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28-2 ディークの願い
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「はぁ……」
ディークは自身の部屋で茫然と夜を過ごしていた。今まではセルヴィと触れ合い、そのままセルヴィの横で眠りに就いていた。自分自身で触れ合いをやめたが、こうやって一人で過ごしていると、切なくなる。セルヴィを思い出すと下半身が疼く。しかし、それと同時に自分はセルヴィと結ばれる訳ではないのだ、と自分自身に言い聞かせる。
(男同士ということだけでなく……王子と騎士だ。それだけでも結ばれる訳なんかないしな……それに……俺は……)
大きく溜め息を吐くと、独り静まり返った冷たいベッドで眠りに就いた。
そして十日ほどが経った頃、トルフがようやく戻って来た。ある書簡を手にして……。
「殿下、ただいま戻りました」
「あぁ、ご苦労」
セルヴィの部屋ではトルフとディークが並ぶ。そして事前に話をしていたのか、ディークとトルフは顔を見合わせ頷くと、トルフはひとつの書簡をセルヴィに手渡した。
「これは……」
「陛下からでございます」
「父上!?」
セルヴィは手にした封書に目をやると、王の紋で封蝋がなされてあった。セルヴィはガバッと顔を上げ、ディークに目をやる。
「どういうことだ!?」
「トルフさんに陛下へ使いをお願いしました。セルヴィ殿下の呪いが消えた、という報告に」
「!? な、なぜそんなことを勝手に!!」
セルヴィは怒りを露わにした。
「殿下はこのまま隠し通すつもりだったのかもしれませんが、それで良いのですか?」
「…………」
ディークは真っ直ぐにセルヴィを見据える。
「殿下は呪いが消えたのに、弟殿下に全てを任せたまま、このミルフェン城でひっそりと生きていくなんてことが出来るんですか?」
弟殿下も賢い方だとは言われている。しかし、至って普通なのだ。それは今の国王も同じだろう。悪くもないが、特別際立つところもない。当たり障りなく平和に過ごしていることが悪いことではない。しかし……
「おそらく今までの国王はそうやって、第一王子の才能を羨みながらも、呪いのせいで王位を継げない兄を想い、必死に国王として国を治めてきたんでしょう? おそらく貴方のお父上も。それを貴方は見捨てられるんですか?」
(責任感の強い殿下なら、そうやって引きこもったにしろ、きっとずっと気になるはず。弟殿下に全て押し付けるなんてきっと出来ないだろう……)
ディークは苦笑する。
(このまま引きこもっていて、一緒に過ごせたならどれほど嬉しいか……でもそんなのは殿下じゃない。呪われ、王城から離れ、独りミルフェン城で過ごしていても、ずっと国の仕事を続けていた。そんな殿下が、呪いが解けたのに国を無視して一人自由に生きるなんて……そんなのは殿下じゃないんだよ……)
ディークは自分勝手にセルヴィという人物を決め付けていることには気付いていた。しかし、それでもどうしてもセルヴィが国を放っておいて、ディークと共に人生を緩やかに過ごすとは思えなかった。
自分からセルヴィの手を離すことに辛くもあり、切なくもある。しかし、セルヴィには今まで手放してきた幸せを手に入れてもらいたい。そうディークは思う。本来ならば、呪いさえなければ、普通に手にしていたであろう幸せを。
だからディークは決意を固めた。自分からセルヴィを送り出そう、と。
「殿下……国王となってください」
決意を固めたディークは真っ直ぐにセルヴィを見詰め、眩しいものを見るように目を細め、はっきりと言葉にした。
ディークは自身の部屋で茫然と夜を過ごしていた。今まではセルヴィと触れ合い、そのままセルヴィの横で眠りに就いていた。自分自身で触れ合いをやめたが、こうやって一人で過ごしていると、切なくなる。セルヴィを思い出すと下半身が疼く。しかし、それと同時に自分はセルヴィと結ばれる訳ではないのだ、と自分自身に言い聞かせる。
(男同士ということだけでなく……王子と騎士だ。それだけでも結ばれる訳なんかないしな……それに……俺は……)
大きく溜め息を吐くと、独り静まり返った冷たいベッドで眠りに就いた。
そして十日ほどが経った頃、トルフがようやく戻って来た。ある書簡を手にして……。
「殿下、ただいま戻りました」
「あぁ、ご苦労」
セルヴィの部屋ではトルフとディークが並ぶ。そして事前に話をしていたのか、ディークとトルフは顔を見合わせ頷くと、トルフはひとつの書簡をセルヴィに手渡した。
「これは……」
「陛下からでございます」
「父上!?」
セルヴィは手にした封書に目をやると、王の紋で封蝋がなされてあった。セルヴィはガバッと顔を上げ、ディークに目をやる。
「どういうことだ!?」
「トルフさんに陛下へ使いをお願いしました。セルヴィ殿下の呪いが消えた、という報告に」
「!? な、なぜそんなことを勝手に!!」
セルヴィは怒りを露わにした。
「殿下はこのまま隠し通すつもりだったのかもしれませんが、それで良いのですか?」
「…………」
ディークは真っ直ぐにセルヴィを見据える。
「殿下は呪いが消えたのに、弟殿下に全てを任せたまま、このミルフェン城でひっそりと生きていくなんてことが出来るんですか?」
弟殿下も賢い方だとは言われている。しかし、至って普通なのだ。それは今の国王も同じだろう。悪くもないが、特別際立つところもない。当たり障りなく平和に過ごしていることが悪いことではない。しかし……
「おそらく今までの国王はそうやって、第一王子の才能を羨みながらも、呪いのせいで王位を継げない兄を想い、必死に国王として国を治めてきたんでしょう? おそらく貴方のお父上も。それを貴方は見捨てられるんですか?」
(責任感の強い殿下なら、そうやって引きこもったにしろ、きっとずっと気になるはず。弟殿下に全て押し付けるなんてきっと出来ないだろう……)
ディークは苦笑する。
(このまま引きこもっていて、一緒に過ごせたならどれほど嬉しいか……でもそんなのは殿下じゃない。呪われ、王城から離れ、独りミルフェン城で過ごしていても、ずっと国の仕事を続けていた。そんな殿下が、呪いが解けたのに国を無視して一人自由に生きるなんて……そんなのは殿下じゃないんだよ……)
ディークは自分勝手にセルヴィという人物を決め付けていることには気付いていた。しかし、それでもどうしてもセルヴィが国を放っておいて、ディークと共に人生を緩やかに過ごすとは思えなかった。
自分からセルヴィの手を離すことに辛くもあり、切なくもある。しかし、セルヴィには今まで手放してきた幸せを手に入れてもらいたい。そうディークは思う。本来ならば、呪いさえなければ、普通に手にしていたであろう幸せを。
だからディークは決意を固めた。自分からセルヴィを送り出そう、と。
「殿下……国王となってください」
決意を固めたディークは真っ直ぐにセルヴィを見詰め、眩しいものを見るように目を細め、はっきりと言葉にした。
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