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番外編
国王選定の儀 ウェジエ×フェシス編②
しおりを挟む「!?」
ウェジエは驚き目を見開く。
チュッと触れる程度の軽いキスをし、フェシスは再び俯いたかと思うと消え入りそうなほどの小さな声で呟いた。
「……ごはした」
「え?」
あまりに小さな声で聞き取れず、ウェジエは聞き返してしまった。その言葉にフェシスはガバッと顔を上げウェジエを睨む。その顔は真っ赤に染まり涙目だ。そして睨むままに叫んだ。
「だから! 覚悟はしたと言ったんだ!!」
「え、あっ」
ハッとした顔となったウェジエは驚き目を見開いた。フェシスは真っ赤な顔のまま苛立ちを抑えきれないように、睨んだままウェジエの腕を掴み部屋の奥へと引っ張る。怒りのままに進んだ先は寝室……。
ベッドの横までズンズンと進み、力任せにウェジエを放り投げた。ウェジエのほうが体格が良いため、放り投げたというのは語弊があるのかもしれないが、しかし、ウェジエは唖然としていたせいでされるがままだ。
放り投げられた弾みでベッドへと倒れ込んだウェジエを見下ろすように、フェシスはすぐ傍に立ちウェジエに跨るようにベッドへと乗り上げた。そのまま膝立ちでウェジエの腰に跨り見下ろす。
「ちょ、フェ、フェシス!」
焦るように身体を起こしたウェジエは自身の上に跨るフェシスの肩を掴んだ。
「なんだ?」
フェシスは『覚悟を決めた』という言葉の通り、赤い顔ながらも真っ直ぐにウェジエを見詰め、カチャリと音を立てながら眼鏡を外した。
「もう覚悟は決めたと言っただろう。お前も覚悟を決めたのだろう?」
「え、ま、まあそれは、うん……」
じっと真っ直ぐに見詰められウェジエはたじろぐが、真剣な目を向けるフェシスに緊張しながらも頷いて見せた。
「ならばやることはひとつだ」
「うっ」
フェシスは眼鏡をサイドテーブルへと置くと、ウェジエの首へと腕を回し、そして唇を重ねた。
ウェジエは驚き目を見開いたまま唇を重ねるフェシスを見た。眉間に皺を寄せながら目を瞑り、そして不器用ながらも唇を合わせてくるフェシスの姿にドクンと心臓が跳ねた。いつも余裕の表情のフェシスの必死な姿。色恋には興味がなさそうだったフェシスが、こんなにも必死に自分を求めようとしてくれている、という姿に背徳感すら覚える。
ウェジエは一気に頭に血が上り、フェシスの後頭部を掴んだかと思うと引き寄せ、たどたどしいフェシスの唇に自身の唇を強く押し付けた。そして、舌で無理矢理フェシスの口をこじ開ける。
「むぐっ」
フェシスは突然挿入された熱い舌に驚き、今まで固く瞑っていた目を開ける。そこにはいつもの優し気な顔ではない雄の顔をしたウェジエの顔。至近距離で獲物を狙うような瞳に囚われ、フェシスはビクッと身体を震わせた。
ウェジエはフェシスの後頭部を押さえたまま、もう片方の手でフェシスの腰に手を回すと、そのままぐりんと向きを変えた。そしてフェシスを押し倒す。フェシスは何が起こったのか分からないといった顔のまま目を見開き、チュパッと唇を離したかと思うと、先程と形勢逆転したかのような体勢でウェジエはフェシスを見下ろした。
「良いんだな?」
ハァハァと荒い呼吸で見下ろすウェジエは顔を赤らめながらも鋭い視線でフェシスを見詰めた。その姿にフェシスはぞくりと肌が泡立つ。それが恐怖なのか喜びなのか、フェシスには分からなかった。しかし受け入れる覚悟を決めた。
「あぁ」
その言葉を聞くとウェジエは自身の上着を脱ぎ捨てた。均整の取れたしなやかな筋肉を露わにし、しかし、その顔は余裕のない表情でフェシスを見下ろす。そしてフェシスの胸へとゆっくりと手を伸ばすと、フェシスの上着のボタンをひとつずつゆっくりと外していく。
