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三人の精霊と精霊ミリア物語
精霊ミリア物語⑦
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ホーエンハイムと薔薇十字軍による激戦より数日後ーー。
帝国による調査団がホーエンハイム城の周辺に派遣された。
現状のホーエンハイム城の調査と薔薇十字軍の残党がいれば捕虜とし情報を聞き出すのが目的だ。
帝国にとって脅威なのが新聖教団の薔薇十字軍なのだ。魔法という異質の攻撃に対する防御策に乏しいのが帝国の弱点でもある。
近年、魔法学にも力を入れてはいるがアヴァロン王国などと比べれば遅れをとっている。
ホーエンハイムが薔薇十字軍の侵略を阻止した事は歴史的な勝利として世界中に配信された。それも踏まえての今回の調査なのだ。
「ーー良し止まれ!」
キツネ目の男の合図で全員の馬車が一斉に動きを止めた。
「ここがホーエンハイム城か・・・ほぼ壊滅状態だな」
「はい、正直この状態で良く薔薇十字軍を食い止めたと思います」
兵士の一人がキツネ目の男に言う。
兵士は全員で五人、キツネ目の男はこのメンバーの隊長のヴィル・クランツェ。
「ーーでは、周辺の調査にあたってくれ。何か発見があればホイッスルを鳴らしてくれ」
「はっ!!」
それぞれが捜査に散って行ったーー。
☆
ヴィルが周辺を捜査して間も無く、瀕死の状態の精霊を発見する。
「・・・息はまだある」
ヴィルがそっと手を翳しながら目を閉じる。心の中で呪文を演習すると、精霊の傷は瞬く間に癒えていったーー。
「良かった・・・ん?」
傷が癒えた精霊の顔を見た瞬間にヴィルの瞳に涙が込み上げて来るのが分かった。
「パトリシア・・・」
ヴィルは静かに精霊を両手で抱えたーー。
何度よく見てもヴィルの最愛の妹の生き写しのようにそっくりだった。ーーその時、
「ヴィル隊長ーー」
ヴィルを捜す兵士の声が聞こえてきた。
ヴィルはそっと懐に精霊を忍ばせると何食わぬ顔で兵士たちに合流した。
「何か成果はあったか?」
「テント跡くらいで、他には何も・・・」
「そうか、今日はこの位にして一旦帝国に戻ろう」
「・・・はい」
意外に今回はあっさりと引き返すヴィルに少し困惑したが、隊長の命令なので何の疑いもなく従う兵士達だった。
ヴィルは一刻も早く帝国に帰り、未だ目を覚まさない精霊が心配だった。
☆
帝国に戻り、トーマス・ガルウォード団長に今回の調査報告を済ませると、そのまま直ぐに自室へと向かうヴィルだった。
「今回の調査でヴィルに何かあったのか?いつもより帰京が早くないか?」
トーマスが一緒に調査に参加した兵士を捕まえる。
「はい。そう思ったのですが、本当に痕跡など何も無かったのだから早めに諦めたのだと思います。現に一番最後まで捜索していたのはヴィル隊長だったので」
兵士がそう答えると、トーマスは顎に手を当てながら、
「ヴィルが最後まで捜索を・・・なるほど」
兵士が首を傾げる。
それを見てトーマスが手を払いながら、
「ああ、下がって良いぞ」
「はっ」
兵士は一礼し立ち去って行ったーー。
☆
「傷は全て回復しているはずだ。呼吸も安定している・・・」
ヴィルはベットの隅に寝かせた精霊を心配そうに見つめていた。
精霊を寝かせた時に気付いた事があった。精霊の腕に刻まれた烙印だ。
「ーー確かあの烙印は悪魔に汚された精霊に付けられる烙印だったな」
ヴィルの顔色が怒りに変わる。
「パトリシア、何としてもその烙印を消してやるかな!!」
そう決心するとヴィルは色んな本を片っ端から読み始めた。全てはその烙印を消す為だ。
