【完結】異世界転移で落ちて来たイケメンからいきなり嫁認定された件

りゆき

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38-1 仲間外れ作戦

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「こっちの世界に来るときだって、きっと兄貴のことだから、色んな人に迷惑をかけないよう色々手配したりとかしてたんだろ?」
「う、うん、まあ、それなりに……」

 さすがリョウ……俺の行動パターンを読まれている……。

「今回のこともどうせ、ジウシードの母親のことを憎み切れてないんだろ? 自分がこんなだから認められないんだ、とか思ってんだろ」
「うっ……な、なんでそんなこと分かるんだよ……」
「ハハ、兄貴のことなら大体分かる」

 楽しそうに笑ったリョウは、フッと小さく溜め息を吐き、そして苦笑した。

「自分のせいだ、と思うのは兄貴の性格上仕方ないのかもしれないが、兄貴は自分をもっと褒めてやれ。兄貴は他人であろうが、周りの人間を思いやれる優しい人間だよ。それに救われる人間はたくさんいる。そんなこと俺には出来ない。だからもっと誇れ」
「リョウ……ありがとう……」

 なんだかほっこりとした気分になった。鬱々とした気分が晴れていくようだった。すぐに自分のことを誇ることなんて出来ないかもしれない。でも、卑屈になる必要はないかもしれない、そう思えた。そう思わせてくれたリョウに感謝の気持ちでいっぱいだ。

 そしてニッと笑ったリョウは立ち上がり、なにかを企んでいるかのような顔で呟いた。

「次はあの馬鹿だな」



 リョウは俺を部屋から連れ出し、なにやら歩き始める。

「どこへ行くんだ?」
「うーん、特に考えてないけど、演習場にでも行ってみるか? ウェジエとジェイクが訓練しているのを見学するのも面白かったし。後は例の日本との繋がりを調べるのも良いしな。フェシスはどうやら伴侶になるまでは学者のようなこともしていたらしいから、研究しているものを見学させてもらっても面白いかもよ?」
「そ、そうなのか……」

 なにやら気を遣われているのか、リョウに連れられあちこちと歩き回る。あの事件後は回復のためもあり、ほとんど部屋で過ごしていた。だから久しぶりにあちこちと出歩くのは楽しくもあった。ジウシードのことで悩んでいた俺の気分転換に連れ出してくれたんだろうな。本当に良い弟だ。

 ウェジエとジェイクの訓練を見学し終えた後は、フェシスも交え、共に昼食を取ったり、フェシスの研究していることを見学させてもらったりとしながら、彼らの昔の話を聞かせてもらったりと楽しく過ごしていた。
 三人も俺を腫れ物に触るような扱いなどなく、今まで通りに接してくれていることが有難かった。しかし、誰もジウシードのことについては触れない。それが俺に気を遣ってなのか、わざとなのか、皆と過ごしていると、全くといっていいほど、ジウシードの姿を見ないために、逆に俺の方が気になるようになってきてしまった。

「あ、あのさ、もしかして俺とジウシードの関係を気にしてくれたりしてる?」

 晩餐に呼ばれ、食事をしていたのだが、そこにジウシードの姿がなかったため、さすがに聞いてみることにした。この場にジウシードがいない、ということがあまりに不自然だったから。

「ん? 気にしている、というより……気にさせている……?」
「え?」

 ウェジエが顎に手をやりながら考え込むように答えた。それにジェイクも大声で笑った。

「アッハッハ、確かにそうだな。俺は別になんも知らんかったが、よく考えたらこの状況、ジウシードからしたらめちゃくちゃ気になるだろうな!」
「ひとりだけ仲間外れですしね」

 フェシスが眼鏡をクイッと上げながらしれっと言った。ジェイクが知らないってのはありえそうだが……わざと仲間外れにしたんだな……。苦笑してしまった。

「子供騙しの単純な方法だけどな、あの馬鹿には一番効くんじゃないか?」

 リョウがニヤッと悪そうな笑みを浮かべて言う。お、おぉ……な、なんかジウシードもリョウの手のひらの上で転がされてそうだな……。

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