残念な聖女様が婚約破棄されましたが、従者の私がなんとかしてみせます

くわっと

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 けど、私の大事なお嬢様を侮蔑することは許しません、許せません。
 今度は私が間に入ります。
 小鬼の従者は怯んだように後ろに後退ります。

「ミハイル様、今回婚約破棄の件ですが、一度時間をいただけないでしょうか。お嬢様含め、私共もかなり困惑しています。正式な、確定事項とするのに、今しばらく猶予をいただけないでしょうか」

 まずは時間稼ぎです。
 時間、それは大事なもの。
 これがなくては始まりません。
 どんな壮大な計画も、時間が無ければただの空想に過ぎず。
 それ故に、私はそこから始めるのです。

「どうしてそんなことをする必要がある! ミハイル様はお忙しいのだ、そんな暇はない」

「貴方に答えを求めておりません故。ーーミハイル様、幼少期よりお嬢様と過ごした仲ではありませんか、この場での撤回までは求めません。だから、今暫く時間を、ご相談させていただくための時間をいただけないでしょうか?」

 小鬼の言葉は軽く無視します。
 決定件はミハイル様にあり、これにはありませんので。
 言葉と時間の無駄遣いは致しません。

「ーー分かった。幾らか待とう。急な破棄宣告、こちらにも負はある」

 ミハイル様は少し考える素振りを見せます。
 けど、結局はこちらの意を汲んでくださいました。
 流石はブリジッタ家の嫡男、教育が行き届いてます。

「ミハイル様!」

 小鬼が割って入ろうとします。
 邪魔くさい奴ですね。
 けれど、私が手をーーいえ、この場合は口を、ですが。
 挟む間なく、彼の主人によって話は進められます。

「ただし、待つだけだ。撤回はしない」

「はい、それは次回お会いしていただいた時で問題ありません」

「アリアナーー」

 涙目のお嬢様。
 やっぱり可愛い。
 駄目な子程可愛い、と言うのでしょうか。
 いけませんね。
 これだから我儘で怠け者な子になってしまったのかもしれません。

「はい、お嬢様は少し黙っていてくださいねー」

 今お嬢様に間に入られると、着地した筈の交渉が再度空へと羽ばたいてしまいそう。
 なので、軽くあやして終わらせてしまいましょう。
 この場では具体的かつ効果的な対策は取りがたいですから。

「それで、ミハイル様。本当のところ、婚約破棄の理由はなんなのでしょうか?」
 
 私の問いに、ミハイル様は口を開く。
 嘆息しつつ、言う。

「概ね、そこの僕の従者、ネベワテの言葉に相違ない。つまりはーー」
 
 小鬼の従者はネベワテというらしい。
 なんとも独特な名前です。
 けれど、そんな所はどうでもいいです。

 言いかけたところで、お嬢様は耳を塞ぎました。
 そして、そのまま兎の如く逃げ出した。
 悲しいのか、悔しいのか。
 辛いのか、恥ずかしいのか。
 ……多分、その全てでしょう。

「ーーああいう所も、だよ。彼女のことは嫌いではないが、怠惰で逃げ癖のある残念令嬢だ。僕の力が万能であれば、このまま婚約を継続するのも問題ないのだけどね」

 ミハイル様は言う。
 どこか投げやりに。

「僕はそこまで自分を過信する種類の人間では、ないからね」

 と。
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