10 / 14
③十年越しの涙。そしてまた俺たちは歩き出す。
十年越しの涙。そして俺たちはまた歩き出す。7
しおりを挟む
それからというもの、琉人はあの子とよく一緒にいる姿を目撃する。朝もその子と登校しているらしく、俺が起こしに行くことはなくなった。二日ほどはそれでも気にして家まで迎えに行ってはみたが、琉人は俺になにを言うこともなく、さっさと登校していた。そのことに腹が立ち、三日目以降はもう迎えにも行かなかった。
結局俺のことなんてもうどうでもよくなった訳か。俺が受け入れられないなら幼馴染としてももう付き合うつもりはない、ということか。なんだよそれ。自分勝手に告白してきて、俺を散々悩ませた挙句、なにも言わずにあの子と付き合うことにした訳か。
ハッ、やってらんねー。あんな奴だと思わなかった。ムカつく。俺はお前のことが大事だからこそあんなに悩んだのに……。もういい。
琉人は休憩時間、昼食、行き帰りと常にその子と一緒にいるようになったため、さすがにクラスメイトにも噂が広がった。そしてどうやら女子の間では、琉人とその子はお試しだが付き合っている、と広まり、本格的に付き合うのも時間の問題だろう、と言われていた。
「なあ、お前ら喧嘩でもしたの?」
仲の良い友人が俺に琉人のことを聞いて来た。
「今まであんなベッタリだったのに、彼女が出来たくらいで会話すらなくなるって、どんだけデカい喧嘩したんだよ、お前ら」
「別に今までもベッタリじゃねーし」
そもそも、順番が逆なんだよ! 琉人に彼女が出来たから喧嘩したんじゃなくて、喧嘩した後にあいつが勝手に付き合い出したんだよ!
そう口に出そうになったが、じゃあ喧嘩の理由はなんなんだ、と聞かれても困るために、グッと言葉を飲み込んだ。
「いやいやいや、あれがベッタリじゃないならなにをベッタリと言うんだ、って感じだったぞ?」
そう言いながら苦笑する友人。
「まあ、なにが原因か知らんが、早く仲直りしろよ? お前らが雰囲気悪いとなんか怖いんだよ」
バシバシと背中を叩かれながら言われ、苦笑する。そんな雰囲気悪く見えるのか、俺ら。まあ今までずっと一緒だったのに、今は全くだもんな……。
友人は笑いながら去って行った。チラリと琉人の姿を探すと、やはり廊下であの女子と話している。毎日そんなベッタリでよく飽きないものだ……って、俺と琉人も常に一緒だったのか……。そう思うと彼氏彼女なら常に一緒にいるのは当たり前……だよな……。なにやら胸がギシリと軋んだ。
あれは喧嘩だったのか? 一方的に告白されてキレられて、挙句にその後は目すら合わせず、話そうともしない。さらには女と付き合い出した!? ふざけんな!! なんか腹立って来た!! なんで俺だけこんな振り回されなきゃならんのだ!!
