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僕と彼女の願いは通った
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願い事をすると必ずかなうという神社を彼女と訪れ、2人で賽銭箱の前に立ち、頭を下げ、拍手し、手を合わせた。
「ねぇ、何をお願いしたの?」
願い終えた僕が興味本位に聞くと、彼女からは意外な、いや、恐ろしい言葉が返ってきた。
「もちろん、あなたが死にますようにと、ね」
エッ…僕は訳が分からなくなっ…いや、分かった!
少し前に他界した父の莫大な遺産を相続したのだが、その金を狙って…でも彼女にはまだ話していないし、彼女に金が渡るとも思えない。
となると、一体、何だ。
彼女の使い古しのセーラー服を黙ってブルセラショップに売ったことか…いや、もうかなり前の話だし、彼女は恐らく気付いていないはずだと思う…しかし、知ったとしても、そんなことで死んで欲しいと思うだろうか?
あるいは、彼女が持っていたスマホを捨てたことだろうか…泊まったホテルで彼女がシャワーを浴びている際、いけないと思いつつも彼女のスマホを覗き見したら、知らない男性の名前があったので、つい嫉妬して、窓から投げ捨ててしまった…しかし、やはり死を願うほどのことか?
それか、彼女が大事にしていたリカちゃん人形のまがい物を拝借して、ネットオークションをやっている友人に聞いたら、数万円の値がつくことを知り、黙って売り飛ばしたこともあったが、やはり死んで欲しいとまではいかない話ではなかろうか…。
「…ねぇ、ねぇ」
僕はハッとした。
グルグルと頭を回転させていたので、完全に意識が遠のいていた僕を彼女が呼び覚ましてくれたのだった。
「…あのさ、ごめんよ」
僕は嘘をつくのは良くないと思い、彼女に全てを告白した。
彼女の顔は次第に赤みを帯び始め、明らかに怒りが込み上げているようだったが、僕が申し訳なさそうにうなだれると、大きなため息をついた。
「…死にますようになんてお願いしてないわよ。あなたが私に隠していることがあったら、話してくれますようにって頼んだの。でも…」
彼女は一呼吸ついて、軽く笑った。
「あなたが浮気をしていないことが分かって良かった…正直、心配だったのよ」
浮気?やっぱり疑っていたんだな…そして、僕は思い出した。
「さっき話した君のスマホを覗き見た時に見た名前の男性って誰?」
彼女はすぐ笑った。
「もう忘れたの?あなたが考えた名前じゃない。あの時、まだ前の奥さんと別れていなかったでしょ?私と密会していることがバレた時のために、念のため、私のスマホにはあなたの偽名を登録しようって、あなたが言ったのよ。覚えてないの?」
僕の手は汗でグッショリと濡れていて、辺りは暗くなっていた。
「それで、あなたは何てお願いしたの?」
彼女が聞き終わるとすぐ、僕は彼女に飛びかかり、思い切り首を絞めていた。
僕は彼女を殺すつもりは無かった。
しかし、一番隠しておきたいことを言わざるを得ない気持ちに取り憑かれていた。
やはりこの神社に不思議な力があることは間違いないとよく分かった…だから、もう少しで口を滑らすところだった。
彼女に知られるとまずい…だからやむを得なかった。
僕は彼女に死んで欲しかった…妻と別れていなかったからだ。
今日は彼女に別れを切り出すべく、何とはなしにこの神社にやってきたのだが、見えぬ魔力で吸い寄せられたのだろうか…。
手を合わせた際、彼女に死んで欲しいと頼んだが、彼女も僕に死んで欲しいと願っていたなんて、と驚いた…確かに彼女が願ったように僕は彼女に隠していることを話したが、彼女は願ってもいないことを願ったなんて嘘をつくからいけないのさ。
それに、僕は確かに死んで欲しいと願ったが、僕が手を下すとまでは思っていなかった。
結局、彼女は死んだので、改めて、神社の力は証明された…口が裂けても人には言えないけど。
思い返してみれば、彼女の人形やセーラー服を売った時は金に困っていたからなぁ…でも親父が死んで、正直、助かった。
だが、冷え切っていた関係だった妻は手の平を返したように僕に気を遣うようになった…それが金目当てなのが見え見えだったため、別れて慰謝料を払う気にはならなかった…つまり僕は、金欲のために彼女を殺したのだ。
彼女は苦しそうな顔をせずに安らかに死んでいる。
僕は目を閉じた彼女に心から謝ると、涙がこぼれそうになったが、現実に引き戻され、神社の裏手にある森林をかなりかき分けて入った場所まで彼女の体を引きずっていった。
そして、がむしゃらに穴を掘り、彼女を葬ると、神社に目をやり、彼女が生き返ってくれますようにと願おうかと思ったが、さすがにそれはまずいと、身震いし、急いで神社をあとにした。
数年後、神社のすぐ裏手から白骨化した女性が発見されたが、神社の裏の奥深くに彼女を埋めたはずだったのにも関わらず、何故すぐ裏手…?
