106 / 216
三人の精霊とカタリナ公国の書
レオンとソフィア③
しおりを挟む四階の国王の部屋の前には人だかりが出来ていて皆、困惑な様子で顔を曇らせていたーー
「ーーソフィア様!!」
使用人の人が言うと一斉に皆、振り向きざわつく。
「国王様がお待ちかねです。さあ、中に」
使用人の女性に国王の部屋へ引っ張られるように中へと案内されて行った。
国王の部屋の中には沢山の医者がいるようだったがレオンが入る前に国王様部屋のドアは閉められてしまって中の様子は伺うことは出来なかった。
何も出来ない自分への苛立ち。不安。そういった幾つの感情が入り混じり、べっとりと顔に刻み込まれていた。
☆
それからどれ位の時間が経っただろうーー
まだソフィアは国王の部屋からは出て来ない。
使用人たちも一人、また一人と姿を消していった。多分、他の仕事があるのだろう。
すると、階段をゆっくりと白髪の老人紳士が上がってきたーー
「ーー国王様の容態はどうだ?」
少し疲れた様子で問いかけてきた。階段を登ってくるのが大変だったようだ。
「まだ、何とも・・・」
「・・・そうか」
「ーー大丈夫だよね。大したことないよね」
「分からんよ」
「分からんってーーソフィアは?国王様が亡くなったられソフィアは・・・」
レオンは切羽詰った表情で顔を真っ青にして言う。
次の瞬間、白髪の老人執事はレオンの顔に平手打ちをしたーー
「ーーーーっ!!!」
頬を抑え驚き困惑するレオン。
「もしもの話をするな。使用人はいつも冷静でいろ。心配するのはソフィア様か?国王様の容態ではないのか?もしものことなんか、口が裂けても口にするな。それを口にして良いのはソフィア様だけだ」
白髪の老人執事は冷静にレオンに語りかけるように言う。
レオンは直ぐに頭を下げ。
「ーーすいませんでした!!」
と、頭を下げ大きな声で謝った。
すると、白髪の老人紳士はボソボソと語りだした。
「あの子は優しく、人の痛みや他人を思いやれる素晴らしい子だよ。王妃様にそっくりだ。それだけに本当に心配だよ。お前が、心配するのも無理はない。あんな良い出来た人間は他にはいない。見ているだけでみんなの心を温かく出来る、どんなに自分が辛くても笑顔を絶やさない。ーー他にはいないよ。
私も永くカタリナ城で執事を勤めてきたが王妃様とソフィア様だけだ」
白髪の老人執事は遠い目をしながら四階の窓から外の景色を見ながら語ったーー
「ーーレオン。あの子を守ってあげられるのはお前だけだよ。大切にな」
そう言い残すと国王の部屋の扉を横目にまた階段を下っていった。
「ーー絶対守るよ、お父さん!」
いつの間にか外は夕暮れになっていた。
☆
いつの間にか廊下の柱にもたれて寝ていたーー。
まだ寝ぼけていて頭が働かない。
凄く騒がしい、人が凄く慌ただしく部屋を出入りしている足音が聞こえてくる。
誰かの鳴き声がする。誰の?
ハッとなって慌てて目を覚ますレオン。
「ーーお父様ぁぁぁ、うわぁぁぁん」
ソフィアの悲鳴に近い鳴き声・・・
「まさかーー」
騒然とする中、使用人やらどっかの偉い人達を押し退け国王の部屋に入るーー。
「ソフィア・・・」
国王に覆い被さるようにしがみつき泣きじゃくるソフィア。
国王は亡くなった・・・
ソフィアはいつまでも、いつまでも亡くなった国王にしがみ付き離れなかった。
何と声をかけて良いのだろう?
僕に何が出来るのだろう?
明日どんな顔をすれば良いのだろう?
ソフィアは、両親を亡くした、たった一人の肉親を・・・。
僕は、母親を知らない。
ずっと、お父さんと二人きりだ。
そして、ずっと王宮で育った。
母親の話は一度聞いたことがあるが死んだとだけ伝えられた。
なので、これ以上は聞かなかった。
お父さんも思い出したくないし、いつかちゃんと話してくれると思ったからだ。
僕には、お父さんがいる。
けど、ソフィアは・・・もう誰も。
ゆっくりと国王の部屋を出たーー。
ソフィアには、声をかける言葉が見つからなかった。
いつの間にか空は薄っすらと明るくなっていたーー。
今の僕に何が出来るんだろう。
窓の外から見える湖を見つめながら自分の力の無さを感じた。
この日帝国から全世界の国々にある条例案が提示されることになる。
0
あなたにおすすめの小説
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います
こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!===
ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。
でも別に最強なんて目指さない。
それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。
フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。
これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる