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女子高生探偵悦子の推理〜怯える女子高生〜
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かつて、名女流推理作家アガサ・クリスティは、「パディントン発4時50分」という小説を発表した。
並行して走っていた電車の片方の電車内の乗客が、もう一方の電車内で行われた殺人事件を目撃してしまうという設定からして興味をそそられたが、今回の事件はその話と似ていた。
やはり2台の電車が並行して走る区間を走行中、ある事件を目撃してしまった1人の女子高生がいたのだ。
女子高生探偵と呼ばれる悦子の親友、国子である。
国子はいつもと同じ帰宅時間に使う、いつもと同じ車両に乗り、いつもと同じ扉付近に陣取った。
そして、並んで走る電車の扉付近をボンヤリ見ていると、サラリーマン風の男が国子の方に顔を向け、つまり外側を向いて立っており、その男の前方、つまり外側を背にして、女子高生が立っていた。
男はなかなかのイケメンと見受けられたが、女子高生の方は、当然顔は見えなかった。
すると、国子はハッとした。
女子高生が小刻みに震えているように見えたのだが、窓越しであるし、断定は出来なかった。
その後、次の駅、つまり国子が使う駅のホームに電車は滑り込んでいったが、国子は帰宅しているうちに忘れてしまっていた。
翌日、国子はまた同じ時間に、同じ電車の車両、同じ扉付近に乗って、同じく窓越しに外を見ていると、またしても昨日のサラリーマンと女子高生が同じ態勢で立っているのが見えたが、昨日の記憶は見事に消し去られていたので、特に気に止めていなかった。
だが、次の瞬間、サラリーマンの手が女子高生の背中に伸びているのがはっきりと見え、その手は次第に下がって行った。
国子の頭に電撃が走った。
サラリーマンは女子高生の背中からお尻に手を伸ばしているに違いない……つまり、痴漢だ。
そして、国子は見た。
ほんの少し、こちらを振り向いた女子高生の怯えたような目を……。
しかし、非情にも電車は駅のホームに入って行った。
国子の乗る電車よりもほんの少し早く着く向かい側の電車からはそれなりに乗客が降り立ち、急いで降りた国子が見た感じでは、どうやらサラリーマンと女子高生も降りたようだった。
何故なら、向かいの電車内に2人と見られる男女は乗っていないように見えたからだ。
国子は気持ち悪くなったが、一瞬の出来事であったため、駅員には知らせなかったものの、悦子にはすぐに電話を掛けた。
「そうなの……じゃあ、国子が見たのは、痴漢だと言うのね」
その後、自宅を訪れた国子を自室に招き入れ、飲み物を持ってきた悦子が口を開くと、国子は頷いた。
悦子はしばらく考えていたが、「じゃあ、今度、私たちで並走している電車に乗ってみようか?」と提案した。
しかし、国子は首を振りながら、「もし、何かされたら嫌だから……」と拒否した。
悦子が私も一緒だから、と言ったが、意外と臆病な国子は譲らなかった。
仕方ないと思った悦子は、とりあえず国子と一緒に国子が使う電車に乗ることにした。
次の日の帰宅時、いつも国子が乗っている車両の扉付近に2人で並んで立った。
悦子らが乗った、また、並走する電車もそれほど混んではいなかったが、やはりサラリーマンや女子高生の姿も多く見受けられた。
すると、やはり、例のサラリーマンと女子高生が扉付近にいて、サラリーマンは女子高生の背中に手を回し、その手を下ろし、その後、女子高生はこちらをチラッと見た。
やがて、電車はホームに滑り込み、2人が降りた時には男女の姿は無かった。
悦子は国子とホームのベンチに腰掛けた。
「確証は無いけど、何となく分かった気がする……白昼堂々、物凄く混んでいる訳では無い電車内で……なるほどね」
独り言のように呟いた悦子は、国子と改札を出た。
そして、ゆっくりと言った。
「明日には分かると思うわ」
国子は何が分かるのか、分からなかったが、悦子は自信に満ちた顔をしていた。
また次の日、悦子らは同じ電車内から同じ光景を見たが、何故か悦子は突然、外を向いて舌を出した。
国子は親友の仕草の意味が全く分からなかったが、その翌日にはサラリーマンと女子高生の姿は消えていた。
「あれは、痴漢じゃなくて、痴漢プレイよ。国子に見られているのを知った女子高生、いや、女子高生の服装をした女性でしょうけど、は、こちらを見て、実はニヤッと笑ったのだと思うわ……あなたが見ていることに対して、快感を覚えたんじゃないかしら……怯えたように見えたのは、国子が痴漢と思い込んだことによる錯覚よ。第一、ぎゅう詰めでも無い電車内で、あんなことしないと思うわ。だから怪しいと感じたの。それで、試しに偽女子高生がこちらを見た時、舌を出してみたのよ。つまり、あんたのやってることはお見通しよ、という意味を込めてね。そしたら、現れなくなっちゃった……まぁ、ああしたお遊びは公衆の中ですべきではないわよね」
ポカンとしている国子を尻目に、自室で一気に話し終えた悦子は、テーブルの上に置かれていた大好物のミルフィーユを美味しそうに口に運び、満面の笑みを浮かべるのであった。
