華麗なる転生を遂げたのに、いきなり婚約破棄とか。

くわっと

文字の大きさ
6 / 68
1章 転生と初めての婚約破棄

6.交渉中断

しおりを挟む
はてさて、どうしたものか。
この条件、受け入れるべきか否か。
なかなかに難題である。
二つ返事でやりましょう、と答えてやっぱりできませんでした、とは言い難い。
婚約破棄で済めばいい方だ。
二国間の対立を今以上に深めかねない。
……まあ、ぱっと出の存在がそこまで国のことを憂いてやる必要はないと思うけれど。

「急いで決める必要はない。その、あれだ。僕がここに滞在している間に決めてくれればいい」

「では、滞在のご予定は?」

アルベルトはぬるりと立ち上がり、てくてくと私のところへ歩みよる。
近くで見ると尚美形。
彫像のような、整った目鼻立ち。
計らずも胸がきゅんきゅんするのを感じる。
美というのはある種の暴力だな。
交渉とは無関係に、相手に好意を抱いてしまう。
坊主憎けれゃ袈裟まで憎い、とは言うけれど美形にトラウマがあったところでそれを嫌うことはないのだろう。

転生しようと、
自らが美しくなろうと、
美しいものはその存在だけで価値がある。
美を愛する、愛してしまうとのいうのは人の本能なのだろう。
魔法が使えるというこの肉体が、人のそれと同一に扱って良いのかは分からないが。

「明日の朝だ」

アルベルトは短く言い放つ。
一晩で決めろ、というのか。
だが、あくまでこちらは『候補』の身。
ここで下手に日程の譲歩を引き出そうとすれば、この婚約の存在そのものが消失する。
何度も思考しているが、それはよろしくない。
せっかく華麗なる転生を遂げたのに、いきなり婚約破棄とか。
この肉体の美にかけて、そんな無様は晒せない。

日程などどうでもいい。
詰まるとこと、決断するための情報さえ集まればいいのだ。
私の魔法のレベルがどの程度なのか、
火龍とはどの程度の強さの生き物なのか、
この婚約破棄の政治的損失がどの程度なのか。
それくらい分かれば十分なのだ。

「……分かりました。では、お答えはまた明日の朝に」

私の返答にアルベルトは薄く笑う。
彼の使用人に合図して、再び花びらを撒き散らせながら視界から消えていく。
ーー花びら、持ち帰れよ。明日の分はあるのか。

ばたんと、無造作な音とともに扉が閉まる。
残されたのは私とメノウの二人だけ。


これまた新情報が多い。
併せて、決断すべきこともできてしまった。
婚約破棄、というのも嫌だが最悪の状況は、火龍との戦闘に破れこの命が消える、あるいは肉体が大幅に損傷することだ。
男は別段、この世界にあいつしかいない訳でない。
外見のスペックだけで考慮すれば、あのレベルは確かに少ないかもしれないが、あくまでその程度だ。
視野を狭くして考えてはいけない。
転生前と違い、今の私は醜くないのだ。
少なくとも、見た目だけは。

「メノウ、いくつか確認しておきたいことがあるのだが」

「はい、何なりと」

「私って魔法使いなの?」

一番の疑問をぶつけてみる。
メノウは目を丸くして驚く。
仕方がないか、魔法使えることが前提の商談をしていたはずなのに、当の本人がその使い方を忘れているのだからな。嘘つき、嘘吐きも甚だしい。

「お嬢様、記憶の混乱具合の程度がかなり酷いようですね。では僭越ながら、私メノウがアリシア=ラインバルト様についてご説明させていただきます」

「よろしく頼む」

こうして、本人を目の前にして本人の説明をしてもらうという不思議な時間が始まった。
しおりを挟む
感想 17

あなたにおすすめの小説

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました

桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。 言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。 しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。 ──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。 その一行が、彼の目に留まった。 「この文字を書いたのは、あなたですか?」 美しく、完璧で、どこか現実離れした男。 日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。 最初はただの好奇心だと思っていた。 けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。 彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。 毎日19時に更新予定です。

公女様は愛されたいと願うのやめました。~態度を変えた途端、家族が溺愛してくるのはなぜですか?~

谷 優
恋愛
公爵家の末娘として生まれた幼いティアナ。 お屋敷で働いている使用人に虐げられ『公爵家の汚点』と呼ばれる始末。 お父様やお兄様は私に関心がないみたい。 ただ、愛されたいと願った。 そんな中、夢の中の本を読むと自分の正体が明らかに。 ◆恋愛要素は前半はありませんが、後半になるにつれて発展していきますのでご了承ください。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!

たぬきち25番
恋愛
 気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡ ※マルチエンディングです!! コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m 2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。 楽しんで頂けると幸いです。 ※他サイト様にも掲載中です

ヒロインだと言われましたが、人違いです!

みおな
恋愛
 目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。  って、ベタすぎなので勘弁してください。  しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。  私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。

【長編版】悪役令嬢は乙女ゲームの強制力から逃れたい

椰子ふみの
恋愛
 ヴィオラは『聖女は愛に囚われる』という乙女ゲームの世界に転生した。よりによって悪役令嬢だ。断罪を避けるため、色々、頑張ってきたけど、とうとうゲームの舞台、ハーモニー学園に入学することになった。  ヒロインや攻略対象者には近づかないぞ!  そう思うヴィオラだったが、ヒロインは見当たらない。攻略対象者との距離はどんどん近くなる。  ゲームの強制力?  何だか、変な方向に進んでいる気がするんだけど。

処理中です...