三人の精霊と俺の契約事情

望月 まーゆ

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三人の精霊と悪魔教団の書・魔導武闘会編

魔法武闘会開幕

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「円卓の魔導士をフリーバトルトーナメントに出場させるですってーー」

「ああ、面白いだろ」

「面白い訳ないじゃない。 何で私まで出場しなくちゃならないのよ」

顔を膨らませて腕を組んであからさまに不機嫌になっているのはシーサーの付き人で世話役のマーリン。

シーサーが国王になる以前からずっとシーサーの側で行動を共にして来た。

マーリンも円卓の魔導士の一人である。

キルケーと同じく魔女なのだが紫色の猫耳フード付きのローブを羽織り、紫色の髪に青い瞳。

ローブの下は露出度の高いほぼ下着のような格好をしている。

とても魔女とは思えない姿だ。

「実際誰が一番強いんだよ。知りたくない」

「全然知りたくないわ。本当くだらないことばかり思いつくんだから」

マーリンは深くため息をつき肩を落とした。

そして何かを思い出したように手をパチンと叩きシーサーを見つめ直した。

「明日の魔法武道会の開催宣言のスピーチ考えてあるの?」

「・・・まあ何とかなるでしょ」

耳をほじりながら答える。

そんなシーサーを見てまたため息をつくマーリン。

「メイザースから連絡が入って息子のアーサーが来てるみたいよ。 会ってきたらどうなの? 感動の再会みたいな感じ」

マーリンはそのシーンを思い浮かべて吹き出して笑った。

シーサーはマーリンの笑った顔を見て舌打ちをした。

「感動の再会も何も初めから会うつもりはない。 顔も変わらないしな。ただ俺の子供だというならそれなりのチカラを見せてもらいたい」

シーサーは不敵な笑みを浮かべたーー

マーリンはその笑みを見てまたため息をついた。

★  ★  ★

朝の静寂を切り裂くように花火の音が国中に響き渡るーーその音にビックリして白い鳩が飛び立つ。

今日は、一年に一度の西の大陸最大の祭典、魔法武闘会だ。

既にコロッセオは超満員でアーサー達も何とか中に入れた格好だ。

コロッセオのVIPルームの中二階には貴族らしき人達がズラリと並んでいる。


そしてーー魔法騎士団の鼓笛隊のファンファーレと共に祭典がスタートした。

演奏に合わせて魔法騎士団の入場行進が始まった。

今年の魔法騎士団は銀の星団ーー先頭は団長のリンスレット。

割れんばかりの歓声に包まれる会場。

その可愛さと美しさに会場から熱気を感じる。

その後に続いて金色の夜明け団が入場を果し会場中央にあるステージの中央に敷かれた赤い絨毯を挟んで二つの団が並んだ。

そしてーーその赤い絨毯をゆっくりと黄金の王冠とアヴァロンの紋章の入った赤いマント、青と赤の二色で作り上げられた貴族の制服を着た成年が現れた。

コロッセオの全ての人々は立ち上がり胸の中心に掌を当て会釈をしまま下を向いている。

彼こそがアヴァロンの国王ーーシーサー・ペンドラゴン。


★  ★  ★


「あの人がシーサーペンドラゴン父親・・・ 」

「あの方がアーサー様のお父さんなのね」

「アーサー様のパパなの」

「アヴァロン王でありアーサー様のお父上」

四人は唾を飲んだーーそれと同時にある疑問に辿り着いた。

「本当に彼が俺の父親何ですか。どう考えても年齢が合わないようなーー」

シーサーの見た目はどう見てもメイザースと変わらないかそれよりも若くみえアーサーより少し上くらいの見た目である。

それならばーーアーサーの父親であればミランダ、フレディの姉、兄は何歳の時の子供なのだろうか。

「シーサー様はもうこのお姿で二十年以上おられるのです」

メーディアは、シーサーをジッと見つめた。

「なぜずっと同じ歳で」

 アーサーも不可解な年齢の謎を解きたいのかメーディアを真剣な眼差しで見つめる。

「アヴァロンを守る為に自分自身が一番魔力があったベストな状態を保つためであると話していました」

「年齢を自由に操る魔法なんてあるのですか」

シルフィーは身を乗り出しメーディアに迫る。

「未来と過去、時の狭間の魔導士マーリン。
彼女の時の砂の魔法」

メーディアは改めてシーサーの隣にいるマーリンを見ながら答えた。

「大魔導士マーリンーー精霊界でもその名は有名です。百年以上前から存在しているのではないか。 ソロモン王に仕えていたのではないか。などありとあらゆる噂を耳にした事があります」

シルフィーも眼鏡を拭き、再び掛け直すとマーリンを改めて見つめた。

そして、シーサーが一歩足を踏み出し叫んだーー


「これより魔法武道会の開催を宣言する!
今回のフリートーナメントには特別ゲストととして円卓の魔導士の参加を全員エントリーしておいた。これにより誰が本当に強いのか皆で見てようじゃないか」