まさか、本当に彼女が生き返ったのか?
それとも、生きたまま彼女を埋めたのか?
僕は悲しみに暮れ、彼女を弔うため、妻を殺そうと寝室に足を運んだ。
そして、妻の首を絞めようと顔を覗き込むと、そこにいたのは彼女だった!
僕が叫ぶ間も無く、彼女は目を見開き、僕を睨むと、思い切り首を絞めてきた。
助けてくれ…すると、妻…では無く彼女から意外な言葉が聞こえて来た、
「実は私も神社であなたに死んで欲しいと頼んだの…それにもう一つ、あなたの奥さんにさせて欲しいともね…でもまさか私と奥さんが入れ替わる前に、あなたが奥さんを殺そうとしていたとは、私も罪悪感無く、あなたを殺せるわ…まぁ、何でもいいけど、あなたに死んで貰って、私が財産を全て頂くわね…それからね、あなたの奥さんは存在しないことになって、初めから私があなたの妻ということになるから覚えておいてね…あ、そうそう、あなたの財産はあなたが死ぬと、全て私に来ることになっているし、あなたを私を殺した例の神社の裏に埋めてあげるから安心して、成仏なさい…じゃ、さよなら」
そして、ニヤニヤと笑う彼女はさらに強く僕の首を押さえ付け、僕の意識は失われていった。
(*Prologueに投稿したものを修正して、再投稿したものです)
「ねぇ、何をお願いしたの?」
願い終えた僕が興味本位に聞くと、彼女からは意外な、いや、恐ろしい言葉が返ってきた。
「もちろん、あなたが死にますようにと、ね」
エッ…僕は訳が分からなくなっ…いや、分かった!
少し前に他界した父の莫大な遺産を相続したのだが、その金を狙って…でも彼女にはまだ話していないし、彼女に金が渡るとも思えない。
となると、一体、何だ。
彼女の使い古しのセーラー服を黙ってブルセラショップに売ったことか…いや、もうかなり前の話だし、彼女は恐らく気付いていないはずだと思う…しかし、知ったとしても、そんなことで死んで欲しいと思うだろうか?
あるいは、彼女が持っていたスマホを捨てたことだろうか…泊まったホテルで彼女がシャワーを浴びている際、いけないと思いつつも彼女のスマホを覗き見したら、知らない男性の名前があったので、つい嫉妬して、窓から投げ捨ててしまった…しかし、やはり死を願うほどのことか?
