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37-1 兄弟の絆
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ジウシードは俺を横抱きに抱え上げ、スタスタと歩き出した。ジウシードの横顔は綺麗な超絶美形なままだが、だがしかし今は明らかに疲労と、さらには怒りのためか、目付きが鋭くなっていた。明らかな怒りの気配を感じぞわりとする。そんな空気が居た堪れなく、なんとか話題を探し声を掛ける。
「そ、そういえばジウシードはどうしてあの場所が分かったんだ?」
声を掛けたおかげか、俺へと目を向けたジウシードは少し表情が和らいだ。しかし、今度はなぜか悲痛な顔に……なんで?
「母からお前は死んだと聞かされ、怒りに我を忘れていたのだが、あのとき……」
苦しそうな泣きそうなそんな表情で眉を下げたジウシードは俺の額に口付けた。
「あのとき突然お前の叫び声が聞こえた気がした……そして誓約の証が酷く痛んだんだ。まるで心臓に杭を打たれたかのような痛みだ……そして無意識に走り出し、気付けばあの場所にいた……」
「誓約の証が……」
「きっとお前の悲痛な叫びが誓約の証を通して俺に届いたのだろう……この証にそんな力があるとは知らなかったが……」
そう言いながらジウシードは俺の胸にある誓約の証を見詰めた。俺も同様に自身の誓約の証を眺める。
あのとき……あの男たちに襲われそうになったとき……ジウシードの名を呼んだ。心から叫んだ……それがジウシードをここまで運んでくれた訳か……。
「ジウシード」
俺は毛布の隙間から出した腕をジウシードの首に回し、思い切り抱き付いた。
「誓約の証が俺たちを繋いでくれているんだな」
それが嬉しかった。俺とジウシードの絆を感じられた。しかし、ジウシードはなぜかギシリと身体を固くしたような気がした。
「そう……だな……」
躊躇いがちに呟かれた言葉に疑問を抱き、抱き付いたままジウシードの顔をチラリと伺い見るが、ジウシードはただ真っ直ぐに歩く方向を見詰めているだけだった。その顔はなにやら辛そうな、苦しそうな、そんな表情に見えて不安になった……。
その後王城まで戻り、俺は治癒師とやらに治癒魔法を施してもらった。顔は腫れ上がり、口内は切れていた。手のひらは硝子の破片の切り傷が思っていたよりも深かったらしく、血は止まっていたが、完全に傷が消えるまではしばらくの時間を要した。
縛られていた手首も青痣や擦り傷が出来ていたが、それらはすぐに消え、身体の傷はなんとか治癒のおかげで元に戻った。しかし、やはり心の傷というものはすぐさま消えるものではないらしく、自分ではもう大丈夫だと思っているのに、どうにも身体の震えや、突発的に誰かと身体が触れ合うと、発作のように動悸がし呼吸が荒くなるようになってしまった。
ジウシードはそのたびに酷く申し訳なさそうな表情をし、俺を抱き締めた。抱き締め、頭や背中を撫で落ち着かせてくれる。それは嬉しく温かい気持ちになった。なったんだが……でも……あれから一度も俺を抱かない……。
母親の件で国王になりたいかどうなのか自分を見詰め直すために、しばらくの間悩んでいた。その後今回の事件が起こり、と、あれからずっと俺を抱かない。最初は悩んでいる件の結論が出るまで抱くことを我慢するつもりなのかと思っていた。しかし、今は違う気がする……。あの事件以降明らかに俺を遠ざけているような気がする。
頬へ触れたり、額にキスをしたり、俺が発作を起こしたときは抱き締めてくれたり……そういったことはある。しかし、それ以上のことは全くないのだ。
今までなら俺の傍から離れたがらなかったのに、今は逆に俺と顔を合わせないようにしている気がする……。なんで……どうして……男に襲われかけた俺のことが嫌になったんだろうか……。
そんなことを考えるようになってしまった……それが酷く辛かった……。
ジウシードの母親はとりあえず国王選定の儀が終わるまでは、幽閉の塔へ投獄され監視されることとなった。今後の処分は国王が決定してからということになり、ジウシードは母親の話は一切口にはしなかった。
試練も俺の怪我や精神的なものを考慮してくれ、日取りが未定となり、様子を見つつ先送りとなった。
「そ、そういえばジウシードはどうしてあの場所が分かったんだ?」
声を掛けたおかげか、俺へと目を向けたジウシードは少し表情が和らいだ。しかし、今度はなぜか悲痛な顔に……なんで?
「母からお前は死んだと聞かされ、怒りに我を忘れていたのだが、あのとき……」
苦しそうな泣きそうなそんな表情で眉を下げたジウシードは俺の額に口付けた。
「あのとき突然お前の叫び声が聞こえた気がした……そして誓約の証が酷く痛んだんだ。まるで心臓に杭を打たれたかのような痛みだ……そして無意識に走り出し、気付けばあの場所にいた……」
「誓約の証が……」
「きっとお前の悲痛な叫びが誓約の証を通して俺に届いたのだろう……この証にそんな力があるとは知らなかったが……」
そう言いながらジウシードは俺の胸にある誓約の証を見詰めた。俺も同様に自身の誓約の証を眺める。
あのとき……あの男たちに襲われそうになったとき……ジウシードの名を呼んだ。心から叫んだ……それがジウシードをここまで運んでくれた訳か……。
「ジウシード」
俺は毛布の隙間から出した腕をジウシードの首に回し、思い切り抱き付いた。
「誓約の証が俺たちを繋いでくれているんだな」
それが嬉しかった。俺とジウシードの絆を感じられた。しかし、ジウシードはなぜかギシリと身体を固くしたような気がした。
「そう……だな……」
躊躇いがちに呟かれた言葉に疑問を抱き、抱き付いたままジウシードの顔をチラリと伺い見るが、ジウシードはただ真っ直ぐに歩く方向を見詰めているだけだった。その顔はなにやら辛そうな、苦しそうな、そんな表情に見えて不安になった……。
その後王城まで戻り、俺は治癒師とやらに治癒魔法を施してもらった。顔は腫れ上がり、口内は切れていた。手のひらは硝子の破片の切り傷が思っていたよりも深かったらしく、血は止まっていたが、完全に傷が消えるまではしばらくの時間を要した。
縛られていた手首も青痣や擦り傷が出来ていたが、それらはすぐに消え、身体の傷はなんとか治癒のおかげで元に戻った。しかし、やはり心の傷というものはすぐさま消えるものではないらしく、自分ではもう大丈夫だと思っているのに、どうにも身体の震えや、突発的に誰かと身体が触れ合うと、発作のように動悸がし呼吸が荒くなるようになってしまった。
ジウシードはそのたびに酷く申し訳なさそうな表情をし、俺を抱き締めた。抱き締め、頭や背中を撫で落ち着かせてくれる。それは嬉しく温かい気持ちになった。なったんだが……でも……あれから一度も俺を抱かない……。
母親の件で国王になりたいかどうなのか自分を見詰め直すために、しばらくの間悩んでいた。その後今回の事件が起こり、と、あれからずっと俺を抱かない。最初は悩んでいる件の結論が出るまで抱くことを我慢するつもりなのかと思っていた。しかし、今は違う気がする……。あの事件以降明らかに俺を遠ざけているような気がする。
頬へ触れたり、額にキスをしたり、俺が発作を起こしたときは抱き締めてくれたり……そういったことはある。しかし、それ以上のことは全くないのだ。
今までなら俺の傍から離れたがらなかったのに、今は逆に俺と顔を合わせないようにしている気がする……。なんで……どうして……男に襲われかけた俺のことが嫌になったんだろうか……。
そんなことを考えるようになってしまった……それが酷く辛かった……。
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