追放された悪役令嬢は残念領主を導きます

くわっと

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一章

3.諦観の悪役令嬢

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パトリシアは半ば諦めていた。
当初は、残念貴族アンドレア・エーテルザットを自身の好みーー否、民草の尊敬を集める貴族にすべく奮闘していた。
自身との理想的な結婚生活を餌に、様々な理由をつけては彼に変化を要求した。
しかし、彼は変わらなかった。
欠片も変わらなかった。
完全なる現状維持、
変わりなき停滞。

彼自身、婚約の取り決めの際に交わした言葉があった。
だが、その言葉の意味は一日と持たずに消えた。
その時の気持ちに、嘘はなかったのだろう。
その時の言葉に、偽りはなかったのだろう。


今の彼にはその気持ちはない。
時間をかけて、
苦痛に耐えて、
失敗する危険を超えて。
その末に手に入る、私との理想の結婚生活生活よりも。
一瞬で手に入る美味なるものが優ってしまうのだ。

それでも、パトリシアは頑張った。
頑張っていた、つもりだった。
それはそれは努力した。
したつもりだった。
一度は時の人となったあの女を破滅寸前まで追いやったことがある程の策士、
合法の範囲内でも使える十分に策は練れる。
そのつもりだった。

たが、そのをーー否、
軽々と飛び越えるーーいや、踏み壊すのがアンドレア・エーテルザットという男だった。

彼の怠惰はパトリシアの想像を超えていた。
認識の外の存在。
策の想定範囲外。
故に、効果のほどは低い。
というより、効果がなかった。

『私と関係を結びたいなら、食事の回数を減らしてください』

『私と一緒のベットで眠りたいなら、その見た目を直してください』

『私と外を出歩きたいなら、食べ物を片手に歩くのをやめてください』

彼女の言葉は、基本的に彼の行動を制限するものばかり。
まるで、親が子を口煩くしつけるように。時の悪役令嬢ともあろう女がなんたる零落ぶりか。

「何が策だ、馬鹿馬鹿しい」
策と呼べるような、小洒落たものではない。
ただの注意に過ぎない。
それも、非効率かつ非合理的な。

パトリシア自身も、変われていなかったのかもしれない。
判決を言い渡されたあの時から、時間を止めてしまっていたのかもしれない。
まず、変わるべきは、自身なのかもしれない。
ギュッと手に力を込め、自身の愚かさを振り返る。

私の何がいけないのか、
私は何をしてきたのか。

かつての自身の行動は全て、他者を不幸に落として入れる前提。
幸福の追求ではなく、自身以外の不幸な追求。

そこで、彼女はふと気づく。

「私、誰かの幸せを心から願ったこと、あったのでしょうか?」

策の方向性の違い。
獣をしつけるときは、痛みだけではいけない。
対象がとれる選択肢を制限し、どれを選んでも目的の結果に至るよう誘導する。
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