それか、彼女が大事にしていたリカちゃん人形のまがい物を拝借して、ネットオークションをやっている友人に聞いたら、数万円の値がつくことを知り、黙って売り飛ばしたこともあったが、やはり死んで欲しいとまではいかない話ではなかろうか…。
「…ねぇ、ねぇ」
僕はハッとした。
グルグルと頭を回転させていたので、完全に意識が遠のいていた僕を彼女が呼び覚ましてくれたのだった。
「…あのさ、ごめんよ」
僕は嘘をつくのは良くないと思い、彼女に全てを告白した。
彼女の顔は次第に赤みを帯び始め、明らかに怒りが込み上げているようだったが、僕が申し訳なさそうにうなだれると、大きなため息をついた。
「…死にますようになんてお願いしてないわよ。あなたが私に隠していることがあったら、話してくれますようにって頼んだの。でも…」
彼女は一呼吸ついて、軽く笑った。
「あなたが浮気をしていないことが分かって良かった…正直、心配だったのよ」
浮気?やっぱり疑っていたんだな…そして、僕は思い出した。
「さっき話した君のスマホを覗き見た時に見た名前の男性って誰?」
彼女はすぐ笑った。
「もう忘れたの?あなたが考えた名前じゃない。あの時、まだ前の奥さんと別れていなかったでしょ?私と密会していることがバレた時のために、念のため、私のスマホにはあなたの偽名を登録しようって、あなたが言ったのよ。覚えてないの?」
僕の手は汗でグッショリと濡れていて、辺りは暗くなっていた。
「それで、あなたは何てお願いしたの?」
彼女が聞き終わるとすぐ、僕は彼女に飛びかかり、思い切り首を絞めていた。
僕は彼女を殺すつもりは無かった。
しかし、一番隠しておきたいことを言わざるを得ない気持ちに取り憑かれていた。
やはりこの神社に不思議な力があることは間違いないとよく分かった…だから、もう少しで口を滑らすところだった。
彼女に知られるとまずい…だからやむを得なかった。
僕は彼女に死んで欲しかった…妻と別れていなかったからだ。
今日は彼女に別れを切り出すべく、何とはなしにこの神社にやってきたのだが、見えぬ魔力で吸い寄せられたのだろうか…。
手を合わせた際、彼女に死んで欲しいと頼んだが、彼女も僕に死んで欲しいと願っていたなんて、と驚いた…確かに彼女が願ったように僕は彼女に隠していることを話したが、彼女は願ってもいないことを願ったなんて嘘をつくからいけないのさ。
それに、僕は確かに死んで欲しいと願ったが、僕が手を下すとまでは思っていなかった。
結局、彼女は死んだので、改めて、神社の力は証明された…口が裂けても人には言えないけど。
思い返してみれば、彼女の人形やセーラー服を売った時は金に困っていたからなぁ…でも親父が死んで、正直、助かった。
だが、冷え切っていた関係だった妻は手の平を返したように僕に気を遣うようになった…それが金目当てなのが見え見えだったため、別れて慰謝料を払う気にはならなかった…つまり僕は、金欲のために彼女を殺したのだ。
彼女は苦しそうな顔をせずに安らかに死んでいる。
僕は目を閉じた彼女に心から謝ると、涙がこぼれそうになったが、現実に引き戻され、神社の裏手にある森林をかなりかき分けて入った場所まで彼女の体を引きずっていった。
そして、がむしゃらに穴を掘り、彼女を葬ると、神社に目をやり、彼女が生き返ってくれますようにと願おうかと思ったが、さすがにそれはまずいと、身震いし、急いで神社をあとにした。
数年後、神社のすぐ裏手から白骨化した女性が発見されたが、神社の裏の奥深くに彼女を埋めたはずだったのにも関わらず、何故すぐ裏手…?
まさか、本当に彼女が生き返ったのか?
それとも、生きたまま彼女を埋めたのか?
僕は悲しみに暮れ、彼女を弔うため、妻を殺そうと寝室に足を運んだ。
そして、妻の首を絞めようと顔を覗き込むと、そこにいたのは彼女だった!
僕が叫ぶ間も無く、彼女は目を見開き、僕を睨むと、思い切り首を絞めてきた。
助けてくれ…すると、妻…では無く彼女から意外な言葉が聞こえて来た、
「実は私も神社であなたに死んで欲しいと頼んだの…それにもう一つ、あなたの奥さんにさせて欲しいともね…でもまさか私と奥さんが入れ替わる前に、あなたが奥さんを殺そうとしていたとは、私も罪悪感無く、あなたを殺せるわ…まぁ、何でもいいけど、あなたに死んで貰って、私が財産を全て頂くわね…それからね、あなたの奥さんは存在しないことになって、初めから私があなたの妻ということになるから覚えておいてね…あ、そうそう、あなたの財産はあなたが死ぬと、全て私に来ることになっているし、あなたを私を殺した例の神社の裏に埋めてあげるから安心して、成仏なさい…じゃ、さよなら」
そして、ニヤニヤと笑う彼女はさらに強く僕の首を押さえ付け、僕の意識は失われていった。
(*Prologueに投稿したものを修正して、再投稿したものです)
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