俺は……琉人に彼女が出来ようが、ずっと親友でいたかったのに……。告白されて悩んだのだって、ずっと一緒にいたかったからなのに……。
「お前いい加減にしろよ!!」
琉人と口を利かなくなって一ヶ月程が過ぎた頃、学祭の準備も大詰めを迎え忙しくなり出し、俺のイライラはピークに達した。
夜、琉人の家に押しかけ、二階の琉人の部屋へと突撃した。万が一彼女がいたらどうしよう、と一瞬躊躇はしたが、しかし、それよりも怒りに任せ、扉をバーンッと勢い良く開けた。琉人は目を見開き驚いた顔をしていた。ざまあみろ。
「お前、一体どういうつもりだよ!! 俺にあんなこと言っておいて、あっさり女子に乗り換えやがって!! しかも、その後からずっと無視しやがって!!」
ズカズカとベッドに腰かけていた琉人の元まで歩み寄り、胸倉を掴み怒鳴った。琉人は驚いた顔をしていたが、すぐさま顔を逸らし目を伏せたかと思うと、静かな声で言った。
「どういうつもりもなにもない……俺は告白して振られただけだ……」
その言葉にカチンときた。胸倉を掴む手にさらに力が入る。
「なにを勝手に決め付けてんだ!! 俺は確かにすぐに返事は出来なかったけど、でもなにも答えてもないのに、なんでお前が決め付けてんだよ!! 俺はお前とずっと……一生……幼馴染で、親友でいられると思ってたのに……口すら利かなくなりやがって」
若干涙目になってしまった。恥ずっ。グスッと鼻が鳴る。琉人は再び驚いた顔で俺を見たかと思うと、琉人までもが泣きそうな顔になった。
「でも俺は蒼汰のこと、恋愛的に好きなんだよ」
「今のままじゃ駄目なのかよ!? いつか受け入れられるかもしれないのに離れることしか考えないのかよ!? お前は俺と離れても平気なのかよ!?」
涙目のまま訴えた。もう恥ずかしいとかどうでも良いよ。琉人と離れ離れになるのは寂しいんだよ。辛いんだよ。苦しいんだよ。
「でも俺は……もうお前の傍でただの友達としてはいられない……。お前に誰か好きなひとでも出来ようものなら耐えられない……」
涙で瞳を潤ませ琉人は苦しそうに言葉にした。
「そうかよ……お前が俺と一緒にいたいって気持ちはそんなもんなんだな。もういい。分かった。もう知らねーよ。お前が俺と友達でいられないってんなら、俺にとってもお前はもう友達じゃない。お前の告白ももう忘れるよ。じゃあな」
胸倉を掴んでいた手をグイッと押し離した。俺はそのまま踵を返し、琉人の部屋を飛び出した。
「蒼汰!!」
琉人の俺を呼ぶ声、それに俺を追って来る足音が聞こえたが、俺は琉人に追いつかれることなく家の扉を閉じた。
玄関の外では琉人の叫ぶ声が聞こえたが、無視して自身の部屋へと駆け上がり、布団にくるまった。
くそっ、くそっ、琉人なんかもう知るか。もうあんな奴忘れてやる。俺のこと、あんなに簡単に切り捨てられるくらいにしか思ってなかったってことだろ。
悔しさで泣いた。俺にとって琉人は……いや、もう考えるのはやめだ……もういい。
その日は母親に心配されながらも、ベッドから出て来ることは出来ず、ひたすら声を殺して泣いた……。
結局俺のことなんてもうどうでもよくなった訳か。俺が受け入れられないなら幼馴染としてももう付き合うつもりはない、ということか。なんだよそれ。自分勝手に告白してきて、俺を散々悩ませた挙句、なにも言わずにあの子と付き合うことにした訳か。
ハッ、やってらんねー。あんな奴だと思わなかった。ムカつく。俺はお前のことが大事だからこそあんなに悩んだのに……。もういい。
琉人は休憩時間、昼食、行き帰りと常にその子と一緒にいるようになったため、さすがにクラスメイトにも噂が広がった。そしてどうやら女子の間では、琉人とその子はお試しだが付き合っている、と広まり、本格的に付き合うのも時間の問題だろう、と言われていた。
「なあ、お前ら喧嘩でもしたの?」
仲の良い友人が俺に琉人のことを聞いて来た。
「今まであんなベッタリだったのに、彼女が出来たくらいで会話すらなくなるって、どんだけデカい喧嘩したんだよ、お前ら」
「別に今までもベッタリじゃねーし」
そもそも、順番が逆なんだよ! 琉人に彼女が出来たから喧嘩したんじゃなくて、喧嘩した後にあいつが勝手に付き合い出したんだよ!
