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第19話 調査
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もう何度目になるのか……三度目か? 瘴気の森を訪れる。いや、もう森はないのだが。
「これが瘴気の森か、いやぁ、壮観だね、なにもない!」
そう言いながらアハハハと楽しそうに笑うのはルース。今回俺とライルが瘴気の森へ調べに行くとなったとき、自分も一緒に行くと言い出したのだ。
本当なら浄化にも付いて行きたかったが、手が離せない仕事があり断念したのだそうだ。だから今回は絶対に行く! と無理矢理付いて来た。
森があったところはなにもなくなり、見事な更地。ただっぴろい平原が広がっている。ルースの言う通り、あんな鬱蒼とした森があったことを知っている人間からすると、この景色は壮観でしかない。綺麗さっぱりなにもないのだから。
「周りに瘴気の気配もないし、本当に浄化されたんだねぇ」
そう言いながらルースは周りを見回し、地面を探る。土を触り手に取るが、瘴気の痕跡は感じないと言う。
「うーん、でもなんだろうな……」
「なんだ?」
ルースは立ち上がったかと思うと腕組みし考え込んだ。ライルは俺の横にピタリと貼り付いているが、ルースのその言葉に目を向けた。
「なにかおかしい気がするんだよね」
「おかしい?」
「うーん」
ルースはうんうんと唸っている。ライルはルースの言葉に警戒をしたのか、俺の肩を抱いた。俺自身もまたなにやら違和感を感じる。
「瘴気の気配は確かに感じない……でも、なんというか……清浄さがない……ショーゴはどう?」
ルースは俺に振り返り聞いた。
そうなんだよ。俺もそれが気になった。確かに瘴気の気配は感じないんだ。でも、それにしては浄化された、という清浄さのようなものを全く感じない。
辺りを見回しても更地であって、なにもないというのになぜだ。
「俺もルースと同じだ……浄化された割にはこの辺り一帯の違和感がまだある気がする。清浄さは全く感じない……」
「だよねぇ……なぜなんだ?」
ルースは歩を進めた。俺もそれに続き、ライルは警戒しているのか俺の傍を離れない。
「ショーゴ、なにか異変があればすぐに言え」
ライルは周りを警戒しながら俺に言った。
「うん」
なにか起こるとも思えないが、しかしこの違和感が若干不安にさせる。
三人で辺りを確認しつつ歩を進めるとおそらくあの宝石があった場所であろう、瘴気の森の中心辺りにやって来た。そのときルースが声を上げる。
「おい、これなんだ!?」
ルースは声を上げたと同時に立ち止まり、目線は足元を見ていた。ルースの横に並び目線の先を覗き込む。
「「!?」」
俺もライルもそれを見た瞬間動きが止まった。
「な、なんだこれ……」
宝石のあったであろう場所の地面、そこは少しだけ土が盛り上がり、掘られたように土が周りに散らばっていた。そこにはなにかが埋まっていて、浄化のときをきっかけとしたのか地中から姿を現したようだった。
「布……みたいだな……」
ルースが呟いたそれは破れて古ぼけた布地のようだった。
「結界を張りつつ、掘り起こしてみるか……」
「待て、大丈夫なのか!?」
俺がしゃがみこみ、その布を掘り起こそうとしたとき、ライルは俺の肩を掴み後ろに引いた。酷く不安そうな顔だ。
「結界を張って様子を見つつするから大丈夫だよ」
不安そうな顔のままだがライルは俺の横に腰を下ろし、俺の手先を見守った。ルースも同様に見守る。
布にはなるべく触れないようにゆっくりと地面の土を掻いていく。ゆっくりと丁寧に掘り起こしていくと布は見えていた部分だけではないことが分かった……。そして範囲は広がっていき姿を現したのは……
「な、なんだよ、これ……」
ルースが小さく呟いた。
出て来たものは人間であったであろう骸だった。見えていた部分はおそらくこの人間が着ていたのであろう服の袖。ボロボロになってしまっていて、服だとは全く見えないが、明らかに骸に巻き付いているところを見ると服だったのだろう。
「埋葬されていた訳でもなさそうだな」
ライルが眉間に皺を寄せながら呟く。
「うん……」
明らかに埋葬ではない。なにかに襲われ、そして倒れ込み絶命した……そんな風に見える。そしてその骸が大事そうに抱えているもの……なにか剣のようなものが見える……。
「なんだろう、これ」
骸を壊してしまわないようにそっと手を伸ばす。
「気を付けろ!」
ライルが叫んだと同時に俺の伸ばした手がその剣に触れた。その瞬間!!