(*全てフィクションであり、Prologueに投稿したものを加筆など、修正したものです)
並行して走っていた電車の片方の電車内の乗客が、もう一方の電車内で行われた殺人事件を目撃してしまうという設定からして興味をそそられたが、今回の事件はその話と似ていた。
やはり2台の電車が並行して走る区間を走行中、ある事件を目撃してしまった1人の女子高生がいたのだ。
女子高生探偵と呼ばれる悦子の親友、国子である。
国子はいつもと同じ帰宅時間に使う、いつもと同じ車両に乗り、いつもと同じ扉付近に陣取った。
そして、並んで走る電車の扉付近をボンヤリ見ていると、サラリーマン風の男が国子の方に顔を向け、つまり外側を向いて立っており、その男の前方、つまり外側を背にして、女子高生が立っていた。
男はなかなかのイケメンと見受けられたが、女子高生の方は、当然顔は見えなかった。
すると、国子はハッとした。
女子高生が小刻みに震えているように見えたのだが、窓越しであるし、断定は出来なかった。
その後、次の駅、つまり国子が使う駅のホームに電車は滑り込んでいったが、国子は帰宅しているうちに忘れてしまっていた。
翌日、国子はまた同じ時間に、同じ電車の車両、同じ扉付近に乗って、同じく窓越しに外を見ていると、またしても昨日のサラリーマンと女子高生が同じ態勢で立っているのが見えたが、昨日の記憶は見事に消し去られていたので、特に気に止めていなかった。
だが、次の瞬間、サラリーマンの手が女子高生の背中に伸びているのがはっきりと見え、その手は次第に下がって行った。
国子の頭に電撃が走った。
サラリーマンは女子高生の背中からお尻に手を伸ばしているに違いない……つまり、痴漢だ。
そして、国子は見た。
ほんの少し、こちらを振り向いた女子高生の怯えたような目を……。
しかし、非情にも電車は駅のホームに入って行った。
国子の乗る電車よりもほんの少し早く着く向かい側の電車からはそれなりに乗客が降り立ち、急いで降りた国子が見た感じでは、どうやらサラリーマンと女子高生も降りたようだった。
何故なら、向かいの電車内に2人と見られる男女は乗っていないように見えたからだ。
国子は気持ち悪くなったが、一瞬の出来事であったため、駅員には知らせなかったものの、悦子にはすぐに電話を掛けた。
「そうなの……じゃあ、国子が見たのは、痴漢だと言うのね」
その後、自宅を訪れた国子を自室に招き入れ、飲み物を持ってきた悦子が口を開くと、国子は頷いた。
悦子はしばらく考えていたが、「じゃあ、今度、私たちで並走している電車に乗ってみようか?」と提案した。
しかし、国子は首を振りながら、「もし、何かされたら嫌だから……」と拒否した。
悦子が私も一緒だから、と言ったが、意外と臆病な国子は譲らなかった。
仕方ないと思った悦子は、とりあえず国子と一緒に国子が使う電車に乗ることにした。
次の日の帰宅時、いつも国子が乗っている車両の扉付近に2人で並んで立った。
悦子らが乗った、また、並走する電車もそれほど混んではいなかったが、やはりサラリーマンや女子高生の姿も多く見受けられた。
すると、やはり、例のサラリーマンと女子高生が扉付近にいて、サラリーマンは女子高生の背中に手を回し、その手を下ろし、その後、女子高生はこちらをチラッと見た。
やがて、電車はホームに滑り込み、2人が降りた時には男女の姿は無かった。
悦子は国子とホームのベンチに腰掛けた。
「確証は無いけど、何となく分かった気がする……白昼堂々、物凄く混んでいる訳では無い電車内で……なるほどね」
独り言のように呟いた悦子は、国子と改札を出た。
そして、ゆっくりと言った。
「明日には分かると思うわ」
国子は何が分かるのか、分からなかったが、悦子は自信に満ちた顔をしていた。
また次の日、悦子らは同じ電車内から同じ光景を見たが、何故か悦子は突然、外を向いて舌を出した。
国子は親友の仕草の意味が全く分からなかったが、その翌日にはサラリーマンと女子高生の姿は消えていた。
「あれは、痴漢じゃなくて、痴漢プレイよ。国子に見られているのを知った女子高生、いや、女子高生の服装をした女性でしょうけど、は、こちらを見て、実はニヤッと笑ったのだと思うわ……あなたが見ていることに対して、快感を覚えたんじゃないかしら……怯えたように見えたのは、国子が痴漢と思い込んだことによる錯覚よ。第一、ぎゅう詰めでも無い電車内で、あんなことしないと思うわ。だから怪しいと感じたの。それで、試しに偽女子高生がこちらを見た時、舌を出してみたのよ。つまり、あんたのやってることはお見通しよ、という意味を込めてね。そしたら、現れなくなっちゃった……まぁ、ああしたお遊びは公衆の中ですべきではないわよね」
ポカンとしている国子を尻目に、自室で一気に話し終えた悦子は、テーブルの上に置かれていた大好物のミルフィーユを美味しそうに口に運び、満面の笑みを浮かべるのであった。
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