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48-1 選定の儀の目的
雷撃に貫かれたドラゴンは完全に動きを止め、そして『ズシィィィインッ』と大きな音を立てながら倒れた。倒れたと同時になにやら身体が崩れ始めたように見える。なんだ!? 目を凝らしながら見守っていると、ドラゴンの身体はボロボロと崩れ始め、それは黒い霧となり霧散していく……。
「な、なんだあれ……」
皆が呆然とそれを眺める。霧散してしまった黒い霧は跡形もなく消え去り、ドラゴンがいたことを疑うほどになにもなかった。ただジウシードとジェイクの剣だけが、カランと音を立て、地面に落ちた。
「なんだったんだ一体……」
皆が怪訝な顔をする。俺たちは岩陰からそろりと出ると、ジウシードたちの元へと駆け寄った。
「ジウシード、皆、大丈夫か!? 怪我は!?」
「アキラ、俺は大丈夫だ。少し疲れたくらいだな」
そう言い、ハハと笑ったジウシード。リョウは岩肌に叩きつけられたジェイクを心配しているのか、背中に手を当てている。その姿にジェイクは驚いているのか、若干顔を赤くしながらたじろいでいた。ハハ。
「とりあえず回復薬を」
フェシスが鞄からなにやら小瓶を取り出し、三人に渡した。さらにウェジエには違う小瓶も。
「それは?」
「こっちは怪我などを治す回復薬です。こっちは魔力回復薬ですね」
三人に渡した小瓶は黄色い液体。ウェジエに渡した小瓶は水色の液体だった。なるほど、ウェジエが一番魔力を消費しているからか。
三人が回復薬を飲み干すと、擦り傷や打ち身などの怪我がゆっくりと消えていく。
「おぉ、凄いな。治癒魔法とやらを使うんじゃないんだな」
そういえばと思い出し聞いてみる。確かジウシードは治癒魔法を使っていた。主に俺の腰を治すために……。
「あぁ、俺たちは皆、一応治癒魔法は使えるが、大したものではないからな。治癒師ほどの治癒能力はない。だから怪我などの回復には回復薬が一番早い」
「へぇ、そういうもんなのか」
ウェジエが説明をしてくれた。魔法にも得意不得意があるらしく、ウェジエが使っていたような攻撃魔法が得意の者もいれば、治癒が得意な者、俺たちを転移させた魔導師たちのように、転移や結界や浄化など、補助的な魔法を得意とする者もいるらしい。
治癒魔法は自身の魔力コントロールだけでなく、相手の患部を細かく感知する能力が必要らしく、どうやらかなり繊細な作業で攻撃系が得意な者たちのなかにはあまり治癒が得意な者はいないらしい。ハハ、なるほど。
ウェジエはもうひと瓶を飲み干し、回復する間に先程俺たちが疑問に思っていたことをジウシードたちにも話した。
「なるほど、確かに競い合うというより協力し合うものばかりだな」
ウェジエが頷き、ジウシードとジェイクもふむ、と考え込んだ。
「国王選定の儀ってのは三領主のうち、誰が国王に相応しいかの試練じゃなかったのか?」
ジェイクが眉間に皺を寄せながら言葉にする。リョウは顎に手をやり考えを巡らせているのか、宙を見詰めていた。そしてジウシードたち三人の顔を見ながら呟く。
「最初はこの試練てのは、知恵や武力を見極め、生き残った者を国王に……という話なのかと思っていたが……どうやら逆……なのかもな……」
「逆……」
全員がリョウを見た。フェシスも顎に手をやり頷く。
「そういえば歴代の国王もですが、国王が決まった後は他の二領主もなにかしら国王の補佐的立場となっていますね」
「そういえばそうだな、側近であったり、宰相であったり……」
ジェイクも思い出したのかフェシスに続いた。そしてウェジエもそういえばと話す。
「三領主は国王選定の儀が終わると、領主の地位は次へと領主の座を譲るために、領主選抜を行うんだけど、新たな領主が立つとその先代領主は確かに国に勤めていたな」
ジウシードもそれに頷き、皆が忘れてたな、という顔で苦笑していた。
「いや、まあでも、ただ単に世代交代のために領主選抜をして、自身は領主じゃなくなるから国で役職をもらうのかと思ってた」
ウェジエが苦笑しながら言った。
