迷館の主

プロローグ

過去へ行きたい人募集中
「今が変わってしまったとしてもあなたは過去へ行ける扉を開けますか？」
扉を開けたいのなら迷館へ 
おまちしております。
                                                迷館の主人より

「今日は誰か来るかしら？」
二十代位の女の人が窓をみながら呟く。
「来ないに越したことはないだろう。実際、迷いのある奴なんか来ないほうが良いんだからな。」
黒猫が少し嫌味っぽく言う、女の人は少しムッとし
「ふざけないでこっちは生活が 掛かってるの、確かにここに来る人は心の奥底からの本当の悩みや迷いのある人ばかりだから来ない方がいいと思うわ。悩みや迷いなんてとても辛いものだからない方がいいに決まってる。でも私達の生活だってカツカツなのよ。誰か来てもらわないと困るわ。」
黒猫は人ごとのようにアクビをし
「そんなこと言ってもな」
と言ったので女の人は
「今日の私達の晩御飯はお味噌汁（出汁のみ）と白米だけにしようかしら。節約にもなるしね。それで午後のティータイムは無しにしようかな…」
「ごめんなさい。それだけはやめてくれ‼︎」
黒猫は焦りながら謝る。女の人はニヤニヤしながら我が物顔で「ケーキと紅茶命だもんね。ふふ、チェックメイトよ。今日は私の勝ちかしら」と言う。黒猫は「当たり前だケーキと紅茶は俺の人生の一部だ。て言うかお前卑怯だぞ、俺が動揺している間に…」と少しふてくされる。「ふふふ、動揺したほうが負けよ、やはり今日は色々と私の勝ちね。」と女の人は嬉しそうにそうに言った。
カランカラン
女の人は階段の下を見下ろしながら言った。
「誰か来たみたいね。」
 
こうしてチェスをしながら女の人と黒猫は迷いや悩みがあるお客様を迷館で待っている。