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第1章
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いつの間にか意識を失ったらしい。ふと気づくとシーツと鷹野の腕に囲われていて、しばらくの間情報が整理できずにぼうっと目の前で眠る美丈夫を眺めた。そうしながら昨日からの出来事を思い出し、鷹野の向こうに見える窓に目をやる。カーテンを引く前にセックスになだれこんだから、レースの向こうがほんのり明るくなっていた。
気持ちよかった、と胸のなかで呟く。鷹野と繋がりながらさんざん愛撫された乳首は疼きと痛みをはらんでいて、長い時間鷹野の雄を受け入れた後孔はいまだ熱を持ったようにじんじんしていた。愛された名残を感じるのは好きだ。もう一度目を閉じて鷹野の胸元に顔を寄せると、寝ぼけているのか鷹野の腕が柴原の体を抱き寄せるように動いた。裸の胸同士がくっつく。
「……んっ」
疼痛がある乳首がこすれると甘い痺れを感じたが、それ以上に肌同士が触れあう感覚が気持ちよくて、柴原は目を閉じた。そっと足を絡める。体の全部で触れていたくて、柴原からも手を伸ばして鷹野の背を抱いた。しっかりと筋肉がついて無駄なぜい肉のない体は、三十代半ばとはとても思えない。肌も張りがあってきれいさだ。顔も体もセックスも雰囲気も。全てが好ましく、この人とまた会って、恋人になってもいいと思えた。相手がどう思っているかはわからないけれど、あれだけ情熱的に求められたのだから、たぶん彼も楽しんだのではないかと思う。
気に入ってもらえたかな。俺と、付き合いたいと思ってくれていたらいいな。
そんなことを考えながら肌の温度を味わっているうちに、いつの間にかまたうとうと微睡に落ちた。
背中や肩を撫でられる感覚。額や頬にも柔らかい感触がある。ひたすら優しくて気持ちよいそれに、柴原は自然と笑顔になって、目を閉じたままベッドの中で身を伸ばした。すると、ふふっと柔らかな笑い声が聞こえ、一気に覚醒する。目を開くと、すぐそばに夕べ淫らに交わりあった男がいて、楽しそうに柴原を見ていた。
「おはよう、柴原くん」
男は優しく囁き、そっと触れるだけの口づけをよこす。
「……おはよ」
男と目を合わせると、夕べの記憶がまざまざと蘇った。泣かされ、焦らされ、身も世もなく乱された。でもそれがとても良かった。
「体、つらいところはない?」
穏やかに問われて、「うん」と答える。
「君があまりにすてきだったから、つい我を忘れてしまった。こんなに夢中になったのは久しぶりだよ」
鷹野は笑いながらそう言って、ゆっくりと起き上がると枕を背にベッドヘッドに寄りかかった。身を起こそうとする柴原の体を支えて助けると、背中から抱きしめる。
「朝は急ぐ? 急がないなら、もう少しこのままで」
そう乞われて、小さく頷いた。窓から入る日光の角度は、まだ朝が早いことを示している。時間はある。何より、こうしてくっついていられるのがうれしかった。鷹野の胸に寄りかかるように身を預ける。
「朝食はここに運んでもらおう。何が食べたい?」
「なんでも……鷹野さんと同じでいい」
「朝食は食べる習慣がある? そこそこ食べられそうなら、アメリカンブレックファーストを頼もうか」
「うん」
「いい子だ」
食べられると言っただけなのにそう褒められて、こめかみにキスをされる。その甘さがくすぐったくて気持ちよかった。鷹野は手を伸ばすと、ベッドサイドの電話に手を伸ばしフロントに電話をかけ、朝食を注文した。その電話のそばに、中身を中途半端に取り出した紙袋が置かれたままになっていて、それを目にしたとたん頬が熱くなった。夕べ、客室係のスタッフがコーヒーとともに持ってきてさりげなく置いて行った紙袋の中身はローションとコンドームだった。行為には必要なものだけれど、こんなものまで用意されることに驚き、今更だが同時に羞恥におそわれた。
これから客室係が朝食を持ってくるなら、着替えなければ。その前にシャワーも浴びたい。そう思ってベッドを抜け出そうとすると、電話を終えた鷹野に背後から抱きしめられた。
「どこに行くの」
「どこって、シャワー浴びて服を着ないと」
「もう少しこうしていたい」
「でも、ホテルの人が来る」
「……じゃあ、一緒にシャワーを浴びよう」
