三人の精霊と俺の契約事情

望月 まーゆ

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三人の精霊とカタリナ公国の書

レオンとソフィア③

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四階の国王の部屋の前には人だかりが出来ていて皆、困惑な様子で顔を曇らせていたーー

「ーーソフィア様!!」

使用人メイドの人が言うと一斉に皆、振り向きざわつく。

「国王様がお待ちかねです。さあ、中に」

使用人メイドの女性に国王の部屋へ引っ張られるように中へと案内されて行った。

国王の部屋の中には沢山の医者がいるようだったがレオンが入る前に国王様部屋のドアは閉められてしまって中の様子は伺うことは出来なかった。

何も出来ない自分への苛立ち。不安。そういった幾つの感情が入り混じり、べっとりと顔に刻み込まれていた。


☆ 


それからどれ位の時間が経っただろうーー

まだソフィアは国王の部屋からは出て来ない。

使用人メイドたちも一人、また一人と姿を消していった。多分、他の仕事があるのだろう。

すると、階段をゆっくりと白髪の老人紳士が上がってきたーー

「ーー国王様の容態はどうだ?」

少し疲れた様子で問いかけてきた。階段を登ってくるのが大変だったようだ。

「まだ、何とも・・・」

「・・・そうか」

「ーー大丈夫だよね。大したことないよね」

「分からんよ」

「分からんってーーソフィアは?国王様が亡くなったられソフィアは・・・」

レオンは切羽詰った表情で顔を真っ青にして言う。

次の瞬間、白髪の老人執事はレオンの顔に平手打ちをしたーー

「ーーーーっ!!!」

頬を抑え驚き困惑するレオン。

「もしもの話をするな。使用人はいつも冷静でいろ。心配するのはソフィア様か?国王様の容態ではないのか?もしものことなんか、口が裂けても口にするな。それを口にして良いのはソフィア様だけだ」

白髪の老人執事は冷静にレオンに語りかけるように言う。

レオンは直ぐに頭を下げ。

「ーーすいませんでした!!」
と、頭を下げ大きな声で謝った。

すると、白髪の老人紳士はボソボソと語りだした。

「あの子は優しく、人の痛みや他人を思いやれる素晴らしい子だよ。王妃様にそっくりだ。それだけに本当に心配だよ。お前が、心配するのも無理はない。あんな良い出来た人間は他にはいない。見ているだけでみんなの心を温かく出来る、どんなに自分が辛くても笑顔を絶やさない。ーー他にはいないよ。
私も永くカタリナ城で執事を勤めてきたが王妃様とソフィア様だけだ」

白髪の老人執事は遠い目をしながら四階の窓から外の景色を見ながら語ったーー

「ーーレオン。あの子を守ってあげられるのはお前だけだよ。大切にな」

そう言い残すと国王の部屋の扉を横目にまた階段を下っていった。

「ーー絶対守るよ、お父さん!」

いつの間にか外は夕暮れになっていた。


☆  


いつの間にか廊下の柱にもたれて寝ていたーー。

まだ寝ぼけていて頭が働かない。
凄く騒がしい、人が凄く慌ただしく部屋を出入りしている足音が聞こえてくる。

誰かの鳴き声がする。誰の?

ハッとなって慌てて目を覚ますレオン。

「ーーお父様ぁぁぁ、うわぁぁぁん」 

ソフィアの悲鳴に近い鳴き声・・・

「まさかーー」

騒然とする中、使用人メイドやらどっかの偉い人達を押し退け国王の部屋に入るーー。

「ソフィア・・・」

国王に覆い被さるようにしがみつき泣きじゃくるソフィア。


国王は亡くなった・・・


ソフィアはいつまでも、いつまでも亡くなった国王にしがみ付き離れなかった。


何と声をかけて良いのだろう?
僕に何が出来るのだろう?
明日どんな顔をすれば良いのだろう?
ソフィアは、両親を亡くした、たった一人の肉親を・・・。


僕は、母親を知らない。
ずっと、お父さんと二人きりだ。
そして、ずっと王宮で育った。

母親の話は一度聞いたことがあるが死んだとだけ伝えられた。
なので、これ以上は聞かなかった。

お父さんも思い出したくないし、いつかちゃんと話してくれると思ったからだ。

僕には、お父さんがいる。
けど、ソフィアは・・・もう誰も。


ゆっくりと国王の部屋を出たーー。
ソフィアには、声をかける言葉が見つからなかった。


いつの間にか空は薄っすらと明るくなっていたーー。

今の僕に何が出来るんだろう。
窓の外から見える湖を見つめながら自分の力の無さを感じた。

この日帝国から全世界の国々にある条例案が提示されることになる。
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