「まさか選定の儀がこんな協力し合う試練だとは思っていなかったですしね」
フェシスはしれっと言ったが、ウェジエとジェイクは苦笑し、ジウシードは……
「な、なんだあれ……」
皆が呆然とそれを眺める。霧散してしまった黒い霧は跡形もなく消え去り、ドラゴンがいたことを疑うほどになにもなかった。ただジウシードとジェイクの剣だけが、カランと音を立て、地面に落ちた。
「なんだったんだ一体……」
皆が怪訝な顔をする。俺たちは岩陰からそろりと出ると、ジウシードたちの元へと駆け寄った。
「ジウシード、皆、大丈夫か!? 怪我は!?」
「アキラ、俺は大丈夫だ。少し疲れたくらいだな」
そう言い、ハハと笑ったジウシード。リョウは岩肌に叩きつけられたジェイクを心配しているのか、背中に手を当てている。その姿にジェイクは驚いているのか、若干顔を赤くしながらたじろいでいた。ハハ。
「とりあえず回復薬を」
フェシスが鞄からなにやら小瓶を取り出し、三人に渡した。さらにウェジエには違う小瓶も。
「それは?」
「こっちは怪我などを治す回復薬です。こっちは魔力回復薬ですね」
三人に渡した小瓶は黄色い液体。ウェジエに渡した小瓶は水色の液体だった。なるほど、ウェジエが一番魔力を消費しているからか。
三人が回復薬を飲み干すと、擦り傷や打ち身などの怪我がゆっくりと消えていく。
「おぉ、凄いな。治癒魔法とやらを使うんじゃないんだな」
そういえばと思い出し聞いてみる。確かジウシードは治癒魔法を使っていた。主に俺の腰を治すために……。
「あぁ、俺たちは皆、一応治癒魔法は使えるが、大したものではないからな。治癒師ほどの治癒能力はない。だから怪我などの回復には回復薬が一番早い」
「へぇ、そういうもんなのか」
ウェジエが説明をしてくれた。魔法にも得意不得意があるらしく、ウェジエが使っていたような攻撃魔法が得意の者もいれば、治癒が得意な者、俺たちを転移させた魔導師たちのように、転移や結界や浄化など、補助的な魔法を得意とする者もいるらしい。
治癒魔法は自身の魔力コントロールだけでなく、相手の患部を細かく感知する能力が必要らしく、どうやらかなり繊細な作業で攻撃系が得意な者たちのなかにはあまり治癒が得意な者はいないらしい。ハハ、なるほど。
ウェジエはもうひと瓶を飲み干し、回復する間に先程俺たちが疑問に思っていたことをジウシードたちにも話した。
「なるほど、確かに競い合うというより協力し合うものばかりだな」
ウェジエが頷き、ジウシードとジェイクもふむ、と考え込んだ。
「国王選定の儀ってのは三領主のうち、誰が国王に相応しいかの試練じゃなかったのか?」
ジェイクが眉間に皺を寄せながら言葉にする。リョウは顎に手をやり考えを巡らせているのか、宙を見詰めていた。そしてジウシードたち三人の顔を見ながら呟く。
「最初はこの試練てのは、知恵や武力を見極め、生き残った者を国王に……という話なのかと思っていたが……どうやら逆……なのかもな……」
「逆……」
全員がリョウを見た。フェシスも顎に手をやり頷く。
「そういえば歴代の国王もですが、国王が決まった後は他の二領主もなにかしら国王の補佐的立場となっていますね」
「そういえばそうだな、側近であったり、宰相であったり……」
ジェイクも思い出したのかフェシスに続いた。そしてウェジエもそういえばと話す。
「三領主は国王選定の儀が終わると、領主の地位は次へと領主の座を譲るために、領主選抜を行うんだけど、新たな領主が立つとその先代領主は確かに国に勤めていたな」
ジウシードもそれに頷き、皆が忘れてたな、という顔で苦笑していた。
「いや、まあでも、ただ単に世代交代のために領主選抜をして、自身は領主じゃなくなるから国で役職をもらうのかと思ってた」
ウェジエが苦笑しながら言った。
「まさか選定の儀がこんな協力し合う試練だとは思っていなかったですしね」
フェシスはしれっと言ったが、ウェジエとジェイクは苦笑し、ジウシードは……
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