そう口に出そうになったが、じゃあ喧嘩の理由はなんなんだ、と聞かれても困るために、グッと言葉を飲み込んだ。
「いやいやいや、あれがベッタリじゃないならなにをベッタリと言うんだ、って感じだったぞ?」
そう言いながら苦笑する友人。
「まあ、なにが原因か知らんが、早く仲直りしろよ? お前らが雰囲気悪いとなんか怖いんだよ」
バシバシと背中を叩かれながら言われ、苦笑する。そんな雰囲気悪く見えるのか、俺ら。まあ今までずっと一緒だったのに、今は全くだもんな……。
友人は笑いながら去って行った。チラリと琉人の姿を探すと、やはり廊下であの女子と話している。毎日そんなベッタリでよく飽きないものだ……って、俺と琉人も常に一緒だったのか……。そう思うと彼氏彼女なら常に一緒にいるのは当たり前……だよな……。なにやら胸がギシリと軋んだ。
あれは喧嘩だったのか? 一方的に告白されてキレられて、挙句にその後は目すら合わせず、話そうともしない。さらには女と付き合い出した!? ふざけんな!! なんか腹立って来た!! なんで俺だけこんな振り回されなきゃならんのだ!!
俺は……琉人に彼女が出来ようが、ずっと親友でいたかったのに……。告白されて悩んだのだって、ずっと一緒にいたかったからなのに……。
「お前いい加減にしろよ!!」
琉人と口を利かなくなって一ヶ月程が過ぎた頃、学祭の準備も大詰めを迎え忙しくなり出し、俺のイライラはピークに達した。
夜、琉人の家に押しかけ、二階の琉人の部屋へと突撃した。万が一彼女がいたらどうしよう、と一瞬躊躇はしたが、しかし、それよりも怒りに任せ、扉をバーンッと勢い良く開けた。琉人は目を見開き驚いた顔をしていた。ざまあみろ。
「お前、一体どういうつもりだよ!! 俺にあんなこと言っておいて、あっさり女子に乗り換えやがって!! しかも、その後からずっと無視しやがって!!」
ズカズカとベッドに腰かけていた琉人の元まで歩み寄り、胸倉を掴み怒鳴った。琉人は驚いた顔をしていたが、すぐさま顔を逸らし目を伏せたかと思うと、静かな声で言った。
「どういうつもりもなにもない……俺は告白して振られただけだ……」
その言葉にカチンときた。胸倉を掴む手にさらに力が入る。
「なにを勝手に決め付けてんだ!! 俺は確かにすぐに返事は出来なかったけど、でもなにも答えてもないのに、なんでお前が決め付けてんだよ!! 俺はお前とずっと……一生……幼馴染で、親友でいられると思ってたのに……口すら利かなくなりやがって」
若干涙目になってしまった。恥ずっ。グスッと鼻が鳴る。琉人は再び驚いた顔で俺を見たかと思うと、琉人までもが泣きそうな顔になった。
「でも俺は蒼汰のこと、恋愛的に好きなんだよ」
「今のままじゃ駄目なのかよ!? いつか受け入れられるかもしれないのに離れることしか考えないのかよ!? お前は俺と離れても平気なのかよ!?」
涙目のまま訴えた。もう恥ずかしいとかどうでも良いよ。琉人と離れ離れになるのは寂しいんだよ。辛いんだよ。苦しいんだよ。
「でも俺は……もうお前の傍でただの友達としてはいられない……。お前に誰か好きなひとでも出来ようものなら耐えられない……」
涙で瞳を潤ませ琉人は苦しそうに言葉にした。
「そうかよ……お前が俺と一緒にいたいって気持ちはそんなもんなんだな。もういい。分かった。もう知らねーよ。お前が俺と友達でいられないってんなら、俺にとってもお前はもう友達じゃない。お前の告白ももう忘れるよ。じゃあな」
胸倉を掴んでいた手をグイッと押し離した。俺はそのまま踵を返し、琉人の部屋を飛び出した。
「蒼汰!!」
琉人の俺を呼ぶ声、それに俺を追って来る足音が聞こえたが、俺は琉人に追いつかれることなく家の扉を閉じた。
玄関の外では琉人の叫ぶ声が聞こえたが、無視して自身の部屋へと駆け上がり、布団にくるまった。
くそっ、くそっ、琉人なんかもう知るか。もうあんな奴忘れてやる。俺のこと、あんなに簡単に切り捨てられるくらいにしか思ってなかったってことだろ。
悔しさで泣いた。俺にとって琉人は……いや、もう考えるのはやめだ……もういい。
その日は母親に心配されながらも、ベッドから出て来ることは出来ず、ひたすら声を殺して泣いた……。
0
あなたにおすすめの小説
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる