三人の精霊と俺の契約事情

望月 まーゆ

文字の大きさ
144 / 216
三人の精霊とバルティカ戦線の書

神竜対人間①

しおりを挟む

「威勢の良い人間が何人かいるねえ」

「サーペント、暴れに行っても良いんだぞ」

「冗談だろ? 人間如きに神竜の俺が手を下すのか?」

「俺は、冗談は嫌いだ!行くのか?行かないのか?」

サーペントは、その言葉をはぐらかすように、

「・・・そもそも、他の神竜たちは何してんだ?ファフニールとエキドナは人間の肩を持つとか頭の可笑しい事を言い出してる。アジ・ダ・ハーカとウロボロスの野郎はどこで何してんだ?」


「ウロボロスは、そろそろ来るはずだ。アジ・ダ・ハーカはここ何年も姿を見た奴はいない。サーペントお前が行かないなら俺が手を下すだけだ」

漆黒の翼を持つ竜の燃える様な赤い瞳がサーペントの青い瞳を睨み付ける。

「・・・わ、分かった。俺が人間に手を下す」

サーペントの中には、神の言葉がまだ残っていた。『人間と共に歩み生きろ』という教えを。それに反いた竜は、アポカリプスのみ。結果、人間に封印されたーー。

神の言葉に反いた罰だと思っていた。竜は、神が創り上げた創造主。人間と共に歩み、人間と共に豊かな世界を作る。それが今、争いを繰り広げている・・・。更に、自分は、人間に手を下そうとしている。

許されるのか・・・それともアポカリプスのように人間によりーー嫌、神の鉄槌が下るのか?


☆ ☆ ☆

「ヴィルぅぅぅ、まだここにいるの?そろそろ違うところに出かけようよ」

ヴィルの周りをくるくると、茶色のボブカットの精霊が口を膨らませて飛び回わっている。

「私も行きたいのは、同じ気持ちだよ。だけどね、彼が楽しいものを見せてくれるらしいので待っているんだよ」

キツネ目の男が申し訳なさそうに精霊に話しかける。その言葉に感情があるのか、無いのか、その表情も作った演技ではないのか?その全てが何とも表現し辛い。

「ふーん。ヴィルにも友達いるんだ」

「・・・トモダチ」

その言葉に何かを思い出すかのように、遠い目をするヴィル。

「私は、ミリアがいるよ! ずっと私のこと待っててくれてるの。早く会いたいなあ」

笑顔を振り撒きヴィルの周りをくるくると飛び回る。

「私にも、友達はいたかな・・・今は、会っていないんだ」

ミリアは、ヴィルの顔を覗き込んで笑顔で、

「じゃあ、私と同じだよ。早く会いたいね」


キツネ目のヴィルの目が開いたーー。

思わずヴィルの口から溢れた言葉、


『パトリシア・・・』



☆ ☆ ☆


「魔弾【ラグナ・リボルバー】」

アスベルが指でピルトルを撃つような仕草をすると突き出した右手の人差し指から光の閃光が放たれるーー。

アスベルの特異能力【魔弾】、自身の体内エネルギーを弾に変えてピルトルのように敵に撃ち込む事ができ、魔法とは違い、敵の属性関係無しにダメージを与える事が出来る。

「くっ、魔弾で全然ダメージを与えられてないなんて」

「明らかに、この大きな竜は他の竜とは違うわ」

「違うなんてレベルじゃねーぜ、スピードが桁違いだ」

バッツの顔が険しくなる。

神竜サーペント、蛇の様な肉体を持っているがその表面は、硬い鱗のようなもので覆われている。本来は、水竜の部類に入るが神竜と呼ばれる存在なので空中に浮かぶ事も出来る。

サーペントの特徴は、大気中を含む全ての水を操ること・硬い鱗は半端な魔法や攻撃を回避する・そしてそのスピードの速さだ。【アルカナ・ナイツ】の中で一番動きの速いバッツのスピードでも追いきれない程だ。

