ショートショートホラーミステリー小説集

キタさん

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似た者同士

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「お母さん、ただいま!ちょっとテレビ観るね!」

「宿題、やってからにしなさいよ!」

「フワーい!」

私は宿題には目もくれず、バラエティー番組を観始めた。

すると、お母さんがそっと近寄ってきた。

「宿題やってないよね…じゃあ、約束を破ったから…」

お母さんは後ろ手に隠し持っていた金属バットを思い切り何度もテレビの画面目掛けて叩きつけ、壊してしまった。

私はゲッ!と口に出して言ってしまうと、お母さんは私の顔をにらみつけた。

「だから言ったでしょ!宿題を終えてからにしなさいと…あんたが言うことを聞かないからいけないのよ!」

私はビクッとした。

いけないいけない、お母さんの恐怖スイッチを入れてしまうとたいへんなことになる。

「ごめんなさい…これから急いで宿題します!」

私は謝って、一目散に取り掛かった。

しかし、またもやお母さんの導火線に火をつけることになってしまった。

「そろそろお風呂に入りなさい!」

私はもう少しで宿題が終わりそうだったので、分かったと言ったものの、お母さんの言うことを完全に聞き流してしまった。

すると、お母さんは金属バットを持ってお風呂場に行き、浴槽をバンバンと叩きまくり、傷だらけにしてしまった。

私は、またお母さんに謝って、やめて貰った。

これ以上、お母さんを怒らせるとたいへんなことになるのは目に見えていたので、何か言われる度にすぐ実行した。

だが、つい油断してしまい、一大事を迎えてしまった。

「…彼氏君、来たよー」

お母さんは私の彼をいつも名前で呼ばず、彼氏君と呼んでいる。

最初、私はやめてよと言ったが、彼が別に構わないよと笑ったので、それからは当たり前になった。

さて、その日は日曜日で、彼と買い物に行く約束をしていたため、服選びの途中だった。

私は大声で告げた。

「…ちょっと待っててね、もうすぐ行くから」

今日は彼と何をして遊ぼうかななどと考え、ゆっくりと着替えていると、彼の叫び声が聞こえてきた。

あっ、しまった!…私が彼に待ちぼうけを食わせてしまったので、お母さんが彼に襲いかかったのかも知れない。

私は急いで服を着て、居間に向かうと、そこで見た光景は意外なものだった。

お母さんが彼に殴られていたのだ。

彼は私の姿を見て、お母さんから血だらけになった手を離し、我に返ったように、体を震わせた。

「…僕は何てことをしてしまったんだ!おばさん(お母さんのこと)が急に飛びかかってきたので、ついパンチをしてしまい、さらに暴れたので、僕も力が入ってしまって…」

お母さんはまさに虫の息状態で、苦しそうにのたうち回っていた。

そして、次第に動きは収まり、やがて微動だにしなくなったが、私の顔をじっくりと見つめて、一言、声を掛けた。

「…あんたがいけないのよ。早く来ないから…でも良かった、彼氏君に被害が無くて…もし私が死んだら、こ、これを…」

お母さんはスマホを私に差し出し、力を振り絞った。

「…私が彼氏君に殴りかかった姿が映っているから、正当防衛を主張なさいね」

私は涙が込み上げてきた…そして彼と見つめ合い、頷き合った。

お母さんが息を引き取ると、私と彼はお母さんの名誉を守るため、スマホと一緒にお母さんを山奥に埋めた。



「…ねぇ、ご飯出来たよ!」

私は寝ている彼、いや、夫に叫んだが、来る気配が無い。

次第に苛立ってきて、もういいと捨て台詞を吐き、片付けようとしたが、何故か包丁を手に取り、夫のもとへと急いだ。



「お母さん、元気だった?」

「もちろん!あなたも元気そうね…あら、酷い傷!心臓を刺されたの?」

「…そうだけど、お母さん、顔や服が血まみれじゃない…そっか、やっぱりここはあの世なのね…」

「…そうよ。そうか、あなたがここにいるってことは、彼氏君とやり合って、あなたは彼氏君に刺されて、亡くなったのね?」

「…その通りよ。私はお母さんの血を受け継いだのか、彼、と言うよりは夫が呼んでも来ないので、許せなくなって、刺そうとしたら、逆に…」

お母さんはうーんと唸って、私を抱きしめた。

「…私の性格が遺伝したからあなたもつい暴力を振るいそうになったのね。ごめんね」

「…いいのよ。でもね、私、一度じゃないんだ…彼とか夫と言っても、何人も殺してるのよ。今まではうまくいって、山とかに埋めて来たんだけど、今回は逆に刺されちゃった…それから、お父さんは私が生まれる前に病気で死んだって言ってたけど、本当は殺しちゃったんでしょ?…やっぱり、お父さんに待ちぼうけを食わされたからでしょ?」

お母さんはニッコリ笑い、再び黙って私を抱きしめた。



お母さんも私も似た者親子で、2人とも殺されてしまった訳だが、やはり2人とも人を殺しているので地獄行きかと思いきや、どうやら天国に来たらしい…いや、分からない、ここには私とお母さんしかいないように見える。

じゃあ、どこだ…まぁ、どこでもいいが、きっと私とお母さんはまたバトルを始めるに違いない。

その証拠に近くには金属バットも包丁も金槌も、何でもござれと言うかのように置かれている。

私とお母さんは一つ一つ手に取って、ニヤついた…やっぱり親子はいつまでも親子なのだ。


(*Prologueに投稿したものを大幅修正して、再投稿したものです)
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