ショートショートホラーミステリー小説集

お薬を作ろう！

「さぁ、今日はお薬を作る授業ですよ！皆んな、材料は持って来てくれましたか？」

ハーイ！と生徒たちが声を出して、手を挙げた。

すると机の中やランドセルの中から使えそうと判断した物を取り出した。

でも、小学生が考える物だから限られているだろう。

私はある小学校の中堅の女教師である。

今日は実験というか、薬物被害が多い昨今、いかに薬を勝手に作ると危険かを教えるための授業である。

生徒は様々な物を持参した。

ビタミン剤、ニンニク、飴、キャラメル、ガム、ピーマン、人参、ナスなどなど。

だが何故、野菜？と思い、持って来た子に聞いてみた。

すると、野菜持参派の全員が揃って同じ意見で一致した。

「苦手な物だから、苦いお薬になるかなと思って！」

いかにも子供らしい純粋な意見だわと感心すると同時に笑いも覚えた。

さて、では、と、ん？かなちゃんは白い粉を持って来たのか。

「かなちゃん、この粉は何？」

「片栗粉だよ！」

おー、違法薬物かと思った…。

「たみお君、これは？」

「プロテイン！」

またしても、薬物かと思ったが、良かった…。

「じゃあ、色々混ぜてみましょう！」

皆んな、ワイワイ騒ぎながら、持ち寄った物を一緒くたにしていく。

私も少し手伝った。

「じゃあ、飲んでみようか…かなちゃんとたみお君は沢山、片栗粉やプロテインを入れたのねー、ちょっとお互い、味見してみてよ」

私も含めて、クラス全員の視線が2人に集まる。

2人は頷いて、一気に飲み干した。

すると、かなちゃんがプルプル震え出し、ギャーッと叫んだかと思うと、ロッカーに何度も頭を打ち付けて、血だらけになり、倒れてしまった。

他方、たみお君はグルグルと頭を回し始め、泡を吹きながら教室中を駆け回ったかと思うと、白目になりながら、ベランダに突進し、落下してしまった…そして、鈍いような音がした後、静かになった。

誰もがしばらく唖然とし、何も言わなかった。

やがて、警察と救急を呼び、すでに亡き者になっていた、かなちゃんとたみお君を運び出したが、2人が飲んだコップからは大量の薬物が検出された。

「あ、じゃあ、片栗粉やプロテインと言っていたのは嘘だったのね…」

私はその場に崩れ落ちて、オイオイ泣いた。



「あ、先生ですか？私です。今日、私たちの不倫現場を目撃した2人を始末しました…私は薬を作る授業にかこつけて、手伝う振りをしながら、先日、作り上げた薬物を彼らが持って来た物とすり替えて、大量摂取させたんですよ…まぁ、彼らには事前に、粉物を持って来ればいいんじゃないのと言っておきましたので、馬鹿正直ですね…これで2人から脅されることは無くなりましたので、次はいつ会いますか？」


(＊Prologueに投稿したものです)