フェシスはそうやって自身の上着を剥いていくウェジエの姿を直視出来ずに顔を逸らした。外されたボタンの隙間からするりと手を滑らせ、フェシスの上半身は剥き出しにされる。ウェジエの手が腹から胸へと滑り、フェシスはビクリと身体を震わせる。
幼い頃からお互いの裸など見慣れたものだ。だがしかし、今現在こうやってお互い肌を晒すという行為が今までにない感情を呼び起こす。
ウェジエよりも線の細いフェシスの白い肌。ウェジエは今までになく緊張し、ごくりと生唾を飲み込んだ。そして深く溜め息を吐くと、意を決するかのように身体を重ねた。
お互いの胸を重ね合わせ、お互いの体温を感じる。どちらのものとも分からない心臓の音。ドクンドクンと早鐘を打つ心音が、触れ合う肌から伝わってくる。
ウェジエは鼻先を合わせ、フェシスの瞳を真っ直ぐに見詰めた。自分の姿がフェシスの綺麗な銀色の瞳に映り込む。白い肌はほんのりと赤く染まり、瞳は潤んでキラキラと輝いている。お互いの吐息が絡み合い、そしてお互い引き寄せられるように唇を重ねた。
軽く重ねられた唇は一度離れ、そして再び重ねられる。チュッチュッと軽く触れ合うように唇を重ね合い、唇を啄みペロリと舐める。フェシスはそれだけで羞恥に顔を染め、落ち着かない表情で身体が強張る。
そんなフェシスの姿にクスッと笑ったウェジエは額に優しく口付けた。そしてフェシスの両頬を両手で包み込み、瞼、鼻先、頬と優しく口付けていく。顎を伝い首筋へと唇を移動させていくと、フェシスからは必死に我慢するような吐息が漏れる。
耳たぶをさわさわと撫でつつ、首筋から次第に下へと降りていく唇。上着の隙間から片手を滑り込ませ、フェシスの白い肌を這い、ウェジエよりは薄い胸板に乗る小さな突起を見付ける。
「あっ」
スリッと親指がその突起に触れた瞬間、フェシスはビクリと身体を震わせた。明らかに身体を強張らせ、上半身を起こそうとするフェシスだが、ウェジエはそんなことはお構いなしに突起に指を這わせた。小さな突起は親指でクリクリと弄ると、次第に固さを持ち出し主張し出す。そのたびにフェシスはビクビクと小さく震えているのが分かる。
「あっ、はっ」
ウェジエは首筋から降りて来た唇でもう片方の突起を探し当てる。すでにもう片方の突起も小さくぷくりと主張し始めていた。ウェジエは舌を伸ばし、その突起をペロリと舐める。
「んあ」
舌で舐め上げた瞬間、甲高い声が上がり、今まで聞いたことのないようなフェシスの色っぽい声にウェジエは自身の中心がズクンと脈打つのが分かった。
「ウェ、ウェジエ!! そ、そんなことしなくて良い!! 早く入れろ!!」
いつもひと前では言葉を崩さないフェシス。それが今は明らかに冷静さとは程遠く、顔を真っ赤にさせながら涙目でウェジエに訴える。舌を伸ばし自身の胸の突起を弄るウェジエの姿を目にし、羞恥が限界を迎えそうになっていた。
「嫌だ。俺がしたい」
舌を伸ばしながらフェシスと視線を合わせたウェジエは意地悪そうにニッと笑った。そしてそのまま舌でぐりぐりと突起を弄り出す。
「あっ、やっ、んあっ」
じたばたと逃げようとするフェシスの脚を抑え付け、しかし、そのまま突起をぐりぐりと弄り続ける。ジュッと吸い付き、舌で転がし、ジュパッと唇を離すと、フェシスの胸はウェジエの唾液でテカリ、赤くぷくりと腫れ上がっていた。
抑え付けていた脚から手を移動させていき、フェシスの腰元を緩めると、すでに盛り上がりを見せていたフェシスの中心は、先走りで下着を濡らし、むわっと熱を発していた。
「ハハ、気持ち良かったか?」
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