4 / 51
一章
3.諦観の悪役令嬢
しおりを挟む
パトリシアは半ば諦めていた。
当初は、残念貴族アンドレア・エーテルザットを自身の好みーー否、民草の尊敬を集める貴族にすべく奮闘していた。
自身との理想的な結婚生活を餌に、様々な理由をつけては彼に変化を要求した。
しかし、彼は変わらなかった。
欠片も変わらなかった。
完全なる現状維持、
変わりなき停滞。
彼自身、婚約の取り決めの際に交わした言葉があった。
だが、その言葉の意味は一日と持たずに消えた。
その時の気持ちに、嘘はなかったのだろう。
その時の言葉に、偽りはなかったのだろう。
あくまで、その瞬間は
今の彼にはその気持ちはない。
時間をかけて、
苦痛に耐えて、
失敗する危険を超えて。
その末に手に入る、私との理想の結婚生活生活よりも。
一瞬で手に入る美味なるものが優ってしまうのだ。
それでも、パトリシアは頑張った。
頑張っていた、つもりだった。
それはそれは努力した。
したつもりだった。
一度は時の人となったあの女を破滅寸前まで追いやったことがある程の策士、
合法の範囲内でも使える十分に策は練れる。
そのつもりだった。
たが、その策をーー否、柵を
軽々と飛び越えるーーいや、踏み壊すのがアンドレア・エーテルザットという男だった。
彼の怠惰はパトリシアの想像を超えていた。
認識の外の存在。
策の想定範囲外。
故に、効果のほどは低い。
というより、効果がなかった。
『私と関係を結びたいなら、食事の回数を減らしてください』
『私と一緒のベットで眠りたいなら、その見た目を直してください』
『私と外を出歩きたいなら、食べ物を片手に歩くのをやめてください』
彼女の言葉は、基本的に彼の行動を制限するものばかり。
まるで、親が子を口煩くしつけるように。時の悪役令嬢ともあろう女がなんたる零落ぶりか。
「何が策だ、馬鹿馬鹿しい」
策と呼べるような、小洒落たものではない。
ただの注意に過ぎない。
それも、非効率かつ非合理的な。
パトリシア自身も、変われていなかったのかもしれない。
判決を言い渡されたあの時から、時間を止めてしまっていたのかもしれない。
まず、変わるべきは、自身なのかもしれない。
ギュッと手に力を込め、自身の愚かさを振り返る。
私の何がいけないのか、
私は何をしてきたのか。
かつての自身の行動は全て、他者を不幸に落として入れる前提。
幸福の追求ではなく、自身以外の不幸な追求。
そこで、彼女はふと気づく。
「私、誰かの幸せを心から願ったこと、あったのでしょうか?」
策の方向性の違い。
獣をしつけるときは、痛みだけではいけない。
対象がとれる選択肢を制限し、どれを選んでも目的の結果に至るよう誘導する。
当初は、残念貴族アンドレア・エーテルザットを自身の好みーー否、民草の尊敬を集める貴族にすべく奮闘していた。
自身との理想的な結婚生活を餌に、様々な理由をつけては彼に変化を要求した。
しかし、彼は変わらなかった。
欠片も変わらなかった。
完全なる現状維持、
変わりなき停滞。
彼自身、婚約の取り決めの際に交わした言葉があった。
だが、その言葉の意味は一日と持たずに消えた。
その時の気持ちに、嘘はなかったのだろう。
その時の言葉に、偽りはなかったのだろう。
あくまで、その瞬間は
今の彼にはその気持ちはない。
時間をかけて、
苦痛に耐えて、
失敗する危険を超えて。
その末に手に入る、私との理想の結婚生活生活よりも。
一瞬で手に入る美味なるものが優ってしまうのだ。
それでも、パトリシアは頑張った。
頑張っていた、つもりだった。
それはそれは努力した。
したつもりだった。
一度は時の人となったあの女を破滅寸前まで追いやったことがある程の策士、
合法の範囲内でも使える十分に策は練れる。
そのつもりだった。
たが、その策をーー否、柵を
軽々と飛び越えるーーいや、踏み壊すのがアンドレア・エーテルザットという男だった。
彼の怠惰はパトリシアの想像を超えていた。
認識の外の存在。
策の想定範囲外。
故に、効果のほどは低い。
というより、効果がなかった。
『私と関係を結びたいなら、食事の回数を減らしてください』
『私と一緒のベットで眠りたいなら、その見た目を直してください』
『私と外を出歩きたいなら、食べ物を片手に歩くのをやめてください』
彼女の言葉は、基本的に彼の行動を制限するものばかり。
まるで、親が子を口煩くしつけるように。時の悪役令嬢ともあろう女がなんたる零落ぶりか。
「何が策だ、馬鹿馬鹿しい」
策と呼べるような、小洒落たものではない。
ただの注意に過ぎない。
それも、非効率かつ非合理的な。
パトリシア自身も、変われていなかったのかもしれない。
判決を言い渡されたあの時から、時間を止めてしまっていたのかもしれない。
まず、変わるべきは、自身なのかもしれない。
ギュッと手に力を込め、自身の愚かさを振り返る。
私の何がいけないのか、
私は何をしてきたのか。
かつての自身の行動は全て、他者を不幸に落として入れる前提。
幸福の追求ではなく、自身以外の不幸な追求。
そこで、彼女はふと気づく。
「私、誰かの幸せを心から願ったこと、あったのでしょうか?」
策の方向性の違い。
獣をしつけるときは、痛みだけではいけない。
対象がとれる選択肢を制限し、どれを選んでも目的の結果に至るよう誘導する。
0
あなたにおすすめの小説
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!
ぽんちゃん
恋愛
――仕事で疲れて会えない。
十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。
記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。
そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?
皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜
百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。
「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」
ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!?
ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……?
サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います!
※他サイト様にも掲載
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる