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③十年越しの涙。そしてまた俺たちは歩き出す。
十年越しの涙。そしてまた俺たちは歩き出す。1
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「おい、琉人、起きろ!! 遅刻するぞ!?」
「んー……」
「だから起きろっつーの!!」
「眠い……」
「それは俺もだ!! 毎日お前を起こしに来る俺の身にもなれ!! 早く起きろって!!」
「蒼汰、起こして……」
自分で起きようとしないことにイラッとしながらも、ベッドから無理矢理引っ張り起こし、二階の部屋から一階へと促す。フラフラと階段を降りて行くこの男は俺の幼馴染、神崎琉人。
今の寝惚けた顔からは想像つかないが、普通にしていれば精悍な顔の超イケメン。俺の茶色い色素の薄い髪色とは違い、真っ黒な綺麗な髪。いつも気だるそうで無表情のため、怒っているように見えるからか、仲の良い友達以外の同級生からは怖がられている。本人はただ単にいつも眠そうにボーッとしているだけなのだが。
しかし、やはり顔が良いためか、女子からはやたらとモテる……。
俺もまあイケメンてほどではないにしろ、それなりには整った顔だとは思う。思うのだがこの幼馴染の男がイケメン過ぎて俺自身は霞む……くそぅ。
俺、春野蒼汰と琉人の家は戸建ての隣同士。幼稚園の頃にお互い引っ越してきてからは、幼、小、中、そして現在高校とずっと一緒だ。母親同士も仲が良いため、兄弟のように過ごした。
思春期になるにつれ、次第にベッタリ常に一緒ということはなくなってきたが、しかし、それでも何かにつけて、ボーッとしているこいつの面倒を見てきたせいか、いつもニコイチに思われているのが不本意でもあった。
中学生になるとやたらとモテ始め、俺の知る限りでも同い年だけでなく、年上年下関係なく声を掛けられたり告白されたりしていた。
そして琉人と一緒にいることが多いせいなのか、俺が好きになる子はいつも琉人を好きになっていた。
それは琉人のせいではない、ということは頭では分かっているのだが、しかし、やはり何度も繰り返されると嫌にもなってくるもので……。
だからこそ高校はようやく離れられる! と思っていたもんだ。それなのにこいつは頭が良いくせに、高校受験のときに同じ学校だということが判明した。
なぜお前がこんなレベルを下げた学校を受験するんだ? と聞いたら、家から近いからだって返事が返って来た。一人暮らしが面倒なんだと。俺なら一人暮らし出来るなら喜んで出て行くけどな、と思ったが、琉人の母親から「蒼汰くんが一緒なら安心だわぁ」とか言われたら、結局面倒を見るしかないじゃないか……はぁ、俺はこいつの母親かよ。
まあでも面倒だと思いつつ、琉人を突き放さないのは、やはりこいつは良い奴だと知っているから。
俺の好きな子が琉人を好きなったとしても、琉人は今まで誰とも付き合ったことがない。多分。俺の知る限りでは。モテるからと手当り次第に食い散らかす奴でもないし、自発的でないにしろ男友達の誘いを断ったりもしない。予定がなければ必ず遊びに参加するし、話せば普通に盛り上がる奴なので、仲の良い男友達からは好かれているはずだ。
俺の好きだった女子から告白されても、「好きな子がいるから」とずっと断っている。
そんな子がいるのか! と、興味津々で聞いたら「そうやって断るのが一番平和だろ。好きでもないのに付き合うほうが良くないだろうし。今は蒼汰と遊んでるほうが楽しいし」とかなんとか、嬉しいこと言ってくれちゃってよ。俺のために断った、とか言わない。俺が気にしないようにそう言ってくれる。
なんだかむず痒くなったが、こんなモテモテの男が俺と遊ぶほうが良いとか言われたら、なんだか優越感を覚えちゃったわけですよ。
だからなんだかんだと琉人の世話は俺にとっても幼馴染と過ごす大事な時間となっていた。
無理矢理起こした琉人はボーッとしたまま洗面所で顔を洗い歯を磨く。そして髪を整え出てきた姿は超がつくほどのイケメンとして登場。おい、さっきまでのヨレヨレとえらい違いだな! 顔面偏差値が高いってズルい!
遅刻間際だというのに、のんびりと食パンを齧っている琉人にイラッとし、テーブルの向かいに座った俺は琉人をじとっと睨む。
「おい、早くしろよ。いい加減にしないと先に行くぞ?」
「んー、蒼汰、今日の弁当は?」
「は? あー、今日はみっちゃん当直の日か」
「ん」
琉人の母親は看護師で当直の日は一日家にいない。父親は俺たちが小学生のときに事故で亡くなった。だから琉人は女手一つで育てられ、余裕のない琉人の母親を見兼ねて、琉人は幼い頃からよくうちで面倒を見ていた。一緒に食事をし、風呂に入り、一緒の布団で寝る。さすがに今のこのデカさになってまでそんなことを一緒にしたりはしないが、しかし、みっちゃんこと琉人の母親の神崎蜜花がいないときは、いまだにうちで食事をしたり、弁当を作ってやったりとしている。
「ごめん、忘れてたわ。俺の弁当分けてやるから、お前のパンも半分よこせ」
「ん。今日は蒼汰の弁当?」
「ん? あ、うん。俺が作ったやつ」
俺は意外だと思われがちだが、料理はそれなりにするのだ。うちの母親も俺が中学の頃くらいから本格的に仕事へ復帰し出したため、たまに家事を手伝うようになってきた。そのため一通りの家事全般は出来る。高校生のくせに所帯染みていると思われたくなくて、同級生には言ったことはないのだが。
「んー……」
「だから起きろっつーの!!」
「眠い……」
「それは俺もだ!! 毎日お前を起こしに来る俺の身にもなれ!! 早く起きろって!!」
「蒼汰、起こして……」
自分で起きようとしないことにイラッとしながらも、ベッドから無理矢理引っ張り起こし、二階の部屋から一階へと促す。フラフラと階段を降りて行くこの男は俺の幼馴染、神崎琉人。
今の寝惚けた顔からは想像つかないが、普通にしていれば精悍な顔の超イケメン。俺の茶色い色素の薄い髪色とは違い、真っ黒な綺麗な髪。いつも気だるそうで無表情のため、怒っているように見えるからか、仲の良い友達以外の同級生からは怖がられている。本人はただ単にいつも眠そうにボーッとしているだけなのだが。
しかし、やはり顔が良いためか、女子からはやたらとモテる……。
俺もまあイケメンてほどではないにしろ、それなりには整った顔だとは思う。思うのだがこの幼馴染の男がイケメン過ぎて俺自身は霞む……くそぅ。
俺、春野蒼汰と琉人の家は戸建ての隣同士。幼稚園の頃にお互い引っ越してきてからは、幼、小、中、そして現在高校とずっと一緒だ。母親同士も仲が良いため、兄弟のように過ごした。
思春期になるにつれ、次第にベッタリ常に一緒ということはなくなってきたが、しかし、それでも何かにつけて、ボーッとしているこいつの面倒を見てきたせいか、いつもニコイチに思われているのが不本意でもあった。
中学生になるとやたらとモテ始め、俺の知る限りでも同い年だけでなく、年上年下関係なく声を掛けられたり告白されたりしていた。
そして琉人と一緒にいることが多いせいなのか、俺が好きになる子はいつも琉人を好きになっていた。
それは琉人のせいではない、ということは頭では分かっているのだが、しかし、やはり何度も繰り返されると嫌にもなってくるもので……。
だからこそ高校はようやく離れられる! と思っていたもんだ。それなのにこいつは頭が良いくせに、高校受験のときに同じ学校だということが判明した。
なぜお前がこんなレベルを下げた学校を受験するんだ? と聞いたら、家から近いからだって返事が返って来た。一人暮らしが面倒なんだと。俺なら一人暮らし出来るなら喜んで出て行くけどな、と思ったが、琉人の母親から「蒼汰くんが一緒なら安心だわぁ」とか言われたら、結局面倒を見るしかないじゃないか……はぁ、俺はこいつの母親かよ。
まあでも面倒だと思いつつ、琉人を突き放さないのは、やはりこいつは良い奴だと知っているから。
俺の好きな子が琉人を好きなったとしても、琉人は今まで誰とも付き合ったことがない。多分。俺の知る限りでは。モテるからと手当り次第に食い散らかす奴でもないし、自発的でないにしろ男友達の誘いを断ったりもしない。予定がなければ必ず遊びに参加するし、話せば普通に盛り上がる奴なので、仲の良い男友達からは好かれているはずだ。
俺の好きだった女子から告白されても、「好きな子がいるから」とずっと断っている。
そんな子がいるのか! と、興味津々で聞いたら「そうやって断るのが一番平和だろ。好きでもないのに付き合うほうが良くないだろうし。今は蒼汰と遊んでるほうが楽しいし」とかなんとか、嬉しいこと言ってくれちゃってよ。俺のために断った、とか言わない。俺が気にしないようにそう言ってくれる。
なんだかむず痒くなったが、こんなモテモテの男が俺と遊ぶほうが良いとか言われたら、なんだか優越感を覚えちゃったわけですよ。
だからなんだかんだと琉人の世話は俺にとっても幼馴染と過ごす大事な時間となっていた。
無理矢理起こした琉人はボーッとしたまま洗面所で顔を洗い歯を磨く。そして髪を整え出てきた姿は超がつくほどのイケメンとして登場。おい、さっきまでのヨレヨレとえらい違いだな! 顔面偏差値が高いってズルい!
遅刻間際だというのに、のんびりと食パンを齧っている琉人にイラッとし、テーブルの向かいに座った俺は琉人をじとっと睨む。
「おい、早くしろよ。いい加減にしないと先に行くぞ?」
「んー、蒼汰、今日の弁当は?」
「は? あー、今日はみっちゃん当直の日か」
「ん」
琉人の母親は看護師で当直の日は一日家にいない。父親は俺たちが小学生のときに事故で亡くなった。だから琉人は女手一つで育てられ、余裕のない琉人の母親を見兼ねて、琉人は幼い頃からよくうちで面倒を見ていた。一緒に食事をし、風呂に入り、一緒の布団で寝る。さすがに今のこのデカさになってまでそんなことを一緒にしたりはしないが、しかし、みっちゃんこと琉人の母親の神崎蜜花がいないときは、いまだにうちで食事をしたり、弁当を作ってやったりとしている。
「ごめん、忘れてたわ。俺の弁当分けてやるから、お前のパンも半分よこせ」
「ん。今日は蒼汰の弁当?」
「ん? あ、うん。俺が作ったやつ」
俺は意外だと思われがちだが、料理はそれなりにするのだ。うちの母親も俺が中学の頃くらいから本格的に仕事へ復帰し出したため、たまに家事を手伝うようになってきた。そのため一通りの家事全般は出来る。高校生のくせに所帯染みていると思われたくなくて、同級生には言ったことはないのだが。
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