残念そうにそう言われて、つい笑ってしまった。かなり年上のこの男が、とてもかわいらしく感じられる。
「シャワー浴びて、着替えて。一緒にご飯を食べよう」
振り返ってキスをすると、彼はにこりと笑い、もう一度柴原を抱きしめた。
気持ちよかった、と胸のなかで呟く。鷹野と繋がりながらさんざん愛撫された乳首は疼きと痛みをはらんでいて、長い時間鷹野の雄を受け入れた後孔はいまだ熱を持ったようにじんじんしていた。愛された名残を感じるのは好きだ。もう一度目を閉じて鷹野の胸元に顔を寄せると、寝ぼけているのか鷹野の腕が柴原の体を抱き寄せるように動いた。裸の胸同士がくっつく。
「……んっ」
疼痛がある乳首がこすれると甘い痺れを感じたが、それ以上に肌同士が触れあう感覚が気持ちよくて、柴原は目を閉じた。そっと足を絡める。体の全部で触れていたくて、柴原からも手を伸ばして鷹野の背を抱いた。しっかりと筋肉がついて無駄なぜい肉のない体は、三十代半ばとはとても思えない。肌も張りがあってきれいさだ。顔も体もセックスも雰囲気も。全てが好ましく、この人とまた会って、恋人になってもいいと思えた。相手がどう思っているかはわからないけれど、あれだけ情熱的に求められたのだから、たぶん彼も楽しんだのではないかと思う。
気に入ってもらえたかな。俺と、付き合いたいと思ってくれていたらいいな。
そんなことを考えながら肌の温度を味わっているうちに、いつの間にかまたうとうと微睡に落ちた。
背中や肩を撫でられる感覚。額や頬にも柔らかい感触がある。ひたすら優しくて気持ちよいそれに、柴原は自然と笑顔になって、目を閉じたままベッドの中で身を伸ばした。すると、ふふっと柔らかな笑い声が聞こえ、一気に覚醒する。目を開くと、すぐそばに夕べ淫らに交わりあった男がいて、楽しそうに柴原を見ていた。
「おはよう、柴原くん」
男は優しく囁き、そっと触れるだけの口づけをよこす。
「……おはよ」
男と目を合わせると、夕べの記憶がまざまざと蘇った。泣かされ、焦らされ、身も世もなく乱された。でもそれがとても良かった。
「体、つらいところはない?」
穏やかに問われて、「うん」と答える。
「君があまりにすてきだったから、つい我を忘れてしまった。こんなに夢中になったのは久しぶりだよ」
鷹野は笑いながらそう言って、ゆっくりと起き上がると枕を背にベッドヘッドに寄りかかった。身を起こそうとする柴原の体を支えて助けると、背中から抱きしめる。
「朝は急ぐ? 急がないなら、もう少しこのままで」
そう乞われて、小さく頷いた。窓から入る日光の角度は、まだ朝が早いことを示している。時間はある。何より、こうしてくっついていられるのがうれしかった。鷹野の胸に寄りかかるように身を預ける。
「朝食はここに運んでもらおう。何が食べたい?」
「なんでも……鷹野さんと同じでいい」
「朝食は食べる習慣がある? そこそこ食べられそうなら、アメリカンブレックファーストを頼もうか」
「うん」
「いい子だ」
食べられると言っただけなのにそう褒められて、こめかみにキスをされる。その甘さがくすぐったくて気持ちよかった。鷹野は手を伸ばすと、ベッドサイドの電話に手を伸ばしフロントに電話をかけ、朝食を注文した。その電話のそばに、中身を中途半端に取り出した紙袋が置かれたままになっていて、それを目にしたとたん頬が熱くなった。夕べ、客室係のスタッフがコーヒーとともに持ってきてさりげなく置いて行った紙袋の中身はローションとコンドームだった。行為には必要なものだけれど、こんなものまで用意されることに驚き、今更だが同時に羞恥におそわれた。
これから客室係が朝食を持ってくるなら、着替えなければ。その前にシャワーも浴びたい。そう思ってベッドを抜け出そうとすると、電話を終えた鷹野に背後から抱きしめられた。
「どこに行くの」
「どこって、シャワー浴びて服を着ないと」
「もう少しこうしていたい」
「でも、ホテルの人が来る」
「……じゃあ、一緒にシャワーを浴びよう」
残念そうにそう言われて、つい笑ってしまった。かなり年上のこの男が、とてもかわいらしく感じられる。
「シャワー浴びて、着替えて。一緒にご飯を食べよう」
振り返ってキスをすると、彼はにこりと笑い、もう一度柴原を抱きしめた。
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