14 / 216
第1章: 三人の精霊との契約
防御障壁なの
しおりを挟む重々しい爆発音とともに、街の至る所で黒い煙がもくもくと上がっている。
これは、ただ事ではないとアーサーは即座に判断する。これだけの惨事なのにウチの家の連中は何故動かないのか。アーサーの家は街の護衛もしている。必ず街に異変があれば兄・姉の優秀な魔法使いが駆け付けるはずなのだが・・・何故・・・。
そして、その理由はすぐ分かることにーー。
「よう、アーサー捜したよ。お前にこの新しく手に入れたチカラを見せつけたくてね」
「兄貴・・・何やってんだよ。自分が何やってるか分かってるのか? 街の人たちを危険に晒して、何言ってやがる」
明らかに雰囲気が違うフレディに戸惑いを隠し切れないでいるアーサー。
「アーサー様ーー 禍々しい何かに取り憑かれているようです」
「ふふふーー 取り憑かれていたら厄介ですわ。アーサー様の兄様に迂闊に攻撃出来ないもの」
「取り憑かれていないなら、操ってる可能性があるの」
「なるほど、どっちにしろ迂闊に手は出せないってか・・・」
あれ程憎んでいたのに何言ってんだろ。
あれだけ貶されて、馬鹿にされて、家族でもないと言われて、家を出て行けとさえ言われたのにーー 何故攻撃をためらうことがある。
( このドサクサに紛れ殺してしまえばいいとさえ思うのに )
「アーサー。 この前の屈辱晴らしてやる」
フレディは、こちらに掌を向けたーーその掌から真っ黒な炎のようなものがアーサー達に向けて放たれた。
「アーサーさまーー」
「エルザ、頼む」
シンクロするかのような意思の疎通ーー今何をして欲しいのかがわかるようなお互いの感覚。
エルザが呼んで私を使ってと言ってるように思えたーー俺もエルザにお願いしたかったんだ。
「防衛障壁なの」
アーサー様の周り半径2メートル程をエルザの防衛障壁が発動した。薄茶色の半透明な不思議な空間が先ほどの真っ黒な炎を防いだ。
「これが・・・魔法・・・凄い」
アーサーは、実際にこうして初めて目の前にしてようやく魔法を理解したのだ。
「くっ・・・絶対防御の大地の障壁だと虫の分際で小癪な真似を、何処まで私を侮辱する気だ」
フレディの抑えることの出来ない凶暴の血が焼け爛れたように渦を巻いている。
「フレディ大丈夫だヨ、 アイツの防御障壁は大した事ない。すぐ剥がれるヨ」
「アーサーさま。背後に何かいるの」
「ふふふーー また厄介な者に取り憑かれてしまわれたようね」
悪寒がした。それはフレディの背中から伝わってきて恐ろしいオーラを放っている。
「オヤオヤ。これは出来損ないの精霊サンじゃないですか」
「ーーサタン・・・。何故人間に」
表情を顰めるリサ、精霊たちに動揺がみられる。それに相手もこちらを知っているようだ。
「何故? それはこの方に召喚され再びこの世界に呼び起こされたんですヨ。イヤあ、破壊は楽しいデス。久しぶりの感覚デス」
「・・・兄貴が召喚? 何故」
「何故? くふふーー精霊を召喚しようとして誤って私を呼び起こしてくれたのだヨ」
「お前は、一体・・・」
「あいつはサタン。悪魔よ」
「あ・・くま? 」
「その通り、悪魔デス 」
サタンは不気味な笑みを見せてフレディの背後に周った。
「さあ。フレディお前を侮辱した弟を破壊せよ」
「はい」
フレディはサタンの言われるがまま掌をアーサーに魔法を放つ、しかしーー防衛障壁で回避する。
「ーー兄貴から離れろ!!」
「オヤオヤ。あなた、兄のこと嫌いではなかったんですカ」
サタンはニヤニヤしながら言ってくる。まるで人の心の闇の部分をほじくり返すように。
「アーサー様。コイツは心の闇や隙をついて相手を動揺させて来ますので気をつけて下さい」
サタンは、相変わらずヘラヘラとして不気味な雰囲気を醸し出している。
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います
こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!===
ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。
でも別に最強なんて目指さない。
それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。
フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。
これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる