【完結】異世界転移で落ちて来たイケメンからいきなり嫁認定された件

りゆき

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37-2 兄弟の絆

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「兄貴、大丈夫か?」
「リョウ……」

 見舞いという名目で部屋まで会いに来てくれたリョウ。おそらく俺とジウシードのギクシャクした雰囲気に気付いたのだろう、苦笑しながら俺を椅子へと促した。

「泣きそうな顔になってるぞ?」
「…………分かってる……でも、ジウシードが……」

 そこまで口にし、涙が零れそうになってしまい俯く。情けない……本当に情けない……こんなことで泣きそうになるなんて。女々しい。なんの取柄もない平凡な男なのに、さらに泣くとかありえない。こんなおっさんが泣いても可愛くないんだよ。くそっ。

「はぁ……なんかよく分からんが、おそらくジウシードも馬鹿なことをグルグルひとりで考え込んでいるんだろう。ちゃんと腹割って話し合えよ」
「避けられてる……夜もなにも話さずすぐに寝ちゃうんだよ……」
「…………あいつは違う意味での馬鹿だな」

 そう言うとリョウは深い溜め息を吐いた。馬鹿とは……ジェイクのことじゃないよな……ジウシードが? 馬鹿……。リョウにはジウシードがなにを考えているのか分かるんだろうか……俺とは違って頭も良いしな……リョウみたいな奴ならジウシードの母親も納得したんだろうか……。

 チラリとリョウの顔を見ると、そんな卑屈な考えをしていることに気付かれたのか、リョウは呆れたような顔になり、ぬっと手を伸ばしたかと思うと、思い切りデコピンされました……。

「痛っ!!」
「まーた、くだらないこと考えてるんだろ。兄貴は自己肯定感が低すぎるんだよ。もっと自分のことを褒めてやれよ」
「自己肯定感……だって俺みたいな平凡な奴……なんの取柄もないし……好かれるような要素……なにもない……」

 自分で言って、どんどん情けなくなってくる。こんな後ろ向きな考えばかりしていること自体が、自分を駄目にしているということは分かっているのに……分かっているのに益々マイナスな考えの沼に嵌まっていく……。

 心と一緒にどんどんと俯いてしまい、リョウは今度は容赦なく手刀で俺の脳天をズビシッ! と、思い切り叩いた。

「だ、だから痛いっつーの!!」

 頭を両手で押さえながら若干涙目で訴える。本気で痛いわ!!

「兄貴も大概アホだな」
「酷っ!」

 溜め息を吐きながらリョウは俺を見て苦笑した。そして優し気な目で笑う。

「俺は兄貴を尊敬してるぞ?」
「え?」

 突然の台詞に一瞬意味が分からず固まった。尊敬? リョウが? 俺を? 尊敬する要素なんてあるか? いや、兄としてそれもどうなのよ、って感じだが、でも今までそんな尊敬されている気はしたことがないし、自分でも尊敬されるようなことをした覚えもない。情けない話だが……。

「ハハ、なんだよ、その間抜け面」
「間抜けって、おい」
「だから自己肯定感が低すぎるって言ってんだよ。全く自覚がないんだろ」
「自覚がないってどういう……」

 リョウは苦笑しながら話し出す。

「両親が死んだとき俺はまだ高校生だっただろ? 兄貴もまだ入社して一年くらいしか経ってなかったよな?」
「ん? あ、あぁ……そうだったな」

 両親が死んだときリョウは十八、俺は二十三だった。リョウは大学受験を控えていて、俺は入社して一年という時期で、ようやく仕事にも慣れて来た矢先のことだった。

「あのとき俺の大学受験が控えていたから、兄貴は両親の事後処理や家のこととか全て負担してくれた。兄貴だってまだ仕事では新人同然で大変だっただろうに……。大学進学の金銭的負担も両親の保険金や遺産はあまり使わず今後のために置いておけって言って、自分の給与から俺の大学生活の面倒見てくれてたよな」
「あー、うん? そう、だったかな?」

 ハハ、と笑ってみせると、リョウはフッと笑った。その顔はとても優し気で、俺のことを尊敬している、という言葉は本心で言ってくれているんだな、ということが分かった気がした。

「俺は兄貴にめちゃくちゃ感謝してる。俺が大学生活を楽しくなんの憂いもなく過ごせたのは兄貴のおかげだから」
「リョウ……」

 なんだかめちゃくちゃ嬉しいことを言ってくれている。こんな素直な言葉を聞くのは初めてかもしれない。それがむず痒くもあり、そわそわと嬉しい気持ちにもなる。

「俺もお前のおかげで頑張れたんだぞ?」
「?」
「両親が死んだとき、リョウが取り乱さず冷静に対処してくれたから、俺も冷静になれた。哀しみに暮れるばかりでなく過ごせた。だからその後も頑張れたんだよ。お前とふたりで生きていくために」
「ハハ、小っ恥ずかしい台詞だな」
「お前が先に言い出したんだろ!」

 アハハ、とリョウは楽しそうに笑った。


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