性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万

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魔王が俺の子どもを孕んでいる

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 別の国の王様に謁見《えっけん》するために俺達は馬車に揺られていた。謁見というのは目上の人に会うことである。

 街の復興だったり、国として独立するために大臣を任命したり、色々と忙しいのにワープホールを使わずにわざわざ馬車に揺られていた。
 なぜなら俺1人で行けばいいという問題ではないからである。

 軍事力を見せるために騎士団も連れて行かないといけなかった。騎士団は警察である。ちなみに我が街の騎士団は馬に乗っていない。ペガサスに乗っているのだ。総勢50人のペガサス乗りが謁見のために付いて来ていた。

 それに王様との食事もあるので、2人の妻も連れていかないといけなかった。
 ナナナは食事のマナーができていないので、アニーだけを連れて行くつもりだった。
 だけどナナナも付いて来てしまった。この日のために食事のマナーを完璧に覚え、貴族の女性としての振る舞いを覚えて来たらしい。マジかよ?

 どうしてこんな邪魔臭いことをしているのかというと、俺の街が国として独立するためである。
 独立するために動くのは世界情勢が不安定になった今しかなかった。

 我が国の王族が魔王に殺されたことで近隣国家の戦争が始まった。
 王族が殺された国を誰が統治《とうち》するのか? 王族が殺された国を統治することが出来れば莫大な領地を手に入れることができる。
 
 戦争の隠された理由には星のカケラの存在もあるのだろう。国同士は星のカケラを奪い合っていた。
 星のカケラは誰が持っているかわからない。3つ手に入れることができれば願いが叶う。世界すらも支配できてしまうのだ。

 戦争に参加していない他の国は、1つの国が莫大な領地を手に入れることを危惧《きぐ》していた。

 それに勇者を召喚できない国は魔王出現で誰かに守ってほしい、と思っている。
 どの国が勇者を召喚できるかは、俺にはわからない。
 もしかしたら勇者をすでに召喚している国もあるのだろう。
 勇者を召喚しても冒険に出してレベルアップしない限り、魔王との戦いに勝つことができない。

 全ての国に俺は手紙を送った。
 我が街を国として賛成していただければ魔王の脅威《きょうい》から守る、という協定《きょうてい》を結びたい、という内容の手紙である。

 返事がなかった国は、すでに勇者を召喚している。あるいは召喚できる可能性がある国として考えるべきだった。

 俺の課題は星のカケラを3つ集めて願いを叶えることだった。
 俺の願いは決まっていた。
 ミナミを蘇らす。
 どこの国が星のカケラを持っているのかはわからない。
 そしてどこの国が軍事力を持っているのかもわからない。
 手紙の返事が無い国は、軍事力がある国と見なすべきだった。要注意である。 
 
 返事が来た国から厳選して3つの国を選んで周っているところだった。
 獣人差別をしていないこと。近い国であること。それだけを指針に選んだ。

 今回はペガサスが馬車を引っ張っていた。
 ペガサスの力だけでは馬車は飛ばない。だから風魔法で馬車を浮かしていた。それに魔法でペガサスのステータスを強化している。近い国を選んだ、と言ってもかなりの距離があるのだ。

 馬車の中。
 アニーとナナナが絵本を作っていた。
 俺はソファーに座って2人の絵を見つめていた。

「もっとドラゴンを強く描かないといけないんだよ」とナナナが言った。
「王子様をカッコ良く描いてください」とアニーが言っている。
 めちゃくちゃ2人とも真剣だった。

 本の内容。
 王子様のことが好きだった獣人の女の子。
 彼女はリンゴを盗んで街から追放された。
 それからドラゴンが街にやって来る。そして街は破壊された。
 女の子は王子様のことを忘れることができず、街に戻って来てしまった。
 その時に街が壊されたことを彼女は知った。
 そして女の子は獣人の村に行き、復興のために心優しき獣人達を連れて戻って来た。
 そして獣人達は街を復興させた。
 獣人の女の子は王子様と結ばれてお姫様になった、という内容である。ちょっとだけ嘘が含まれているだけである。


 この絵本は街で販売して普及《ふきゅう》させるつもりだった。プロパガンダである。絵本は親から子どもに読み聞かせるモノである。
 新しい世代の子ども達は獣人が味方であることを絵本で教えられる。だから差別意識を持たないだろう。
 それに街は拡大していく。それに伴《ともな》って移民も増えていく。
 移民達にも獣人に対する差別意識を払拭させる物語が必要だった。

 王族が安い労働力を手に入れるために付いていた嘘《プロパガンダ》には別の嘘《プロパガンダ》を用意しなくてはいけなかった。
 
街の広場には復興の女神、としてナナナの像も作られる予定である。
 この街は獣人のおかげで復興した。獣人の力がなければ街は復興できなかった。獣人がいなければ街は成立しない、と領民に印象付けしている最中なのである。

 2人が真剣に書いている絵を微笑ましく見ている時に、遠くで膨大な魔力を感じた。
 俺は息を止めて、遠くの気配に意識を向けた。
 遠い場所で魔王が誰かと戦っている。

「何があったんだ?」
 と俺はイライアに念話した。

「妾の結界を破って、勇者一行が現れたのじゃ」
 とイライアの声が聞こえた。
 念話なので俺達の会話は妻の2人には聞こえない。

 勇者、という言葉を聞いてカヨの顔が頭に浮かんだ。
 カヨ。俺の日本にいた時の妻である。

「助けに行く」
 と俺は言った。

「お主は来るな。妾とお主が繋がっていることがバレたら、お主の計画は全て無くなるぞ」
 とイライアが言う。
「ココは妾にまかせておけ」

 それから念話が切れた。
 イライアの魔力は小さくなり、そして消えてしまった。
 魔王を召喚した俺ですら彼女の居場所を探せなくなってしまった。
 馬車は目的の場所に着こうとしている。
 彼女が心配だった。魔王のお腹の中には俺の子どもがいる。
 
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