三人の精霊と俺の契約事情

望月 まーゆ

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三人の精霊と帝国事変の書

桃色の過去②

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「くっ、雪氷の嵐スノーテンペスト
「ふーん、なかなかやるね」

氷の刃の嵐がクローリー目掛けて襲いかかるがクローリーが手をかざすだけで全ての氷の刃が消滅する。

「もう終わりかな?かな?」

圧倒的魔力量、力を抑えているように見えるがそれでも魔力がキルケーのそれとは別次元だった。

「ば、、バケモノめ!!」

肩で息し、魔力も底を尽きてきたキルケー。
自分の持てる全てを出し尽くしていた。

「私がバケモノ?口が悪いねえ」

顎に人差し指を置きながらゆっくりとキルケーに歩み寄るクローリー。

「わ、私はどうなっても構わない。
 だからこの村は・・・村の人達は助けてやってくれ」

「は?」

キルケーの腹部に拳を一発入れる。

ぐはっ・・・

口から血を吹き出すキルケー。

「何勘違いしてんの?」

両膝を付き腹を抱えているキルケーの顔面に蹴りが飛ぶ。

もうここからは殴る蹴るの一方的な暴行が容赦無く続く。
全ての一撃に魔力が加わりとてつもない威力だ。
キルケーも必死に肉体強化の加護の魔法を自身にしているがそんなものは無意味に近かった。

はあ・・・はあ・・・はあ・・・

ボロ雑巾のような姿。
体の感覚が痛みで麻痺して分からない。
顔が腫れ視界がほぼ見えない。

「私はただの暇つぶし。あんたは私のオモチャ」

ニヤリと不気味に笑いながら、キルケーの喉元を片手掴み上げる。

その見た目からは想像もつかないない程の怪力だ。軽くキルケーを持ち上げる。

苦しがるキルケーを残念そうに見ながら、

「壊れたオモチャにもう用はないわ」

キルケーの背筋が凍る。
人生で初めて死を覚悟した。



殺される。


「バイバーーイ」

キルケーの腹部にクローリーの左手が添えられる。
爆発的に左手に魔力が集中して集まる。


終わったーー。


キルケーが目を閉じた。


ーーその時、


「困りますねえ。予定に無い事を勝手にやられちゃあ」
「あん?メイザースか」

キルケーから手を離し声の方へ振り返るクローリー。

「私が来なければ完全にこの子を殺してましたよね」

「悪いか?」

解放させ咳払いをしながらクローリーのその言葉を受け睨みつけるキルケー。

「ええ。申し訳ないですがこの子は私が預かります」

「は?」

「ちょうど、あちら側からも私達の動向を疑ってるのか監視役を預かっているのですよ」

「監視役?」

「はい。その子も円卓に選出されているのです」

「意味わかんねえだろ?
 何でメイザースが円卓のヤツを預かる必要があるんだよ!」

「シーサーさんがご多忙の為に移動が多いのですよ。
 その子は精霊でしてね。
 その度に連れ歩くのも面倒だという理由で私の屋敷とアヴァロンを次元リンクさせているんですよ」

「良くわかんねえけど、その話とコイツが何の関係があんだよ」

クローリーは今だに睨みつけるキルケーを見ながら地面に唾を吐き出した。

「この子を円卓に推薦し、逆にアヴァロン側の情報を探らせるのですよ」

「へっ。こんな奴が円卓に?笑わせるな。流石にシーサーも選出しないだろーよ」

「いえ。クローリーさんあなたが指導なさってください」

「は?何言ってんだ」

「私は監視されていて行動が制限されています。
 ローゼンクロイツは現在幽閉中なのです。
 動けるのはあなただけなのです」

「いや、無理だろ。だいたいーー」
「頼みましたよ!」

話をしている最中に去ってしまったメイザース。
取り残されたクローリーとキルケー。
沈黙が流れる。
それもそのはず、メイザースが来なければクローリーはキルケーの命を奪っていたかもしれなかったのだ。

お互いに目を合わせないまま時間だけが虚しく過ぎていく。

ボロボロのキルケーがゆっくりと立ち上がり、動かすのもやっとの体を引きずりながらその場から立ち去ろうとする。

「おい!お前どこに行くんだよ」

「はあ、はあ、、村の人・・・母さんが無事か確認しに行く」

その言葉にクローリーは即答する。
それは冷たく感情の無い一言。

「お前以外は全員死んでるよ」

















「キサマアアアあああぁぁぁぁ!!!」

全身の残りの魔力の全てを出し尽くしクローリーに全力の拳をぶつける。

クローリーは無表情でそれを顔面で受けとめる。


ーーしかし、

「それがお前の全力の怒りか?
 この一撃でお前は満足なのか。
  確かにお前はこの村では飛び抜けた実力だったかもしれないが、所詮誰も守れないザコなんだよ。
 だから、みんな死んだ。
 お前が弱いからみんな死んだ」

「違う!お前達が殺したんだ!!」

「違うね。お前に守れる力があればみんな死なずに済んだ。
 力が無いお前が殺したんだ。
 お前は自分の弱さを他人のせいにして誤魔化しているだけだ。
 現にお前は一度死んでいる」

「違う、違う、違う、違う、違う」

首を横に振り目を閉じ、耳を塞ぐ。

クローリーはキルケーの髪の毛を掴み、体を持ち上げる。

「何が違うんだ? あん?
 お前悔しくないのか?
 自分の仲間、親が殺されてやり返したいと思わないのか?
どーなんだよ!!」

キルケーを放り投げ、倒れたところに腹部に蹴りを入れる。

バキッ

「ぐはっ」血を吐き出すキルケー。
肋の骨が砕け散った。

「ふんっ、つまんねー。
 メイザースには悪いがこの計画は白紙だ。
 この雑魚は殺すにも価値もないわ」

クローリーが背を向け立ち去ろうとすると、

「ま、、、待てよ。
 お前をブチ殺す力を私に教えろよ」

「は?」

「お前に一発お見舞いしてやるから、
  私に、力をーー」


ドサッ

倒れたキルケーを見つめながら、首を横に振るクローリー。


「・・・はあ。
 私もお人好しになったな。
 計画とはいえ、こんなガキの世話をするはめになるとはね。
 メイザースの野郎にはたっぷりと養育費を請求してやる」

クローリーは倒れたキルケーを抱えると、
そのまま移動魔法を唱え消えて行ったーー。


ーー クローリーとの共同生活開始 ーー
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