三人の精霊と俺の契約事情

望月 まーゆ

文字の大きさ
191 / 216
三人の精霊と帝国事変の書

真理の刻③

しおりを挟む
通信用水晶がぼんやりと輝く。
ミランダは手に取って通信の相手を確認する。
そこに写っていたのは思わぬ人物だった。

「ええ、大体の事は分かったわ。彼には私から伝えておくわ。また彼と連絡を取り折り返し連絡するわね」

ミランダは通信を終えると、すぐにまた水晶で連絡を取る。

「あなた今どこにいるの?」

ミランダの水晶に写っている彼はアーサーだった。

「今ですか?ホーエンハイムでリリスとメルル、そしてケイトさん達も一緒にいます」

「ケイト?ケイト・ローレント」

「はい。反帝国バンディッツとレムリア国の件について話をして頂きました」

「なるほどね。ちょっとこっちもあなたに直接会って話がしたい人物がいるのよ。私たちも今からそっちに行くわね」

「話したい人物?分かりました・・・」

ミランダの通信が途絶えた。

「アーサー様に直接会って話がしたい人物とはどなたでしょう?」

シルフィーがふわふわと浮かびながら腕を組む。

「アーサーのお姉さんは確か円卓の魔導士の一人だったな?」

「はい。僕とは違い優秀な魔導士です」

苦笑いを浮かべるアーサーにケイトは背中をポンと叩き、

「信頼できる優秀な人物の所には人が集まる。
俺も君が信頼できるから来た。君のお姉さんも君を信頼してるから来る。そういう事さ」

ケイトは白い歯を見せて親指を立てた。
それを見てエレナは小声で「きもっ」と呟いた。


☆ ☆ ☆

ーー三十分後。

ディーンゴーーーン

豪華な呼び鈴がリリスの邸宅に響き渡る。
その音を聞き、リリスが玄関へと出迎えに向かった。

「待たせてごめんなさいね」
「いえ、逆に早い位ですよ。どうやってここまで?」
「こちらのパウロさんの魔法の絨毯でここまで来たのよ」

ミランダの隣には黒いタキシードに蝶ネクタイと黒いシルクハットを被った恰幅かっぷくの良いおじさんが立っていた。

「こちらの方が、あなたに会いたがっていた方よ」

紹介されると一歩前に出て、シルクハットを脱ぐと、

「君には、初めましてかな?
 まあ、私は何度も君の事を記事にしているがね。
私は世界新聞社のパウロと言うものだ。
以後、宜しく頼むよ」

「あっ、はい。新聞記者さん・・・?」
「その新聞記者の方がなぜわざわざここに」

リリスも少し驚いた表情を見せた。
パウロはリリスをチラッと見たがそのまま話を初めた。

「数日前に、ウチの若い子が何者かに殺害された」

「ーーーー!!」

「殺した連中の目星はついている。
そもそもがある組織の潜入取材だったんだ」
「ある組織?」
「いやいや、ちょっと待って!」

リリスが話の途中で割って入り両手を前に出し、話をストップさせる。

「何で私たちにこんな重要な話をする訳?」

「確かに、話的には重大スクープとかじゃないですか?」

ミランダもリリスと同意見のようだ。

「そうですね。話のネタ的には重大スクープです。
しかし、話の内容がとても記事に出来るモノじゃない。
ウチの若い子が命をかけて伝えてくれた情報なんですよ。
そう簡単には世の中に出せない」

メルルが運んでくれたコーヒーを口に含みゆっくり飲み込む。

「この話をするのはあなた達が始めてです。
これまでのあなた達の活躍が正義と感じたのと、一番信頼できると感じられたからです。
これから私がお話する内容を他言無用で聞いて頂きたい事をご理解頂きたい」

そういうと、懐から一枚の手紙を出した。
所々、血に染まっている。

「この手紙は、ウチの若い子が鳩に託して私に伝えてくれた情報です。その際、鳩も命をかけて手紙を届けてくれました。この手紙から色んな情報が読み取れました」

アーサー達が手紙を覗き込むが、血で染まっていたりボロボロで所々破れたりもしていてとても読めたものじゃない。
当たり前のようにリサがスバリ指摘する。

「この手紙ボロボロでほとんど読めないよ。おじさんはこの手紙本当に読めたの?」

「私は特異能力者でね。この左手は見たい物から記憶の断片を読み取ることが出来るんだよ」

リサは半信半疑でパウロの左手を見つめた。
パウロは話を続ける。

「この手紙には、近日中に世界大戦がおこりそれが世界の崩壊に繋がると書かれている」

全員が余りにも衝撃的な発言に耳を疑った。
それと同時に目が点になっていた。
無理もない。いきなり世界大戦だの世界の崩壊だの言われても信じられないはずだ。

話について来れない人を置き去りでも御構い無しにパウロは続ける。

「順を追って説明します。まず、潜入取材したある組織と言うのは、ゾロアスター教です。彼はそこで一年もの間信者として過ごしました。その間に手に入れた情報が、ゾロアスター教の教祖・指導者は円卓の魔導士のアウレスター・クローリーです」

「クローリーって、確か重要監視人物じゃないの?」

リサの言葉にパウロは頷くが、

「その通りですが、後で説明します」

その言葉にリサはゴメンと口を手で覆う。

「そして、更に薔薇十字軍とクローリーに交流もあったと書かれています。つまり、薔薇とゾロアスター教は敵対する宗教ではないという事になります。また1年間の潜入取材の間にアヴァロンに属する人物が何度か目撃したそうです。その人物はーー」

どかーーん。

何が壁に衝突する音が聞こえた。
何事かと窓から外を覗くとピンク色の髪の毛をした人物が箒に乗って壁にぶつかり倒れていた。

「あれれ?キルケーなの」
「あちゃー、また壁にぶつかってる」

リサとエルザが壁にぶつかって痛がっているキルケーを見てクスクス笑っている。

ーーしかし、ミランダは爪を噛みながら

「誰、彼女をここに呼んだ人は?」

そのミランダの問いに一同誰も反応しない。
ミランダは目を細めながら、

「今、私たちがここにいるのは偶然が重なって集まっているだけなのよ。予め予定していた事じゃないわ。それなのになぜ彼女はここに来たの?それとも偶然?」

ミランダは目を閉じ首を横に振り、

「ありえないわ!!」

ディーンゴーーン

豪華な呼び鈴が屋敷に響き渡る。
精霊たちはその呼び鈴にビクッとなりアーサーにしがみ付いた。
まるで、かくれんぼの鬼が見つけにやって来たかのように。

彼女は敵か味方か・・・。


ーー リリス邸宅に現れた桃色の少女 ーー
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...