な領地を手に入れることを危惧《きぐ》していた。
それに勇者を召喚できない国は魔王出現で誰かに守ってほしい、と思っている。
どの国が勇者を召喚できるかは、俺にはわからない。
もしかしたら勇者をすでに召喚している国もあるのだろう。
勇者を召喚しても冒険に出してレベルアップしない限り、魔王との戦いに勝つことができない。
全ての国に俺は手紙を送った。
我が街を国として賛成していただければ魔王の脅威《きょうい》から守る、という協定《きょうてい》を結びたい、という内容の手紙である。
返事がなかった国は、すでに勇者を召喚している。あるいは召喚できる可能性がある国として考えるべきだった。
俺の課題は星のカケラを3つ集めて願いを叶えることだった。
俺の願いは決まっていた。
ミナミを蘇らす。
どこの国が星のカケラを持っているのかはわからない。
そしてどこの国が軍事力を持っているのかもわからない。
手紙の返事が無い国は、軍事力がある国と見なすべきだった。要注意である。
返事が来た国から厳選して3つの国を選んで周っているところだった。
獣人差別をしていないこと。近い国であること。それだけを指針に選んだ。
今回はペガサスが馬車を引っ張っていた。
ペガサスの力だけでは馬車は飛ばない。だから風魔法で馬車を浮かしていた。それに魔法でペガサスのステータスを強化している。近い国を選んだ、と言ってもかなりの距離があるのだ。
馬車の中。
アニーとナナナが絵本を作っていた。
俺はソファーに座って2人の絵を見つめていた。
「もっとドラゴンを強く描かないといけないんだよ」とナナナが言った。
「王子様をカッコ良く描いてください」とアニーが言っている。
めちゃくちゃ2人とも真剣だった。
本の内容。
王子様のことが好きだった獣人の女の子。
彼女はリンゴを盗んで街から追放された。
それからドラゴンが街にやって来る。そして街は破壊された。
女の子は王子様のことを忘れることができず、街に戻って来てしまった。
その時に街が壊されたことを彼女は知った。
そして女の子は獣人の村に行き、復興のために心優しき獣人達を連れて戻って来た。
そして獣人達は街を復興させた。
獣人の女の子は王子様と結ばれてお姫様になった、という内容である。ちょっとだけ嘘が含まれているだけである。
この絵本は街で販売して普及《ふきゅう》させるつもりだった。プロパガンダである。絵本は親から子どもに読み聞かせるモノである。
新しい世代の子ども達は獣人が味方であることを絵本で教えられる。だから差別意識を持たないだろう。
それに街は拡大していく。それに伴《ともな》って移民も増えていく。
移民達にも獣人に対する差別意識を払拭させる物語が必要だった。
王族が安い労働力を手に入れるために付いていた嘘《プロパガンダ》には別の嘘《プロパガンダ》を用意しなくてはいけなかった。
街の広場には復興の女神、としてナナナの像も作られる予定である。
この街は獣人のおかげで復興した。獣人の力がなければ街は復興できなかった。獣人がいなければ街は成立しない、と領民に印象付けしている最中なのである。
2人が真剣に書いている絵を微笑ましく見ている時に、遠くで膨大な魔力を感じた。
俺は息を止めて、遠くの気配に意識を向けた。
遠い場所で魔王が誰かと戦っている。
「何があったんだ?」
と俺はイライアに念話した。
「妾の結界を破って、勇者一行が現れたのじゃ」
とイライアの声が聞こえた。
念話なので俺達の会話は妻の2人には聞こえない。
勇者、という言葉を聞いてカヨの顔が頭に浮かんだ。
カヨ。俺の日本にいた時の妻である。
「助けに行く」
と俺は言った。
「お主は来るな。妾とお主が繋がっていることがバレたら、お主の計画は全て無くなるぞ」
とイライアが言う。
「ココは妾にまかせておけ」
それから念話が切れた。
イライアの魔力は小さくなり、そして消えてしまった。
魔王を召喚した俺ですら彼女の居場所を探せなくなってしまった。
馬車は目的の場所に着こうとしている。
彼女が心配だった。魔王のお腹の中には俺の子どもがいる。
街の復興だったり、国として独立するために大臣を任命したり、色々と忙しいのにワープホールを使わずにわざわざ馬車に揺られていた。
なぜなら俺1人で行けばいいという問題ではないからである。
軍事力を見せるために騎士団も連れて行かないといけなかった。騎士団は警察である。ちなみに我が街の騎士団は馬に乗っていない。ペガサスに乗っているのだ。総勢50人のペガサス乗りが謁見のために付いて来ていた。
それに王様との食事もあるので、2人の妻も連れていかないといけなかった。
ナナナは食事のマナーができていないので、アニーだけを連れて行くつもりだった。
だけどナナナも付いて来てしまった。この日のために食事のマナーを完璧に覚え、貴族の女性としての振る舞いを覚えて来たらしい。マジかよ?
