三人の精霊と俺の契約事情

望月 まーゆ

文字の大きさ
91 / 216
三人の精霊と悪魔教団の書・魔導武闘会編

幼き日に

しおりを挟む

「この娘はいずれ災を招くだろう。その前に殺してしまえ」

「どうか、どうか命だけはお助けください。まだ幼い娘なのです。お願いします」

騒めきたつ沢山の野次馬たちーー

ここは古に伝える神々の神殿。

その奥にあるゼウス像の前に人々は集まっていた。

老婆の前に膝間付き小さな娘を抱き抱えて泣きじゃくっている母親。

「この私の目が誤魔化せると思っておるのか。幼い娘じゃと・・・」

母親は娘を抱き抱えてながらびくびくと震えている。

「この娘を初めまして見たのは十年程前だった様な気がしたがその頃と何一つ姿形が変わってないのはどうゆう事だ」

先ほどまで騒いでいた野次馬も静まり返る

「この世界において災を招く元になるのは時間を操ることだ。誰にも平等に与えられるー度しかない人生を巻き戻すような事をしてしまえば歴史が変わってしまう。自分の思い通りになる世の中を作り上げようとする事は即ち、世界の崩壊を招くことになる」

野次馬の一人が首を傾げて疑問を問う。

「なぜ、自分の思い通りの世の中を作り上げる事が世界の崩壊に繋がるんですか」

納得の質問に皆がうなづいた。

「独裁者は必ず最後は自分しか信じられなくるものだ。自己中心的な考えが全て通じる世の中なんてあり得ない。必ず反発を招くだろう。それは必ず争いに発展し血を流す。そして最後は一人だと気づくのだ」

息を飲んで話を聞きいる野次馬たち。

「持って生まれた能力を恨め娘よーー」

「やめてお願いします! 逃げなさいマーリン」

「おかあさん」

「早く!」




逃げたぞ、捕まえろ




ーーーーー







酷くうなされたのか、マーリンは全身に汗をかいていた。

「ーーまたこの夢・・・」

額に手をやり、ズキズキ痛む頭を抱えながらベットから上体起こした。

幼い日の記憶ーー


自分を逃すために母親は記憶の中で何度も何度も犠牲になった。
死んでしまったのか?
牢獄送りになったのか?
天界から地獄に落とされたのか?
その後、二度と母親に会うことはなかった。

「ーーおかあさん・・・」


彼女の人生の歯車はこの時から狂い始めたーー 

欲しくてこんなチカラ手に入れた訳じゃないのに・・・
母親は、毎晩娘を抱きながら許しを乞いた。

「ごめんね、ごめんね。お母さんがちゃんと普通の子に産んであげれなくて」
「そんなことない。私はお母さんと一緒にいれふだけで幸せ」 
「ああ、神様こんな優しい子になぜこんな試練のような仕打ちを・・・」

母親は寝るときもずっと娘を抱きしめて離さなかった。
いずれ離れ離れになることが分かっているかのようにーー


マーリンは天界に対し怒りと復讐の炎を燃やした。

長い年月と月日を重ねて歴史を捻じ曲げてきた。

全ては、天界に血の雨を降らせること。

「ーーあと少しで、何百年の歴史の旅も終わる」


ーーそのとき


部屋の中に乾いた木のノックの音が二回響いた。

「マーリン様、朝食の準備が整いましたのでお越し下さい。 本日は誠に喜ばしく天候に恵まれ絶好の魔導武道大会日和ですよ」

マーリンはベットから起き上がるとカーテンを開け窓を開いた。

朝日を浴びた清々しい朝の風がまるで心を癒してくれるようだった。
この瞬間だけは全てを忘れてありのままの自分になれている感覚だった。

「よっ! おはよマーリン」

急に声をかけられビックリしていると隣の部屋の窓から髪の毛が爆発しているシーサーが覗いていた。

顔も洗ってない髪の毛もセットしてないだらし無い姿を初めて見られて下を向き恥ずかしそうにしているとーー

「ーーなんか普通の感じのマーリン初めて見た感じがする。ありのままの君を。いつもどこかで本当の自分を隠しているんじゃないかとかそんな風に思っていたから今の君は凄く素敵に感じるよ」

シーサーは笑みを浮かべマーリンを見つめた。
ただ、爆発した髪の毛で今の話が冗談にしか聞こえないのは残念だ。

「ーーそんな髪で言われても説得力ないですわよ」

「えっ? 本当だ。ハハハ」
頭を押さえながら窓から顔を引っ込めた。

マーリンは嬉しかった。
ありのままの自分の姿を素敵と言ってくれたことにーー

アヴァロン城の三階の一室がマーリンの部屋。
そこからコロッセオが見える。

今日で全てが終わるーー

その後は、顔を引っ込めた隣の部屋の窓、誰もいない隣をしばらくマーリンは見つめていた・・・




ーー 復讐の炎は天界に ーー
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...