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第1章: 三人の精霊との契約
彼女たちの夢①
しおりを挟むその夜、夢を見たーー 心を傷めるような夢だった。
リサ、エルザ、シルフィーの内の誰かの見た夢だろう。
知らず知らずのうちに無意識にリンクしてしまっているようだ。
それだけ三人との繋がりが深くなった証拠なのかもしれない。
それは、大きな大きな天まで届いているんではないかと思うくらい壮大な樹、多分この樹のことを世界樹と言うのだろうか。
葉は輝き、幹は太く枝は長く広く全てを包み込むようなとてつもない存在感だ。
その麓に拓けた小さな広場のような場所があり黒板と丸い樹の幹で出来た椅子が十数個ある。
そこに精霊たちが座り黒板に向かって勉強をしている姿が見えてきた。
『これは僕が見た彼女たちの夢の話 』
★ ★ ★
「ーー 以上です。では、今のところをリサ答えてみて」
白髪混じりのパーマ頭で目には老眼鏡をかけた先生がリサに答えを求めている。
「はい。えっと・・・あの・・・」
リサは頭を掻きながら下を向き必死に考えている。周りからはクスクス笑い声が聞こえてくる。
「ふうーーリサもう良いわ。ではルナ答えて」
先生は、うんざりした様子で深いため息を吐いた。
「はい! 答えはーーーー です」
「はい、ルナ良く出来ました」
周りからは拍手が起きるが、リサは下を向いたままだ。
ーー 別の授業 ーー
「エルザ・・・黙ったままでは授業になりませんよ。ちゃんと答えなさい」
エルザは、顔を真っ赤にしてもじもじするばかりで何も答えないままだ。
クラスみんなから笑い声と冷やかしの言葉が飛ぶ。エルザは更に顔を真っ赤にして今にも泣き出しそうな雰囲気だ。
ーー 別の授業 ーー
「今から隣同士手を繋いで、魔力の流れを感じーー」
「先生! シルフィーが手を繋いでくれないです」
騒つくクラス、またなの? などと罵声が飛び交うが、シルフィーは御構い無しの様子で腕を組み断固として腕を繋がない。
ーー 放課後では ーー
「あなた達は何度言ったら分かるの?こんな事で立派な精霊になれませんよ」
リサ、エルザ、シルフィーが授業後残されて説教されている。それを物陰からクスクスみんなが見て笑って馬鹿にしているのが見える。
その他にも様々な場面が映し出されてきた。
どれもこれもアーサーは自分にも似た経験があり、どうしてもその時の自分と重ねてしまう。
彼女たちも自分と同じように辛い過去を背負ってきたんだと改めて感じた。
★ ★ ★
それは突然・・・ルナという人物とあの微妙な雰囲気の原因となるシーンはやって来た。
いきなり場面が切り替わり森の中の出来事に変わったのだ。
そこは神秘の森という場所らしい。
そこまで広くなく精霊の見習いのリサたちでも迷うことなく出てこれる広さらしい。
この森は、世界樹の加護が届かない場所にあり精霊の敵である悪魔族に狙われやすいが護衛に先生が何名か配置されている。
この森を使って五人一組になり三チームが森の中で戦闘演習をするのが今日の授業らしい。
「先生!! 何で私がこの三バカと同じチーム何ですか」
ルナが物凄い剣幕で先生に抗議する。
もちろん、三バカとはリサ、エルザ、シルフィーのことだ。
「チームのバランスを考えて、成績優秀で歴代の精霊でもトップクラスの貴女がこのチームに入るのが一番バランスがとれるのよ。我慢して下さいね」
先生も、申し訳なさそうに慰さめるようにルナを説得している。
ルナも渋々といった雰囲気で、先生から離れ、チームに戻りながら三バカを思いっきり睨み付けた。
リサ、シルフィーはその視線を逸らさず受け止め、ふんっ、といった感じでルナを突き放した。
エルザは二人の陰に隠れて怯えていた。
そして、その時は訪れる・・・
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