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33-2 行方不明
しおりを挟む「さてと……イチャついている訳ではないだろうが……まあ、ジウシードと一緒にいるのか?」
最近のジウシードの悩みっぷりから考えると、手当たり次第にアキラに手を出していたときのようなことはないだろう、と考えていた。
アキラの性格上、約束を破るとは思えない。もし来られなくなったにしても、アキラならば必ずなにかしら連絡をしてくるはずだ。それがないということに、若干の不安を覚えながらもジウシードを探す。
王城のなか、ジウシードがいそうな場所を調べて行く。最近はよく厨房に出入りしていると耳にしていた。ジウシードが料理をしている、との噂はあっという間に広がり、王城にいる全ての人間が知っているのでは、というほどの広まりっぷりだった。しかし、厨房にもジウシードの姿はない。
あれこれと探しているうちに、ジウシードの目撃証言を聞くことが出来た。
「ジウシード様ならラウル様と一緒に、見たことがないメイドを連れ、幽閉の塔へと向かわれておられました」
「幽閉の塔?」
「はい、王城内で罪を犯した者を捕え隔離するための部屋や、地下牢、拷問部屋などがあります」
「……そこには俺も行って大丈夫か?」
「領主様と伴侶様ならば問題ないかと」
「分かった、ありがとう」
話しを聞かせてくれた使用人に礼を言い、リョウは幽閉の塔へと向かった。教えられたその塔は、普段リョウたちが過ごしている棟とは遠く離れ、城の敷地内の一番奥まった場所にあった。
古めかしい塔はいつの時代から建っているのか、普段足を踏み入れる王城の棟よりも圧倒的に年季の入ったものだった。石造りで出来たかなり高い塔は蔦が這い、あちこち石が欠け、崩れやしないか心配になりそうなほどだった。
扉は木造で出来ていたが、そこだけは新しく造り替えてあるのか、古ぼけた感じは一切なく、逆に新しい木材が塔の古さと差があり過ぎ、奇妙に思える。
リョウは扉を叩くが、しかし、なかから返事もないため、扉をそっと開いた。鍵が掛かっているでもない扉はギギィと軋む音を立てながら開く。塔のなかは暗くじめっとしている。
ただただ広く円になった床が広がり、その先には上へと昇る階段が壁伝いに続き、そしてそれは反対方向にも地下へと続く階段が続いていた。
階段の傍へと向かったリョウは耳を澄ませる。なにやら人の声が聞こえる。それは地下から聞こえてくるようだった。リョウは地下の階段へと足を踏み入れ、下階へと降りて行く。
しばらく降りて行くと、灯りが見えて来る。そこにはジウシードとラウルの姿があった。そしてそのふたりの前にいるのは見知らぬメイド。
じっとりとした空気が肌に纏わり付く不快感。カビ臭いような鼻をつく臭いが漂い、この場に長居はしたくないな、とリョウは眉間に皺を寄せる。
「ジウシード」
階段から降りつつ、ジウシードに向かい声を掛ける。その声に気付いたジウシードとラウルは振り向いた。
「リョウ……なにをしに来た?」
怪訝な顔でリョウを見たジウシードとラウル。そしてその前にいるメイドは跪き、項垂れている。リョウの声に気付いたメイドが顔をそろりと上げると、その顔は怯えるような顔で目には光がなくなっているようだった。
「あーっと……兄貴を知らないか?」
これは自分が口を出して良いことではない、と瞬時に理解したリョウは、メイドから視線を外し、自身の要件だけを伝えた。
「アキラ? お前と書庫で調べものをするのではなかったのか?」
「いや、そうなんだけど、約束の時間に来ないからどうしたのか、と」
「あぁ、出ようとしていたときに問題が起こったのでな、少し遅れただけだ。部屋にいるのではないか?」
「いや、部屋に行っても誰もいないようだったから……」
そこまで言ってハッとする。リョウが目を見開いたと同時に、ジウシードとラウルも目を見開いた。
「ラウル!! その女を捕えておけ!! アキラのところへ行って来る!!」
「分かりました」
そう叫んだジウシードは勢い良く駆け出し、リョウもそれに続いた。
ジウシードは一心不乱に部屋へと走る。すれ違う使用人たちはジウシードの形相に驚愕の顔となり、なにが起こったのかと目を見開いていたが、ジウシードはそれを気に留めるでもなく走り続けた。リョウもなにやら胸騒ぎを感じ、眉間に皺を寄せる。
「アキラ!!」
ジウシードが部屋の前へとたどり着き、バンッ!! と、勢い良く扉を開け放ち、なかへと駆け込むが、そこにアキラの姿はなかった……。
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