華麗なる転生を遂げたのに、いきなり婚約破棄とか。

くわっと

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2章 第2の婚約者

51.手紙

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この手紙を誰かが読んでいる頃には、私はきっとこの世界にはいないでしょう。
ただ、私の願いを、この手紙を読んでいる人が達成していただけると信じて、筆をとっている次第です。

弟は哀れなやつです。
かわいそうな奴なのです。
今の彼は、本当の彼ではない。
後付けされた能力に酔ってしまった。

いや、きっとそれは弟でなくても、酔ってしまうことだろう。
他者より優れた力を持つということは、それだけ自身を歪めてしまう。
それが、圧倒的ならば、その歪みの度合いは語ることもできない。

私があの力を手にしていたら、同じ状況になっていたと思う。
だからこそ、過去も現在も弟は被害者だ。
それは封印される未来においても変わらない。

きっと、私の願いを叶えてくれた君、あるいは君の近くにいる人は弟のことを悪魔と、バケモノと揶揄するだろう。
私も口では、
他者に対しては何の迷いもなくそう言ってきた。

だけれど、本心では違った。
弟は、変わり果てても可愛い弟なのだ。
それは見た目がどうとか、そんな問題ではなく、
存在しているだけで、愛でる対象なのだ。

だからこそ、その誰かに、そしてみんなに伝えて欲しい。
弟は被害者だったんだと。
能力に飲み込まれてしまった哀れな人間だったと。

彼の行為を全て許せ、なんてことは言わない。
許せないものもあるだろうし、許すべきでもない。
行為は憎んでいいが、弟の存在を憎まないで欲しい。
もし、彼が過去にあんな目にあっていなければ、今の弟にはならなかった。
きっと、優しくて可愛い、理想の領主になっていただろう。
私や、兄とは比べることもできないくらい、立派な。

だから、この手紙を封じられている弟に届けて欲しい。
うまくいっていれば、物理干渉ができない結界に閉じ込められているはずだから、一部読み上げて欲しい。
言葉で伝えて欲しい。

つらい役目を押し付けることを許して欲しい。
本来は、生きている間に私自身がやるべきことだったから。
だけれど、今や私より頭の回る弟に対して、過分な接触は愚行だ。
私の我儘で計画を頓挫させては、これまでの協力者に面目が立たない。

だから、面倒だけでお願いします。
そして、最後に一言。
地獄があったら、また会おう。
そう弟に、親愛なるバルバトロス=ステノンに言ってくれ。
私は先に待っているから、兄と一緒に待っていると思うから、と。

ーー

この状況は、彼が望んだ事なのだろう。
だけれど、私が望んだことではない。
こんな行為は、手を汚すのと大して変わらない。
永続効果の封印術なんて、体にどれだけ負担がかかるか分からない。
他領土のいざこざに、これまた私のお嬢様の力が使われてる。
どんどんお嬢様が壊れていく。
美しいお嬢様が崩れていく。

私は、彼からの手紙を握りしめ、封印術が成功する様子を見ていた。
お嬢様の涙を、
バルバトロスの絶叫を、

ただの使用人のメノウ、
主人の足枷にしかなっていないダメな使用人である私は、
殺した相手の手紙を、握りしめるしかできなかった。

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