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三人の精霊とクリスタルパレスの魔女の書
姉妹
しおりを挟む川は涼しげな水音を響かせる、 森の木々はそよそよと風が歌っているようだ。
生い茂る緑の中に真っ白な墓石に剣一本刺さってる。ーーその隣には小さな暮石。
その両方に綺麗な花を添える紫色の髪の女性。彼女は毎日ここへ来て花を取り替える。ここに眠るのは彼女にとっては大事な人。
彼女がいつも通り花を取り替え、墓石にお参りをしていると人影が現れた。
「ーー誰?メルル?」
「・・・お姉ちゃんですか?」
「ーーーー」
突然現れた紫色の髪の少女。瞳は青く澄んでいてリリスの忘れていた空白の時間が動き出した。
「エレナなの?」
「うん。お姉ちゃんですか?」
「そうよ・・・あなた生きていたのね。ずっとずっとあなたの事捜してーー」
リリスはエレナに走り寄り抱き締めた。
「お姉ちゃん?」
ゆっくりとそれはアルバムを一枚、一枚めくるように思い返す記憶。
「エレナごめんね。一人にさせて寂しかったね」
リリスは涙を流しながらエレナをしっかりと抱き締める。
「おねえ・・・ちゃん」
喧嘩したこと一緒に遊んだこと、一緒に笑ったこと、お母さんと三人で出かけた事、一緒に寝たこと。
今、エレナは大好きな大切な家族を思い出を思い出した。
「おねえぢゃん」
三年ぶんの涙が滝のように溢れ出した。
ずっと忘れてたけど心の中で貯めていただけだった。大切なたった一人の家族。
「おねえぢゃん、おねえぢゃん、おねえぢゃん」
エレナは子供のようにわんわんと泣いた。
エレナとリリス二人はいつまでもいつまでももう二度と離れないように抱きしめ合っていた。
二人の再開を邪魔しないようにアーサーとケイト、ナタリア、メルル、三人の精霊は二人を残しホーエンハイムの城へ戻って行った。
☆ ☆ ☆
「本当に良いのか?このままリリスとホーエンハイムに残らなくて」
「うん、 会いたくなったらいつでも会えるから」
「私は、エレナと一緒に居たいけどなあ」
「お姉ちゃんそんな事言わないでよ。私の決心が鈍るじゃない」
「まあ、私より大事な人の側に居たいって事なのかなあ?」
エレナは顔を真っ赤にして、
「お姉ちゃんのバカあ!!」
逃げるリリスの後を追いかけるエレナだった。
「エレナさん記憶も戻って元気になって良かったですね」
「ありがとうアーサー、君が偶然あの時バンディッツの本部に来てくれたおかげだよ」
「リリスにゃんもずっと心が塞ぎこんでいたのですにゃん。本当に妹さん事だけが希望だったのですが、再会できて本当に喜ばしいにゃん」
メルルは微笑ましい姉妹愛に目を潤ませていた。
「エレナ様、リリス様本当に良かったですね」
ナタリアは涙を流しながら二人を見つめた。
「僕たちはクリスタルパレスに向かおうと思っているんだ。そう言えば、何かバンディッツの本部に用があったんじゃないのか?」
ケイトに言われ「あっ」と思い出したアーサー、
「レーベンハートさんに挨拶するの忘れてたよ」
「アーサー様のドジっ子」
リサに冷やかされるアーサー。
「どうします?またローズクラウンのバンディッツ本部に戻られるのですか?」
眼鏡を押さえるシルフィー。
「このままキャメロットに戻った方が速いな。キャメロットに戻って準備してからレーベンハートさんに挨拶をしよう」
「賢明ですわね」
アーサー達の会話がひと段落ついた時、リリスのポケットが眩く光る。
「お姉ちゃんポケットが光ってるよ」
「あら?誰からの通信かしら」
リリスはポケットから水晶を取り出した。
「ーーーー」
沈黙が流れるーー。
「お姉ちゃん?」
リリスの顔がみるみる強張る。
「リリスにゃん?」
リリスは重い口を開いた。
『アーサー君、円卓の魔道士の召集よ。場所はバルティカ戦線よ』
ーー 世界一過酷な最前線へ ーー
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