ぶわっと真っ黒の霧のようなものが噴出した!! それと同時にその黒い霧は結界を吹き飛ばし、まるで意思があるように、俺を飲み込もうと覆いかぶさってくる!!
「ショーゴ!!!!」
ライルは俺を庇うように上から覆いかぶさった。
「ライル!!!!」
黒い霧はライルを包み真っ黒に染める。
ルースが咄嗟に浄化魔法を発動させた。
「ショーゴ、私では無理だ!! ショーゴの浄化魔法を!!」
「!!」
気が動転して咄嗟に浄化魔法を発動出来ないなんて! ライル!! ライル!!
黒い霧目掛けて浄化魔法を発動させる。魔力で霧を絡め取り一気に浄化を!! 爆発するように霧散すると辺りに黒い霧は見えなくなった。
俺はライルに押し倒される形で地面に倒れ、上にはライルが覆いかぶさっているが、ライルは動く気配がない。
「ライル!! ライル!! しっかりしろ!!」
いくら揺り動かしてもライルが動く気配がない。どうしよう……ライルが……ライルが……。
「ライル!! 起きてよ!! ライル!!」
ダメだ、泣いてしまいそうだ……。ライル!!
ルースがライルの身体を動かし、俺の上から下ろし横に寝かせた。俺は身体を起こしライルの顔に手を触れる。
「ライル……ライル……なんで寝てんだよ。起きろよ。なにしてんのさ!」
「ショーゴ、落ち着け」
ルースがライルの呼吸や心臓の音を確認する。
「大丈夫だ、生きてる。おそらく気を失っているだけだ。すぐに目を覚ますよ」
「そ、そっか……」
安堵の涙が零れた。
俺のせいでライルがこんな目に……俺がこんなところに調べに来なければ……俺がこんな怪しいものに触れなければ……。
なんで俺じゃなくライルが襲われないといけないんだ。俺のせいだ……。
「自分を責めるなよ? ライルは自分の意思でショーゴを庇ったんだから。そこはライルの気持ちを察してやりなよ。もしショーゴになにかあって守れなかったとしたら、ライルはそのほうが辛いだろ」
ルースは俺の肩をポンと叩いた。
そうだな……前回の浄化のときも俺は一人で向かった。そのときライルは俺を守れなかったと酷く悔やんでいた。倒れていた間、酷く苦しめた。
今回は俺の傍から少しも離れようとしなかったライル。今回こうやって守ってくれたことを感謝こそすれ悔やむべきじゃない。
「うん、そうだな、ありがとうルース」
ルースはニッと笑うと立ち上がり、先程の骸を観察した。
「今はショーゴの浄化でなんとかなってはいるが……、この骸……というかこの剣……なにかまだ力が残っているね……」
「……なんなんだろう、それ」
「明らかにいいものではないよね。調べる必要がありそうだ。ライルが目覚めたら、この辺りに結界を張っておいたほうがいいかもね。なにか瘴気の原因そうだ」
「うん」
「……うっ」
「ライル!?」
ライルが呻き声を上げ、身動ぎをした。
「ライル!! ライル!! 大丈夫か!?」
「うぅ……」
眉間に皺を寄せ、ゆっくりと目を開けた。そして確認するように周りを見る。
「ここは……」
頭を押さえながら上半身を起こし、意識を取り戻すかのように頭を振った。
「ライル……良かった……」
嬉しさで涙が零れる。あぁ、あのとき……俺が目覚めたとき、ライルが泣いていた。あのときのライルはこんな気持ちだったんだな……。
思わずライルを抱き締めた。
「ライル、本当に良かった。守ってくれてありがと」
「…………お前は誰だ?」
生きていてくれたことに喜び、抱き締めたその愛しい相手から冷たい声が響いた。
「これが瘴気の森か、いやぁ、壮観だね、なにもない!」
そう言いながらアハハハと楽しそうに笑うのはルース。今回俺とライルが瘴気の森へ調べに行くとなったとき、自分も一緒に行くと言い出したのだ。
本当なら浄化にも付いて行きたかったが、手が離せない仕事があり断念したのだそうだ。だから今回は絶対に行く! と無理矢理付いて来た。