どうしてこんな邪魔臭いことをしているのかというと、俺の街が国として独立するためである。
独立するために動くのは世界情勢が不安定になった今しかなかった。
我が国の王族が魔王に殺されたことで近隣国家の戦争が始まった。
王族が殺された国を誰が統治《とうち》するのか? 王族が殺された国を統治することが出来れば莫大な領地を手に入れることができる。
戦争の隠された理由には星のカケラの存在もあるのだろう。国同士は星のカケラを奪い合っていた。
星のカケラは誰が持っているかわからない。3つ手に入れることができれば願いが叶う。世界すらも支配できてしまうのだ。
戦争に参加していない他の国は、1つの国が莫大な領地を手に入れることを危惧《きぐ》していた。
それに勇者を召喚できない国は魔王出現で誰かに守ってほしい、と思っている。
どの国が勇者を召喚できるかは、俺にはわからない。
もしかしたら勇者をすでに召喚している国もあるのだろう。
勇者を召喚しても冒険に出してレベルアップしない限り、魔王との戦いに勝つことができない。
全ての国に俺は手紙を送った。
我が街を国として賛成していただければ魔王の脅威《きょうい》から守る、という協定《きょうてい》を結びたい、という内容の手紙である。
返事がなかった国は、すでに勇者を召喚している。あるいは召喚できる可能性がある国として考えるべきだった。
俺の課題は星のカケラを3つ集めて願いを叶えることだった。
俺の願いは決まっていた。
ミナミを蘇らす。
どこの国が星のカケラを持っているのかはわからない。
そしてどこの国が軍事力を持っているのかもわからない。
手紙の返事が無い国は、軍事力がある国と見なすべきだった。要注意である。
返事が来た国から厳選して3つの国を選んで周っているところだった。
獣人差別をしていないこと。近い国であること。それだけを指針に選んだ。
今回はペガサスが馬車を引っ張っていた。
ペガサスの力だけでは馬車は飛ばない。だから風魔法で馬車を浮かしていた。それに魔法でペガサスのステータスを強化している。近い国を選んだ、と言ってもかなりの距離があるのだ。
馬車の中。
アニーとナナナが絵本を作っていた。
俺はソファーに座って2人の絵を見つめていた。
「もっとドラゴンを強く描かないといけないんだよ」とナナナが言った。
「王子様をカッコ良く描いてください」とアニーが言っている。
めちゃくちゃ2人とも真剣だった。
本の内容。
王子様のことが好きだった獣人の女の子。
彼女はリンゴを盗んで街から追放された。
それからドラゴンが街にやって来る。そして街は破壊された。
女の子は王子様のことを忘れることができず、街に戻って来てしまった。
その時に街が壊されたことを彼女は知った。
そして女の子は獣人の村に行き、復興のために心優しき獣人達を連れて戻って来た。
そして獣人達は街を復興させた。
獣人の女の子は王子様と結ばれてお姫様になった、という内容である。ちょっとだけ嘘が含まれているだけである。
この絵本は街で販売して普及《ふきゅう》させるつもりだった。プロパガンダである。絵本は親から子どもに読み聞かせるモノである。
新しい世代の子ども達は獣人が味方であることを絵本で教えられる。だから差別意識を持たないだろう。
それに街は拡大していく。それに伴《ともな》って移民も増えていく。
移民達にも獣人に対する差別意識を払拭させる物語が必要だった。
王族が安い労働力を手に入れるために付いていた嘘《プロパガンダ》には別の嘘《プロパガンダ》を用意しなくてはいけなかった。
街の広場には復興の女神、としてナナナの像も作られる予定である。
この街は獣人のおかげで復興した。獣人の力がなければ街は復興できなかった。獣人がいなければ街は成立しない、と領民に印象付けしている最中なのである。
2人が真剣に書いている絵を微笑ましく見ている時に、遠くで膨大な魔力を感じた。
俺は息を止めて、遠くの気配に意識を向けた。
遠い場所で魔王が誰かと戦っている。
「何があったんだ?」
と俺はイライアに念話した。
「妾の結界を破って、勇者一行が現れたのじゃ」
とイライアの声が聞こえた。
念話なので俺達の会話は妻の2人には聞こえない。
勇者、という言葉を聞いてカヨの顔が頭に浮かんだ。
カヨ。俺の日本にいた時の妻である。
「助けに行く」
と俺は言った。
「お主は来るな。妾とお主が繋がっていることがバレたら、お主の計画は全て無くなるぞ」
とイライアが言う。
「ココは妾にまかせておけ」
それから念話が切れた。
イライアの魔力は小さくなり、そして消えてしまった。
魔王を召喚した俺ですら彼女の居場所を探せなくなってしまった。
馬車は目的の場所に着こうとしている。
彼女が心配だった。魔王のお腹の中には俺の子どもがいる。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
勇者の隣に住んでいただけの村人の話。
カモミール
ファンタジー
とある村に住んでいた英雄にあこがれて勇者を目指すレオという少年がいた。
だが、勇者に選ばれたのはレオの幼馴染である少女ソフィだった。
その事実にレオは打ちのめされ、自堕落な生活を送ることになる。
だがそんなある日、勇者となったソフィが死んだという知らせが届き…?
才能のない村びとである少年が、幼馴染で、好きな人でもあった勇者の少女を救うために勇気を出す物語。
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる