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47-2 戦闘
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戦いを見守りながら、ふと疑問に思ったことを口にする。リョウは目線を逸らすことなく俺の問いかけに応えた。
「あぁ、兄貴の言いたいことはなんとなく分かる。選定の儀の趣旨だろ? 本来の目的というべきか?」
リョウの言葉にフェシスも頷いた。
「私も少し疑問に思っていました。この選定の儀の意味を……」
「うん。俺もこの選定の儀が始まってからなんとなく疑問になってさ……」
ジウシードたちの戦いから目を逸らすことなく、俺たちは話を続けた。
「この選定の儀ってさ、『国王を選ぶため』って聞いていた割には、なんというか、その試練が伴侶との絆を深めるためのものだったり……」
「それと、三領主が協力し合うものだったり、ばかりだな」
俺の言葉にリョウが続く。そして、それにフェシスも続けた。
「そうなんですよね、『競い合う』のではなく『協力し合う』ものばかり」
「本来の目的は『国王を選ぶ』というものではないのか……?」
リョウが考える素振りを見せたと同時に、ジウシードたちの攻撃が効き始めたのかドラゴンの暴れ方がさらに一層激しくなった。
唸り声を上げながら、巨大で長い尻尾を振り上げ叩きつける。そして巨大な翼を無理矢理広げ、洞窟内の岩肌が崩れ始めた。ガラガラと音を立て落ちて来る岩が、ジウシードたちの行く手を阻み、ウェジエがなにやら結界のようなものを出現させていた。
ジェイクが大きく跳躍し、ドラゴンの眼に向かい剣を斬り付けようとすると、大きく翼を羽ばたかせた風圧に吹き飛ばされる。ジェイクは岩肌に叩きつけられ苦悶の表情を浮かべていた。
「ジェイク!!」
リョウは思わず身を乗り出しそうになり、ジェイクの名を叫んだ。フェシスがそんなリョウの肩を引き、身を屈ませる。こんなリョウの焦る姿を見たことがない。いつも飄々としているリョウがジェイクの身を案じている。そのことになにやら嬉しさと、しかし、ジェイクの無事が心配になり、再び皆の戦いに目をやった。
ジェイクは苦悶の表情のままだったが、しかし、すぐさま再び戦いに戻っていた。良かった。とりあえずは大丈夫そうだ。
ウェジエとジウシードは目を合わせ頷き合うと、ウェジエが魔法を発動させた。大きく水がうねり舞い上がると渦となり、そしてドラゴンを包み込む。
「す、凄い……」
「ウェジエは攻撃魔法が得意ですからね」
フェシスがウェジエを見詰めながら誇らしげな顔で言った。ハハ、フェシスのこんな顔も初めて見たな。皆、伴侶のことを愛しているんだな。それを感じ、こんな大変な状況だというのに、なんだかふわふわとした気分となり、嬉しくなってしまった。
大きな球体状になった水魔法はドラゴンを完全に閉じ込め、ドラゴンは水の牢獄のなかで身悶えるように暴れていた。しかし、水はドラゴンの爪や尻尾の攻撃にびくともしない。ドラゴンは苛立ち始めたのか炎を吐き出す。その炎は水に触れると僅かに水を蒸発させていたが、しかし、それよりも水の勢いのほうが勝っていた。炎は水牢獄のなかで渦巻き、ドラゴンの身体を燃やす。
『ウガァァァアアア!!』
悶え苦しむように手当たり次第暴れ回るドラゴン。そして水牢獄のなかの空気がなくなったのか、炎が自然と消えた。ドラゴンの動きがそれに合わせ鈍くなる。それと同時にウェジエが水牢獄を消した。
「ジウシード!! ジェイク!!」
そうウェジエが叫ぶと、ジウシードとジェイクは大きく跳躍し、動きの鈍くなったドラゴンの眼に向かい思い切り剣を突き立てた。
『ギュァァァァァァアア!!』
痛みの悲鳴か、ドラゴンは咆哮を上げながら頭を振り回した。ジウシードとジェイクは剣を残し吹っ飛ばされるが、なんとか受け身を取り着地する。
