残念な聖女様が婚約破棄されましたが、従者の私がなんとかしてみせます

くわっと

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「アークランド家、イベリア=アークランドとブリジッタ家、ミハイル=ブリジッタ。この両名の婚約、現時刻をもってーー白紙とする」

 唐突に告げられるお嬢様とミハイル様の婚約破棄。
 当事者たちは別々の様相。
 一人は失意の海に溺れて、
 一人はやれやれと言うふうに静観しています。
 前者が私が仕える主人、イベリア=アークランド様。
 後者がその婚約者……だったミハイル=ブリジッタ様。
 
 因みに、独白をしている私はアリアナ=バルバシリアと申します。
 アークランド家に拾われた、没落貴族の娘でございます。
 以後、お見知りおきを。
 そんな私の反応は、と言うとお嬢様に近い落胆の感情。
 だって、不意打ちですし、いきなりですから。

 話戻しましょう。
 この婚約は、特段破談になるものではなかった筈です。
 幼い頃から決まっていた、許嫁のような関係だったのですから。
 イベリア様はもちろん、ミハイル様のことも、私は幼い頃より知っています。
 ……歳はそんなに離れていません。あくまでお姉さんのような立ち位置です。
 何事もなければ、この方々は家の決まり通りに結ばれるのだろうと思っていました。

 もちろん、許嫁であろうと他家は他家。
 四六時中一緒にいるわけではありません。
 定期的な会食程度で、それぞれがそれぞれの生活を営んでおりました。
 日常を、研鑽を、個別に。
 束ね、重ね、積んでいったーー筈でした。

「ミハイル……私の何が……いけないの?」

 涙ながらにお嬢様は言います。
 顔をぐしゃぐしゃにしながら、振り絞るように。

「……それは……その……イベリア、君がーー」

 ミハイル様は言葉を選ぶように言います。
 ただ、言い淀んでいる間に、彼の従者が割って入ります。
 あの人はーーえっと、どなたでしょうか。
 私の知らない、或いは記憶にない、ミハイル様の従者。
 目つきの悪い、背の小さい小鬼のような男。
 直感的に好きにはなれない種類の人間だと判断しました。

「ミハイル様に相応しくないからですよ」

 あの方に相応しくないのはお前だ、と言いたくなりましたが、それは売り言葉に買い言葉。
 従者が場を掻き乱してはいけません。
 相手の土俵に立ってはいけません。
 それこそ、アークランド家の名を落とす事になりかねません。

「見た目も中身も、何もかもね」

 ずずい、と彼はお嬢様に言います。
 小汚い顔を近づけて、見下すように言います。

「そ、そっ、そんなこと、言わなくてもいい、のに」

 泣きじゃくるお嬢様。
 少し可愛いです。
 ですが、これはいけません。
 私の大事なお嬢様を虐めるなんて。
 
 私が、なんとかしないといけません。
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