「デカイし速い・・・リリー!!」

バッツが後方にいるリリーに向かって叫ぶ。

「分かってわよ。今準備してるわ」

リリーは、サーペントに向かって右手の人差し指と親指を円形にして覗き込む。

「ターゲットロック! ストップ」

リリーの特異能力は、ターゲットにした者の行動を制限することができる。ただし、リリーが指を円形にして覗き込むんでいる範囲内の者に限定される。制限は、ストップ・スロー・スピードの三種類。

リリーがサーペントをストップさせている間にウィリアムスとアスベルが攻撃する。

「ドラゴンスレイヤー」
「魔弾【ラグナ・リボルバー】」

ストップで動けないサーペントに直撃する。
更に、バッツが高く跳ね上がりオーラブレードで切り裂くーー。

サーペントから苦痛に満ちた咆哮がバルティカ戦線に初めて響き渡った。

「もう一発ーー!」

バッツが着地し更に下から斬りこもうと体制を変えると、サーペントの目がギョロッとバッツを睨む。

「な、何? 急に気温が・・・寒い」

後方で待機しているミモザとフルールは二人肩を寄せ合いながらガチガチと歯を鳴らしている。

「危険な感じがする・・・」

フルールは、小さな声で呟いた。

空中の水分を氷の結晶の刃に変え、アルカナ・ナイツを襲うーー。

『ダイヤモンド・ダスト』

バッツは、直感で分かった。ーーこれは危険だと。斬りこもうとしていた体制を元に戻し後方に飛び、少しでもサーペントから離れる。大気中がまるでイルミネーションの飾り付けをしたからのようにキラキラと輝いている。

しかし、そんな優しい物ではなく一つ一つ鋭利な刃物の様に鋭くなっていて、触れれば切り裂かれる。それが今まさに無数に降り注そがりアルカナ・ナイツに襲い掛かる。

「ーーヤバっ!!」

バッツが思わず倒れ込みながら目を塞いだ。
確実にサーペントの攻撃の直撃を避られないと思った。ーーしかし、

「・・・ん?」

バッツがゆっくりと目を開けたその先には、

「ふーっ、フルール助かったぜ」

フルールの特異能力【ミラージュシールド】

一定時間だけ絶対防御の障壁を貼る事が出来る。時間が経つと自然にガラスが割れるように崩れてしまう。

バッツが安堵の表情を浮かべていると目の前に貼られたシールドは、音を立てて崩れて落ちた。

「間に合って良かったです」

フルールは笑顔を見せたのは、つかの間ーー、

「バッツさん!!」

フルールが珍しく大声で叫ぶーー。

サーペントの前に巨大な竜が地面から現れた。バッツは慌てて後方にいるアルカナ・ナイツのメンバーの位置まで下がった。

「更に、巨大な竜が増えたな・・・」

ウィリアムスが右腕を押さえながら、眉間にしわを寄せる。

「・・・・・・」

「どーしたのバッツ?」

「ああ、ミモザ悪いが頼まれてくれ」

「ーーーー」

「賢明な判断ね。 分かったわ」

「バッツお前らしくないが、俺も賛成だ」

「ミモザ頼む!」

「任せて」


☆ ☆ ☆


「サーペント、何を遊んでいる」

燃えるような赤い皮膚に、小さな漆黒の翼の竜。

「ウロボロス・・・」

「サーペント貴様、人間に情けをかけていないか?」

「・・・・・・」

「貴様も結局は、エキドナやファフニールと同じ類いって訳か」

「俺は別に・・・」

「まあいい、貴様はそこで見ていろ!俺が人間を葬ってやる」

「ウロボロス・・・」

ウロボロスは咆哮を響かせたーー。

ーー 神竜 対 人間の第ニラウンド ーー
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜

平明神
ファンタジー
 ユーゴ・タカトー。  それは、女神の「推し」になった男。  見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。  彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。  彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。  その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!  女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!  さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?  英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───  なんでもありの異世界アベンジャーズ!  女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕! ※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。 ※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います

こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!=== ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。 でも別に最強なんて目指さない。 それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。 フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。 これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

処理中です...