精霊が果たして喜んでくれるかは、分からないがーー。
ーー ヴィルが精霊にこだわる理由とは ーー
帝国による調査団がホーエンハイム城の周辺に派遣された。
現状のホーエンハイム城の調査と薔薇十字軍の残党がいれば捕虜とし情報を聞き出すのが目的だ。
帝国にとって脅威なのが新聖教団の薔薇十字軍なのだ。魔法という異質の攻撃に対する防御策に乏しいのが帝国の弱点でもある。
近年、魔法学にも力を入れてはいるがアヴァロン王国などと比べれば遅れをとっている。
ホーエンハイムが薔薇十字軍の侵略を阻止した事は歴史的な勝利として世界中に配信された。それも踏まえての今回の調査なのだ。
「ーー良し止まれ!」
キツネ目の男の合図で全員の馬車が一斉に動きを止めた。
「ここがホーエンハイム城か・・・ほぼ壊滅状態だな」
「はい、正直この状態で良く薔薇十字軍を食い止めたと思います」
兵士の一人がキツネ目の男に言う。
兵士は全員で五人、キツネ目の男はこのメンバーの隊長のヴィル・クランツェ。
「ーーでは、周辺の調査にあたってくれ。何か発見があればホイッスルを鳴らしてくれ」
「はっ!!」
それぞれが捜査に散って行ったーー。
☆
ヴィルが周辺を捜査して間も無く、瀕死の状態の精霊を発見する。
「・・・息はまだある」
ヴィルがそっと手を翳しながら目を閉じる。心の中で呪文を演習すると、精霊の傷は瞬く間に癒えていったーー。
「良かった・・・ん?」
傷が癒えた精霊の顔を見た瞬間にヴィルの瞳に涙が込み上げて来るのが分かった。
「パトリシア・・・」
ヴィルは静かに精霊を両手で抱えたーー。
何度よく見てもヴィルの最愛の妹の生き写しのようにそっくりだった。ーーその時、
「ヴィル隊長ーー」
ヴィルを捜す兵士の声が聞こえてきた。
ヴィルはそっと懐に精霊を忍ばせると何食わぬ顔で兵士たちに合流した。
「何か成果はあったか?」
「テント跡くらいで、他には何も・・・」
「そうか、今日はこの位にして一旦帝国に戻ろう」
「・・・はい」
意外に今回はあっさりと引き返すヴィルに少し困惑したが、隊長の命令なので何の疑いもなく従う兵士達だった。
ヴィルは一刻も早く帝国に帰り、未だ目を覚まさない精霊が心配だった。
☆
帝国に戻り、トーマス・ガルウォード団長に今回の調査報告を済ませると、そのまま直ぐに自室へと向かうヴィルだった。
「今回の調査でヴィルに何かあったのか?いつもより帰京が早くないか?」
トーマスが一緒に調査に参加した兵士を捕まえる。
「はい。そう思ったのですが、本当に痕跡など何も無かったのだから早めに諦めたのだと思います。現に一番最後まで捜索していたのはヴィル隊長だったので」
兵士がそう答えると、トーマスは顎に手を当てながら、
「ヴィルが最後まで捜索を・・・なるほど」
兵士が首を傾げる。
それを見てトーマスが手を払いながら、
「ああ、下がって良いぞ」
「はっ」
兵士は一礼し立ち去って行ったーー。
☆
「傷は全て回復しているはずだ。呼吸も安定している・・・」
ヴィルはベットの隅に寝かせた精霊を心配そうに見つめていた。
精霊を寝かせた時に気付いた事があった。精霊の腕に刻まれた烙印だ。
「ーー確かあの烙印は悪魔に汚された精霊に付けられる烙印だったな」
ヴィルの顔色が怒りに変わる。
「パトリシア、何としてもその烙印を消してやるかな!!」
そう決心するとヴィルは色んな本を片っ端から読み始めた。全てはその烙印を消す為だ。
精霊が果たして喜んでくれるかは、分からないがーー。
ーー ヴィルが精霊にこだわる理由とは ーー
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