そしてウェジエが再び魔力を籠めたかと思うと、巨大な雷撃を飛ばした。雷撃は槍のように飛び、ドラゴンの身体を貫いた。
「あぁ、兄貴の言いたいことはなんとなく分かる。選定の儀の趣旨だろ? 本来の目的というべきか?」
リョウの言葉にフェシスも頷いた。
「私も少し疑問に思っていました。この選定の儀の意味を……」
「うん。俺もこの選定の儀が始まってからなんとなく疑問になってさ……」
ジウシードたちの戦いから目を逸らすことなく、俺たちは話を続けた。
「この選定の儀ってさ、『国王を選ぶため』って聞いていた割には、なんというか、その試練が伴侶との絆を深めるためのものだったり……」
「それと、三領主が協力し合うものだったり、ばかりだな」
俺の言葉にリョウが続く。そして、それにフェシスも続けた。
「そうなんですよね、『競い合う』のではなく『協力し合う』ものばかり」
「本来の目的は『国王を選ぶ』というものではないのか……?」
リョウが考える素振りを見せたと同時に、ジウシードたちの攻撃が効き始めたのかドラゴンの暴れ方がさらに一層激しくなった。
唸り声を上げながら、巨大で長い尻尾を振り上げ叩きつける。そして巨大な翼を無理矢理広げ、洞窟内の岩肌が崩れ始めた。ガラガラと音を立て落ちて来る岩が、ジウシードたちの行く手を阻み、ウェジエがなにやら結界のようなものを出現させていた。
ジェイクが大きく跳躍し、ドラゴンの眼に向かい剣を斬り付けようとすると、大きく翼を羽ばたかせた風圧に吹き飛ばされる。ジェイクは岩肌に叩きつけられ苦悶の表情を浮かべていた。
「ジェイク!!」
リョウは思わず身を乗り出しそうになり、ジェイクの名を叫んだ。フェシスがそんなリョウの肩を引き、身を屈ませる。こんなリョウの焦る姿を見たことがない。いつも飄々としているリョウがジェイクの身を案じている。そのことになにやら嬉しさと、しかし、ジェイクの無事が心配になり、再び皆の戦いに目をやった。
ジェイクは苦悶の表情のままだったが、しかし、すぐさま再び戦いに戻っていた。良かった。とりあえずは大丈夫そうだ。
ウェジエとジウシードは目を合わせ頷き合うと、ウェジエが魔法を発動させた。大きく水がうねり舞い上がると渦となり、そしてドラゴンを包み込む。
「す、凄い……」
「ウェジエは攻撃魔法が得意ですからね」
フェシスがウェジエを見詰めながら誇らしげな顔で言った。ハハ、フェシスのこんな顔も初めて見たな。皆、伴侶のことを愛しているんだな。それを感じ、こんな大変な状況だというのに、なんだかふわふわとした気分となり、嬉しくなってしまった。
大きな球体状になった水魔法はドラゴンを完全に閉じ込め、ドラゴンは水の牢獄のなかで身悶えるように暴れていた。しかし、水はドラゴンの爪や尻尾の攻撃にびくともしない。ドラゴンは苛立ち始めたのか炎を吐き出す。その炎は水に触れると僅かに水を蒸発させていたが、しかし、それよりも水の勢いのほうが勝っていた。炎は水牢獄のなかで渦巻き、ドラゴンの身体を燃やす。
『ウガァァァアアア!!』
悶え苦しむように手当たり次第暴れ回るドラゴン。そして水牢獄のなかの空気がなくなったのか、炎が自然と消えた。ドラゴンの動きがそれに合わせ鈍くなる。それと同時にウェジエが水牢獄を消した。
「ジウシード!! ジェイク!!」
そうウェジエが叫ぶと、ジウシードとジェイクは大きく跳躍し、動きの鈍くなったドラゴンの眼に向かい思い切り剣を突き立てた。
『ギュァァァァァァアア!!』
痛みの悲鳴か、ドラゴンは咆哮を上げながら頭を振り回した。ジウシードとジェイクは剣を残し吹っ飛ばされるが、なんとか受け身を取り着地する。
そしてウェジエが再び魔力を籠めたかと思うと、巨大な雷撃を飛ばした。雷撃は槍のように飛び、ドラゴンの身体を貫いた。
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