盛り上がる会場ーー

「また俺の息子を名乗る人物がいるらしい。本物の俺の息子ならてっぺんを取れるはずだ! 這い上がって魅せよ! 以上。
皆でこの二日間を楽しもう」

拍手と喝采が沸き起こった、魔法武道会史上最強のフリートーナメントが始まった。

「シーサーの野郎、勝手にエントリーさせやがってーーあら? メイザースの名前はないぞ」

顔を膨らませて文句をつけているキルケー。

「私の場合、戦闘向けではないこと位シーサーも分かりますよ」

メイザースは内心ホッとしているようだった。

「私は漏れなく名前がありました。他にはマーリン、ロビン、ヴァニラ、ランスロット、リンスレット・・・アレイスター」

最後の名前を口にして顔を顰めるメーディア。

「奴も呼ばれているのか・・・」

キルケーも顔色を変える。

「一波乱ありそうな大会ですね」

メイザースも苦笑いを浮かべたーー

「アレイスターって円卓の魔導士だよね。何かあまり良くない魔導士なの? 」

アーサーが訪ねてみるーー

「アレイスターは、禁呪や黒魔術の使い手でその手の魔法では天才的な才能の持ち主故に危ない人物でもある。円卓の魔導士でありながら国が身柄を観察しなければない存在である」

メイザースは、真顔で語ったーー

「なぜそんな人が円卓の魔導士にーー」

「シーサーは、才能を高く評価する人なのよ。性格よりも才能、将来性を見込んで人選しているわ」

メーディアはため息混じりに答えた。

「アーサー様も戦うの? 」

エルザがキョトンとした表情でアーサーを覗き込んだ。

「ああ、そのようだね。 聞きたいこと知りたい事がいっぱいあるんだ。シーサーに近づくには勝ち上がらなければならないらしい」

「親子なのにーー」

リサは少し複雑な表情をしてシーサーを見ていた。

そんなリサの言葉を聞いて確かにと改めて思うアーサーだった。

アーサー自信、本当の家族の在り方や家族愛、父親や母親との接し方をよく知らないから気付かなかったのかもしれない。

「選手の控え室に移動しよう。もうすぐ一回戦が始まるぞ」

キルケーが先頭をきってついて来いと言わんばかりに堂々と控え室の方に歩いて行った。


★  ★  ★


魔法武道会フリートーナメントルール

・年齢、性別、種族などは一切問わない。

・武器の使用は認める。

・相手が場外、気絶、降参したら勝ち。

・相手を死亡させたら失格、牢獄行き。

・試合時間六十分。

・時間内に決着がつかない場合は審判員並びに国王の投票で決める。

・一回戦のみバトルロワイアル制を導入し勝ち残った一名のみをトーナメントバトルに進める。

・バトルロワイアルに勝ち残った二十名によるトーナメントバトル。



*  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *  *

 いよいよ一回戦が始まるーー

場外にはならないだろうと思うくらい広いステージ場に五十人の魔導士や騎士達がヤル気満々で試合開始の合図を待っている。

コロッセオの観客も始まりを待ち侘びて騒めくーー

「注目は何と言っても円卓の魔導士の一人、ロビンだね」

「アーサー様よりも随分と年下に見えますよ。 本当に円卓の魔導士なの? 」

 落ち着きなくフラフラしてヤル気無そうにしているロビンを見ながらリサは、キルケーに尋ねる。 

「抜群の剣術センスに加えて特異体質のオマケ付きだよ。 このグループでどんな凄い奴が紛れ込んでいたとしても良い戦いは出来ても勝つのは相当難しいと思うよ。 それだけロビンは強いよ」

キルケーは、真剣な顔つきでステージを見つめている。

「あらあ。 随分と真面目に解説するじゃないの。 キルケーにしては珍しいわね」

キルケーの隣に来たメーディアが茶化すように目を細めてジッと見つめた。

「私だってたまには真面目に話す事だってあるんだから」

ツンと口を尖らせておどけて見せた。

「そろそろ始まるみたいですわ」

シルフィーが眼鏡を押しあて前のめりになった。

その時ーー会場から喝采が沸き起こった。


「お集まりの皆さまお待たせしました。 これよりAグループの試合を開始します」

猫の獣人族のもふもふした女性がアナウンス席から実況している。

「実況担当は私たち姉妹マイアとーー」

「エレクトラとーー」

「アルキュオネが担当します。宜しくね」

更に盛り上がる会場ーーお馴染みの実況担当のようだ。

三人姉妹の猫娘たちが会場に手を振って歓声に応えていた。

「さあ! 準備は良いですかあ。Aグループの試合実況はマイアが担当します。 では、試合開始ぃ」

その掛け声とともに大きなドラの音が大きく響いたーー


ーー 魔法武道会幕開け ーー
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