性奴隷を飼ったのに

お小遣い月3万

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ドワーフの英雄バラン・クザン

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「幸せになっていいのかわからぬ」
 ポツリ、とイライアが呟いた。

「いいと思うよ」
 俺は出来る限り軽い口調で答えた。

 イライアは沢山の人を殺して来ている。
 その罪を彼女は背負っているのだ。
 イライアは暗い暗い場所にいたのだ。太陽の光を浴びたら失明してしまんじゃないか? そんな不安を抱えているんだと思う。

 彼女を抱きしめながらイライアのお腹を撫でた。
 偽装魔法は解けていた。
 妊婦さんの大きなお腹に戻っている。

「この子のために幸せになってほしい」
 と俺は言った。

 彼女は俺を見る。
 そして悲しそうに俺の頬を触った。

「妾は沢山の人を殺して来たんじゃ。今更、幸せになろうなんて虫が良すぎる話じゃないのか?」
 とイライアが言った。

「そんなことねぇーよ」
 と俺は出来る限り軽い口調で答えた。
「誰にでも幸せになる権利はあるんだ。イライアは母親になるんだ。お母さんが不幸であっていいわけがない。どんな時でもお母さんは幸せじゃないといけないんだ。そうじゃないと子どもが可哀想だろう」

「子どもが可哀想」
 とイライアが呟く。

「子どもを不幸にすることは俺が許さねぇー」
 と俺が言う。

「この子は……」
 と彼女が言った。
 その続きの言葉を言う前に、「イライアの子どもだよ」と俺は言う。

「でも……」
 とイライアが不安そうに言った。

「間違いなくイライアの子どもだよ。10ヶ月もお腹の中で君が守り続けて来たんだ。イライアが産むことを決断してくれたおかげでこの子は大きくなったんだ。イライアがいたからこそ、この子は生まれようとしているんだ。その子のお母さんはイライアなんだよ」

 彼女が愛おしそうにお腹を撫でた。

「頼みたいことがある」
 と彼女が言った。

「お腹だけに究極の防御魔法をかけ直してほしいのじゃ」

 すでに戦争前にかけていた防御魔法は解けていた。

「どうして?」と俺が尋ねる。

「お主達の仲間になるための禊《みそぎ》じゃな」
 と彼女が言った。
 
 俺は究極の防御魔法を彼女のお腹にかけた。どれだけ攻撃されてもお腹だけは無事なように。
 彼女が何をしようとしているのか、俺にはなんとなくわかっていた。


 大きなソファーが置かれているリビング。
 みんな集まっていた。
 俺はイライアを連れてリビングに入る。
 イライアは露出の多い防具を着て、肩に小さなバハムートを乗せていた。
 
 グハハハ、とバランが大声を上げて笑った。
「ちょっと見ないうちに太ってるじゃねぇーか」

「妊娠って言うんだよ」とナナナが説明してくれる。

「お腹を殴ってもいいか?」とバランが尋ねた。

「絶対にダメ」とナナナ。
「絶対にダメです」とアニー。

「バランに妊娠のことを言ってもわかんねぇーだろう」とチェルシーが言う。「お腹に子どもがいるんだぞ」

「お腹に子ども? どうやってお腹に子どもを入れたんだ?」
 とバランが不思議そうに首を傾げた。

「セッ○スして、あれを出して、受精して」
 
「チェルシー」と俺は猫の言葉を遮る。
「余計なことを言うんじゃねぇー」

「つーことは今まさにセッ◯スしてたってことか?」
 グハハハ、とバランが笑う。
「小次郎が部屋に入って十分も経ってないから……すごい早漏だな。俺でも、もう少し持つぞ」

「バランさん。下品ですよ」とアニーが言った。
「それに妊婦さんのお腹が今の魔王様ぐらいに膨らむのは10ヶ月ぐらいかかるんですよ」

「10ヶ月もセッ○スしてたのか? 遅漏すぎる。遅漏すぎるぜ」
 とバランが言った。

「って具合に、今のバランに何を喋っても会話にならない」
 と俺はイライアに言った。

「すまない」
 とイライアがバランに謝った。

「もっと謝れよ。俺は許さねぇーけどな」
 とバランが言う。

「お前、何に対して謝られているのかわかっているのか?」
 とチャルシーが尋ねた。

「知らん」
 とバランが言う。

「ドワーフの国が滅んで、最愛の人を失って、お主は自分の脳みそを取り出したのじゃな。ドワーフの英雄バラン・クザンよ」

 なんの話? とナナナとアニーが不思議そうに俺を見ていた。

「とりあえず、ココでは家が壊れてしまうから外に行こうか?」
 と俺は言った。

「一体何が始まるんだよ? お腹の子は平気なんだろうな?」
 とチェルシーも首を傾げている。


 外に出た。
「人気のないところまで行こう」
 と俺は言う。

 こんなところでバランの攻撃が発動したら街に被害が出てしまう。

「そうじゃな」とイライアが頷く。

「プレゼントでも来れるのか?」
 とバランが尋ねた。

「あぁ」と俺は頷く。「ヒゲが生えたお姉ちゃんが待っている」
 純粋に嘘を付いた。

「俺、今日、誕生日だっけ?」
 とバラン。

「39歳の誕生日おめでとう」
 と俺が言う。
 ちなみにコレも嘘である。
 嘘ついてごめん。

「コイツ11歳じゃなかったけ?」とチェルシーが言う。

「自分より下の年齢にしようとするな」と俺が言う。

「俺、11歳」とバラン。

「どう見てもオッさんだろう」と俺は言った。

「私達も付いて行ってもよろしいでしょうか?」
 とアニーが言った。

 俺はイライアを見た。

「これから仲間になるのじゃ。別にかまわん」
 とイライアが言った。

 イライアとバランが先に人気の無い場所に飛んで行った。
 
 俺はアニーとナナナを抱きしめて、チェルシーを背中に乗せて人気がないところまで飛んだ。


 遠くない場所に砂浜がある。
 誰も海水浴はしていない。
 何もない。
 そこにイライアとバランは降りていた。

 俺達も降りる。

「2人は危ないから俺から離れるなよ」と俺は言った。
 
 ナナナは俺の腕にしがみ付く。
 アニーも俺の腕にしがみ付く。
 チェルシーは俺の首に巻きついて来る。

「おい、チェルシー。お前は足元にいろよ」
 と俺が言う。

「俺だって怖いんだよ」
 とチェルシー。

 まぁ、いいか。

 俺は絶対防御の結界を張った。


「頭を貸してくれるか?」
 とイライアが、バランに言った。

「頭なんて貸せない。取り外しできねぇーことも知らねぇーのか」
 とバランが言う。

「そんなことを言っておるのではない」
 とイライアが言った。

「それじゃあ、この小さな穴を見てくれ。ココにお主へのプレゼントを隠しておる」
 
 イライアに言われて、バランは砂浜に寝そべって小さな穴を覗き込んだ。

「何も見えねぇーぞ」
 とバランが言った。

 バランの頭の上にチワワサイズのバハムートが乗った。
 
「なんだ? なんだ?」
 とバランが慌てている。

 そしてバッハはバランの頭に噛り付く。

「うわぁーー」
 とバランが呻いている。

 頭に空いた穴にバッハが小便をかけた。
 バハムートの小便は欠如した箇所を回復させるだった。

 バランの脳みそが元に再生されていく。
 ドワーフの英雄バラン・クザンに戻っていく。
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