おまえも僕の姫騎士にしてやろうか

遊野 優矢

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2章:触手と姫騎士

2章:触手と姫騎士(8)

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 赤石も含めた三人が乗り込んだのはヘリだった。

「ここを見て」

 揺れる機内で、真白さんがノートPCのモニターを指さした。
 映っているのは、司令室で見た衛星映像だ。
 爆弾によって、害異の肉が周囲に飛び散っている。

「やっぱり爆弾が効いてるんですね」
「もっとよく見て」

 害異の肉片が蠢いている。
 速度が遅いのでよくわからないが、本体と同様、東京方面に向かっているようにも見える。
 肉片が触れたものは、白い煙を上げて溶けていく。
 さらに肉片の一つ一つが、イソギンチャクの形に変化しているような……。

「もしかして、分裂……?」
「おそらくね」

 真白さんは厳しい顔をする。

「でも燃料気化爆弾で焼き尽くせるなら倒せるんじゃないですか?」
「だといいけど……」

 ミサイルの2発目が着弾したのはその時だった。

『着弾を確認! 害異、侵攻を停止! 心臓部露出! いえ……硬い何かに護られています!』

 オペレーターの声が、イヤモニを通して僕の耳にも届く。

 ノートPCに映ったリアルタイム映像には、上部2割以上が吹き飛んたイソギンチャク。
 その内側に、白い肉壁のような何かが見える。壁には焦げ後すら見当たらない。
 心臓はあの中だろうか?

「攻撃を中止して!」

 真白さんがヘッドセットマイクに向かって何かを叫んでいる。

「バカね! 見えないの!? 飛び散ってるだけで、体積はほとんど減ってない! 被害が拡大するだけよ!」

 たしかに、肉片となって蠢くイソギンチャクは、かき集めれば吹き飛んだ部分くらいのサイズになりそうだ。
 さらに、本体は移動を止めたものの、肉片はそれぞれがイソギンチャクの形となり、侵攻を開始する。

「本体、再生してませんか?」
「してるわね……」

 吹き飛んた上部が、少しずつ再生を始めている。
 燃料気化爆弾を使うほど、害異の攻撃範囲が広がるってことだ。

「あんなの、剣と盾でなんとかなるんでしょうか……」

 姫騎士化した赤石の攻撃方法は、前回見た限りでは近接ばかりだった。

「わからないけれど、がんばってもらうしかないわ。というわけで、そろそろ着くからよろしくね」
「わかりました」

 僕が赤石にキスをすると、彼女の方から舌を絡めてきた。
 口の中で唾液が混ざり合う。

 やがて赤石の体が輝き、その身が赤い鎧に包まれた。

「ジュン様! 行ってくるね!」

 ヘリのドアを開けた赤石が、そのまま空に見を踊らせた。
 気付けば害異が目視できる距離まで近づいている。

 空中で大の字になった赤石は、剣と盾を出現させた。
 そのまま、何もない空を蹴り、害異へと特攻をかける。

「近くの部隊に合流して! できるだけ高台に!」

 真白さんの指示で、ヘリが大きく向きを変える。

 僕は窓から赤石の姿を追う。
 既にかなり離れたはずなのに、彼女の姿がはっきり見えた。
 これも身体能力が強化された一環だろうか。

 赤石の剣から伸びた赤い光が、イソギンチャクの触手をバサバサと切り落としていく。
 その一本一本が、大木ほどもある太さだ。
 地面に落ちた触手は、周囲の草木を腐食させていく。

 赤石を敵とみなした害異が、触手を一斉に彼女へと向ける。
 空を蹴ってそれらを避ける赤石だが、軌道の自由さは害異が上手だった。
 太い触手の先から無数の細い触手が伸び、赤石の体を絡めとる。

『くっ……やめ……んん……』

 僕の脳に赤石の声が直接響いた。
 触手は赤石の体を這い回り、その鎧を少しずつ溶かしていく。

『からだがビンカンに……あ……だめ……ジュン様以外に……こんな……んっ……だめぇぇ……んんんっ!!!』



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