僕の我儘な彼女

くわっと

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僕のわがままな彼女

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 僕の彼女は、我儘だ。
 それはもう、どうしようもなく。

 お気に入りのガチャガチャがなければ、人目も憚らず怒り出すし、
 彼女よりも早く眠りにつけば、舌打ちをしながら睡眠妨害に取り掛かる。

 だけれど、僕は彼女のことを愛している。
 出会った時の思い出が、
 出会った頃からの連続性で、
 愛していける。

 別に、悪いところばかりではない。
 英語は無駄に話せるし、
 料理もそれなりに美味しいし、
 潔癖症と言えるほどに綺麗好きだ。

 だから、僕も助かっているところはある。
 それなりに、
 それなりに。

「お菓子食べたいー」

 物思いに耽っていると、彼女の声が耳に届く。
 僕は笑顔で

「そうだね」

 とうなづく。

 彼女は今、働いていない。
 いや、家事はしてくれているので、その表現は正確性に欠けるかもしれないが。
 だが、金銭を稼ぐと言う意味では働いていない。
 この、現代日本において男一人の収入で生活をやりくりすると言うのは、ある程度の限界がある。
 僕の甲斐性がない、と言うところについては、なるほど批判されるべきところかもしれない。
 だけれど、世の中には勝つ側と負ける側の人間がいる。
 僕がどちらの側にいるかは、想像に任せることにしよう。

 まあ、詰まるところ、僕には金がないのだ。
 どうしようもなく、ないのだ。
 
 僕一人であれば、それはどうにでもなった。
 いざとなれば、野宿するなり、タンポポ等の野草を食べて食いつなぐ、と言う手段もある。
 負け組なりに、スキルセットは豊かな僕である。

 だけれど、
 だけれど。

 それが二人となれば問題がある。
 彼女は野宿ができないし、タンポポも食べたことがない。
 どころか、部屋の埃一つにさえ、資金と時間をかけて殺戮するほどの潔癖症だ。
 どうしようもない。

 お菓子の棚を漁りながら、預金残高と月額の出費額を思い浮かべる。
 当然のようにマイナス、
 右下がりの直線。

 破滅の日は、着実に迫っている。

「はい、どうぞ」

 僕は彼女の隣に座り、お菓子を差し出す。
 そこそこ上等な値段のするクッキーだ。
 彼女は安物はお気に召さない。
 チュールを覚えた猫のような状態だ。

「ありがとう」

 彼女は笑う。
 そして、クッキーを貪る。
 一枚、二枚、三枚と。

 僕は彼女の残りカスを食べながら思う。
 どうするのが正解か。
 彼女に何をするべきか。
 彼女と何をしていくべきか。

「美味しいね」

 彼女は笑う。
 現実を見ずに、
 僕を見て。
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