66 / 68
3章 政略と征略
64.揺れる心
しおりを挟む
回収された先は、軍用車のような無骨な車的な乗り物だった。
これまでの馬車的なものと比べ、随分近代化が進んでいる。
ルパインが運転(ちゃんとハンドルもある)、
私、アルベルト、ヘーゲルの三人が荷台のようなスペースに腰を下ろす。
ちなみ、リヒーとメノウは足元に拘束されて転がっている。
二人とも披露とダメージのせいか、眠っている。
「おい、どうして僕のところの第2種特殊馬車を使用してる!これは他が知らない機密技術だぞ!」
「秘密にしておく意味がない。どうせ技術がなければすぐには作れない。先に数を揃えてしまえば、真似されたところで大事ない」
背後を見れば、同じような車がいくつも走っている。
黒づくめの人たちが運転している。
私の屋敷をぼろぼろにした、憎い奴らが。
……この角度ならば、魔法を使って殲滅できるかもしれない。
幸い、身内は手元に転がっている。
ルパインは運転中だから背後から狙い放題、
ヘーゲルは手が届く程の距離。
いつでも、やれる。
やれる、
殺れる。
けど、彼らの目的はまだきちんと聞けていない。
私を奪いにきた。
やり方はもっと丁寧かつロマンティックなものが希望だけれど、
ドラマチックかつ情熱的ではある。
つまるところ、私の心は動いているのだ。
目の前の美青年、
エーテルザット家現当主、
ヘーゲル=エーテルザットに。
「どうした?我の顔に何かついているのか?」
「いえ、何んでもないです」
そうか、と短く答える。
凛々しい雰囲気、
ぶっきらぼうな感じもワイルドで素敵である。
「あ、でも一つ確認したいことがーー」
「なんだ、言ってみろ」
「何故、私を婚約者に?それもこんな乱暴な方法で。浅学で申し訳ありませんが、名家の方、それも序列2位のエーテルザット家ならば、もっと穏便な方法があったのではないでしょうか」
「こいつらは僕たちと文化が違う。平和的解決なんてしない。仮にできたとしても、やらない。そういう奴らだ」
私の問いに、縛られたままのアルベルトが口を開いた。
その言葉に、ヘーゲルはくすりと笑いつつも同意した。
「まあ、そいつの言う通りだ。我の統べるエーテルザットは強さ、より正しくは暴力が支配する国、それ故に交渉ごとに長けてる人材がいないし、そもそもやりたがらない」
シニカルに笑いながら、言葉を続ける。
「戦うことができるなら、戦って解決すべき。それが我等の基本ルール。口や筆で戦うなど、卑怯かつ臆病者のやることだ」
なるほど、
エーテルザット領は暴力が支配する世紀末な地域ということか。
ならば、尚更私を婚約者にする理由が分からない。
象徴、と言っていた気がするけど、どんな意味なのだろう。
力あるものは美しい女も手に入る、
だから。
競い、
戦い、
勝利し、
その先に望むものを叶えろ。
そんなメッセージを領民に与えたいということだろうか。
これまでの馬車的なものと比べ、随分近代化が進んでいる。
ルパインが運転(ちゃんとハンドルもある)、
私、アルベルト、ヘーゲルの三人が荷台のようなスペースに腰を下ろす。
ちなみ、リヒーとメノウは足元に拘束されて転がっている。
二人とも披露とダメージのせいか、眠っている。
「おい、どうして僕のところの第2種特殊馬車を使用してる!これは他が知らない機密技術だぞ!」
「秘密にしておく意味がない。どうせ技術がなければすぐには作れない。先に数を揃えてしまえば、真似されたところで大事ない」
背後を見れば、同じような車がいくつも走っている。
黒づくめの人たちが運転している。
私の屋敷をぼろぼろにした、憎い奴らが。
……この角度ならば、魔法を使って殲滅できるかもしれない。
幸い、身内は手元に転がっている。
ルパインは運転中だから背後から狙い放題、
ヘーゲルは手が届く程の距離。
いつでも、やれる。
やれる、
殺れる。
けど、彼らの目的はまだきちんと聞けていない。
私を奪いにきた。
やり方はもっと丁寧かつロマンティックなものが希望だけれど、
ドラマチックかつ情熱的ではある。
つまるところ、私の心は動いているのだ。
目の前の美青年、
エーテルザット家現当主、
ヘーゲル=エーテルザットに。
「どうした?我の顔に何かついているのか?」
「いえ、何んでもないです」
そうか、と短く答える。
凛々しい雰囲気、
ぶっきらぼうな感じもワイルドで素敵である。
「あ、でも一つ確認したいことがーー」
「なんだ、言ってみろ」
「何故、私を婚約者に?それもこんな乱暴な方法で。浅学で申し訳ありませんが、名家の方、それも序列2位のエーテルザット家ならば、もっと穏便な方法があったのではないでしょうか」
「こいつらは僕たちと文化が違う。平和的解決なんてしない。仮にできたとしても、やらない。そういう奴らだ」
私の問いに、縛られたままのアルベルトが口を開いた。
その言葉に、ヘーゲルはくすりと笑いつつも同意した。
「まあ、そいつの言う通りだ。我の統べるエーテルザットは強さ、より正しくは暴力が支配する国、それ故に交渉ごとに長けてる人材がいないし、そもそもやりたがらない」
シニカルに笑いながら、言葉を続ける。
「戦うことができるなら、戦って解決すべき。それが我等の基本ルール。口や筆で戦うなど、卑怯かつ臆病者のやることだ」
なるほど、
エーテルザット領は暴力が支配する世紀末な地域ということか。
ならば、尚更私を婚約者にする理由が分からない。
象徴、と言っていた気がするけど、どんな意味なのだろう。
力あるものは美しい女も手に入る、
だから。
競い、
戦い、
勝利し、
その先に望むものを叶えろ。
そんなメッセージを領民に与えたいということだろうか。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
460
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる