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三人の精霊と悪魔教団の書・魔導武闘会編
アヴァロン王国到着
しおりを挟むアヴァロン王国の城下町の人々は誰もが忙しそうに準備に追われている。
子供やお年寄りまで全員が一緒に飾り付けなどを手伝っている。
年に一度の西の大陸最大の祭典、魔法武道会がいよいよ明日開催されるのだ。
アヴァロンのみならず他国の人々も押し寄せ人々でごった返している。
商人にとっては一年に一番の稼ぎ時、中には一年分を一日で稼いでしまう人もいる位だ。
露店も競うようにあちらこちらに建てられている。
魔法武道会が開催される会場は、アヴァロン王国の端にあるコロッセオと呼ばれるすり鉢型のスタジアムだ。
最大収容人数、三万人ーー 会場は毎年超満員になってしまう。
入場は無料なのでもう既に長蛇の列を作り良い席を求めて並んでいる人々。
アヴァロン王国は今、魔法武道会開催を待ちわびているーー
★ ★ ★
「チョットお、そんなとこ触ったらだめよお」
「イヤん、シーサー様のエッチ」
「ねえ、私とも遊んでよお」
城内の一室から洩れる卑猥な会話ーー
その扉を乾いたノックの音が響くーー
「ゴホンッ、国王様お伝えしたいことがございます。 宜しいでしょうか」
「駄目です。 お疲れ様でした」
その言葉に困り果てた顔を浮かべる老人、タキシード姿から執事と思われる。
「明日の魔法武道会の打ち合わせやその後の円卓会議の議題や質疑応答の事前準備、各国に最終的なーー」
「ああーーもう、五月蝿いぞ! 後で行くから去れ」
扉の向こうから怒鳴り散らす声に執事の老人は大きくため息をついた。
執事は、毎度のことだと慣れていた。
シーサーは、会議や話し合いなどそういった事には一切参加しない。
しかし、いざ円卓会議などでは驚くような発言やまわりを納得させ、その場をまとめることができる。
スピーチ能力も堪能で事前に準備していたのかと思うほどだ。
「あっ、そういえば国王様、メイザース様よりアーサー様がまもなくアヴァロンにご到着になられるようです」
そう言い残すと執事はドアの前を後にした。
「アーサー? 誰だ」
首を傾げるシーサー。
「どうしちゃったのお? 珍しく難しい顔してシーサーらしくないぞお」
「そうよお、もっと遊んでよお」
「そうだな! 朝までお前たち付き合えよ」
「イヤーん」
★ ★ ★
「ここがアヴァロン王国ーーーー」
「凄い人なの」
「魔法・・・武道大会? 」
リサは街の至る所に貼ってある宣伝用のポスターに目をやった。
「アヴァロンは明日から始まる年に一度の祭典、魔法武道会の為に賑わっているのよ」
メーディアも何やら待ち遠しいような顔だ。
「この天才キルケー様には縁のない大会だがな。 何せ最初から円卓の魔導士だからね」
高笑いしのけ反るキルケー、街の人々の視線を一点に浴びている。
恥ずかしそうにする精霊たちとメイザースとメーディア。
「アーサーきゅんが元に戻れて良かったですねえ、精霊ちゃん達」
「優しいアーサーさまなの、大好きなの」
満遍の笑みを見せるエルザ、よほど嬉しいようで顔をずっと崩してアーサーから離れないでいる。
エルザだけでなくリサ、シルフィーもアーサーの服を掴んで離さないでいる。
「キルケー、傷は大丈夫なのか」
「何だかとりあえずみたいな言い方だなあ、見た目通りだよ。天才は傷の癒え方も他の人間とは違うのさ」
再び高笑いしのけ反るキルケー。
みんな足早にその場を離れたーー
周りは本当にいろんな種族の人々がいる。
獣人族、精霊、妖精、亜人、巨人など様々な種族が入り混じっている。
「リザードマンやウルフマン初めて見た」
アーサーは、マジマジ物珍しそうに見つめている。
「亜人族、巨人族は一部の地域でしか活動をしていないので見た事がない人が居ても不思議じゃないのだよ」
「私もこういう機会でもなければなかなか交流はないぞ」
キルケーも周りをキョロキョロしながら面白そうな事はないかと捜すように歩いている。
「メイザース様、アヴァロン城より通信がきてますよ」
メーディアの手に円球型の水晶があり何やら映像が映っているように見える。
それを覗きに好奇心旺盛なエルザが食い付いたーー
「凄いの、お爺さんが映ってるの」
水晶に顔を近づけるエルザ。
「ふぉふぉふぉ、これはまた可愛らしいお顔ですね」
水晶の老人が笑顔で微笑みかける。
「うわっ!! ーーしゃべったの」
「エルザちゃん、ダメよ。これは水晶の向こう側の人とおしゃべりする為の道具なのよ」
驚いてメーディアの背後に隠れたエルザ向かって説明すると、メイザースがやって来て水晶を受ける。
「どうも。 アヴァロン城にこのまま向かって宜しいのですか。 例のアーサーきゅんをお連れしたのだよ」
その後、水晶を手にしたメイザースはみんなから少し離れたところで何やら話をすると再び戻って来た。
「どうも円卓会議は魔法武道会後になりそうなのだよ。 せっかくなのだから魔法武道会を観て行こうなのだよ。アヴァロン城に部屋は用意してくれるそうなのだよ」
「シーサーの気紛れだな。 またどうせ女と遊ぶのが忙しいんだよ! 人を呼びつけておいてヤル気のない時は毎回こうだよ」
キルケーは舌打ちをしながら地面の石を蹴った。
「まあまあ、キルケーちゃん。 いつもの事じゃないか。 それよりもアーサーきゅんや精霊ちゃん達にコロッセオやアヴァロン城を案内してあげようじゃない」
メイザースは、捻くれるキルケーを宥めながらみんなに呼びかけた。
「そうよキルケー。せっかくの機会なんだから楽しみましょうよ」
キルケーの背中をポンと優しく叩くメーディア。
「魔法武道会楽しみだね! アーサー様」
どんな催しなのかとはしゃぐリサ。
「そうだね。 楽しみだね」
アーサーは、もう直ぐそこに顔も覚えていない自分の父親がいることの方が気になっていたーー
会って何を話そうとか、どんな顔をすればいいのかなど悩んでいた。
一同は、コロッセオへと歩き出したーー
ーー 魔法武道会開催まで後一日 ーー
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