森があったところはなにもなくなり、見事な更地。ただっぴろい平原が広がっている。ルースの言う通り、あんな鬱蒼とした森があったことを知っている人間からすると、この景色は壮観でしかない。綺麗さっぱりなにもないのだから。
「周りに瘴気の気配もないし、本当に浄化されたんだねぇ」
そう言いながらルースは周りを見回し、地面を探る。土を触り手に取るが、瘴気の痕跡は感じないと言う。
「うーん、でもなんだろうな……」
「なんだ?」
ルースは立ち上がったかと思うと腕組みし考え込んだ。ライルは俺の横にピタリと貼り付いているが、ルースのその言葉に目を向けた。
「なにかおかしい気がするんだよね」
「おかしい?」
「うーん」
ルースはうんうんと唸っている。ライルはルースの言葉に警戒をしたのか、俺の肩を抱いた。俺自身もまたなにやら違和感を感じる。
「瘴気の気配は確かに感じない……でも、なんというか……清浄さがない……ショーゴはどう?」
ルースは俺に振り返り聞いた。
そうなんだよ。俺もそれが気になった。確かに瘴気の気配は感じないんだ。でも、それにしては浄化された、という清浄さのようなものを全く感じない。
辺りを見回しても更地であって、なにもないというのになぜだ。
「俺もルースと同じだ……浄化された割にはこの辺り一帯の違和感がまだある気がする。清浄さは全く感じない……」
「だよねぇ……なぜなんだ?」
ルースは歩を進めた。俺もそれに続き、ライルは警戒しているのか俺の傍を離れない。
「ショーゴ、なにか異変があればすぐに言え」
ライルは周りを警戒しながら俺に言った。
「うん」
なにか起こるとも思えないが、しかしこの違和感が若干不安にさせる。
三人で辺りを確認しつつ歩を進めるとおそらくあの宝石があった場所であろう、瘴気の森の中心辺りにやって来た。そのときルースが声を上げる。
「おい、これなんだ!?」
ルースは声を上げたと同時に立ち止まり、目線は足元を見ていた。ルースの横に並び目線の先を覗き込む。
「「!?」」
俺もライルもそれを見た瞬間動きが止まった。
「な、なんだこれ……」
宝石のあったであろう場所の地面、そこは少しだけ土が盛り上がり、掘られたように土が周りに散らばっていた。そこにはなにかが埋まっていて、浄化のときをきっかけとしたのか地中から姿を現したようだった。
「布……みたいだな……」
ルースが呟いたそれは破れて古ぼけた布地のようだった。
「結界を張りつつ、掘り起こしてみるか……」
「待て、大丈夫なのか!?」
俺がしゃがみこみ、その布を掘り起こそうとしたとき、ライルは俺の肩を掴み後ろに引いた。酷く不安そうな顔だ。
「結界を張って様子を見つつするから大丈夫だよ」
不安そうな顔のままだがライルは俺の横に腰を下ろし、俺の手先を見守った。ルースも同様に見守る。
布にはなるべく触れないようにゆっくりと地面の土を掻いていく。ゆっくりと丁寧に掘り起こしていくと布は見えていた部分だけではないことが分かった……。そして範囲は広がっていき姿を現したのは……
「な、なんだよ、これ……」
ルースが小さく呟いた。
出て来たものは人間であったであろう骸だった。見えていた部分はおそらくこの人間が着ていたのであろう服の袖。ボロボロになってしまっていて、服だとは全く見えないが、明らかに骸に巻き付いているところを見ると服だったのだろう。
「埋葬されていた訳でもなさそうだな」
ライルが眉間に皺を寄せながら呟く。
「うん……」
明らかに埋葬ではない。なにかに襲われ、そして倒れ込み絶命した……そんな風に見える。そしてその骸が大事そうに抱えているもの……なにか剣のようなものが見える……。
「なんだろう、これ」
骸を壊してしまわないようにそっと手を伸ばす。
「気を付けろ!」
ライルが叫んだと同時に俺の伸ばした手がその剣に触れた。その瞬間!!
ぶわっと真っ黒の霧のようなものが噴出した!! それと同時にその黒い霧は結界を吹き飛ばし、まるで意思があるように、俺を飲み込もうと覆いかぶさってくる!!
「ショーゴ!!!!」
ライルは俺を庇うように上から覆いかぶさった。
「ライル!!!!」
黒い霧はライルを包み真っ黒に染める。
ルースが咄嗟に浄化魔法を発動させた。
「ショーゴ、私では無理だ!! ショーゴの浄化魔法を!!」
「!!」
気が動転して咄嗟に浄化魔法を発動出来ないなんて! ライル!! ライル!!
黒い霧目掛けて浄化魔法を発動させる。魔力で霧を絡め取り一気に浄化を!! 爆発するように霧散すると辺りに黒い霧は見えなくなった。
俺はライルに押し倒される形で地面に倒れ、上にはライルが覆いかぶさっているが、ライルは動く気配がない。
「ライル!! ライル!! しっかりしろ!!」
いくら揺り動かしてもライルが動く気配がない。どうしよう……ライルが……ライルが……。
「ライル!! 起きてよ!! ライル!!」
ダメだ、泣いてしまいそうだ……。ライル!!
ルースがライルの身体を動かし、俺の上から下ろし横に寝かせた。俺は身体を起こしライルの顔に手を触れる。
「ライル……ライル……なんで寝てんだよ。起きろよ。なにしてんのさ!」
「ショーゴ、落ち着け」
ルースがライルの呼吸や心臓の音を確認する。
「大丈夫だ、生きてる。おそらく気を失っているだけだ。すぐに目を覚ますよ」
「そ、そっか……」
安堵の涙が零れた。
俺のせいでライルがこんな目に……俺がこんなところに調べに来なければ……俺がこんな怪しいものに触れなければ……。
なんで俺じゃなくライルが襲われないといけないんだ。俺のせいだ……。
「自分を責めるなよ? ライルは自分の意思でショーゴを庇ったんだから。そこはライルの気持ちを察してやりなよ。もしショーゴになにかあって守れなかったとしたら、ライルはそのほうが辛いだろ」
ルースは俺の肩をポンと叩いた。
そうだな……前回の浄化のときも俺は一人で向かった。そのときライルは俺を守れなかったと酷く悔やんでいた。倒れていた間、酷く苦しめた。
今回は俺の傍から少しも離れようとしなかったライル。今回こうやって守ってくれたことを感謝こそすれ悔やむべきじゃない。
「うん、そうだな、ありがとうルース」
ルースはニッと笑うと立ち上がり、先程の骸を観察した。
「今はショーゴの浄化でなんとかなってはいるが……、この骸……というかこの剣……なにかまだ力が残っているね……」
「……なんなんだろう、それ」
「明らかにいいものではないよね。調べる必要がありそうだ。ライルが目覚めたら、この辺りに結界を張っておいたほうがいいかもね。なにか瘴気の原因そうだ」
「うん」
「……うっ」
「ライル!?」
ライルが呻き声を上げ、身動ぎをした。
「ライル!! ライル!! 大丈夫か!?」
「うぅ……」
眉間に皺を寄せ、ゆっくりと目を開けた。そして確認するように周りを見る。
「ここは……」
頭を押さえながら上半身を起こし、意識を取り戻すかのように頭を振った。
「ライル……良かった……」
嬉しさで涙が零れる。あぁ、あのとき……俺が目覚めたとき、ライルが泣いていた。あのときのライルはこんな気持ちだったんだな……。
思わずライルを抱き締めた。
「ライル、本当に良かった。守ってくれてありがと」
「…………お前は誰だ?」
生きていてくれたことに喜び、抱き締めたその愛しい相手から冷たい声が響いた。
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