虐げられた黒髪令嬢は国を滅ぼすことに決めましたとさ

くわっと

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三章 領主と領民

71.お兄様リベンジ

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「おい、どこへ行くつもりだ?」

『彼女』へ会いに行く道中、お兄様に呼び止められます。
昔ならーーフォルテシア=マーテルロの時分であれば、このコンタクトは最悪への片道切符でしたが、今はそんなことはありません。

オルコット=マーテルロにとってはただの兄弟の挨拶。
この切符では、私をどこかへ連れて行くことはできません。
お兄様のお部屋ですらも。

私は軽く一礼して、お兄様から離れます。
お兄様に会いにきたのではないのです。
待ち人は別にいるのです。

「待てよ。フォルテシア!」

お兄様は昔の名前で私を呼び止めます。
言葉だけでなく、私の体をも掴んでの静止。
少女の体に触れるには、過分な力の入れ方です。

これは、お父様からの言いつけ破り。
フォルテシアをオルコットとして扱うこと。
無用な私への暴力行為の禁止。
お父様に対して従順なお兄様らしからぬ行為です。

「離してください」

私は端的にかつ短くお願いします。
いえ、お願いと呼べるほど丁寧でも下手に出ている感じでもありませんね。
語気は少し荒く、冷たい感じだったと思います。
かつてのように、
お兄様の怒りに触れないように、
地雷原を歩くような、
そんな注意は小指の甘皮程せずに。

私のそんな態度に驚いたのか、お兄様は私を解放しました。
手を離し、何故か距離も取りました。
お兄様は、私をじっと見つめています。
その瞳から、
その表情から読み取れる感情。
疑念、
憎しみ、
不快、
不安、
緊張。
色々混ざっているようなご様子です。
それぞれに、それぞれの理由があるのでしょうけれど。

「………………」

沈黙するお兄様。
何も言葉を発しません。
何かを言いたいけれど、言えない。
そんなご様子でもあるようです。
年頃の男子というのは、難しいですね。
あるいは、言いたいことも言えないこんな世の中に、絶望じみた事を感じているのかもしれません。
その程度で絶望なんて、私にとっては片腹痛いですが。

私は再度お兄様に小さく頭を下げ「ではこれにて」とすたすたと目的地へと足を進めることにしました。
ここで時間を無駄にするのは懸命ではありません。
たとえ5分でも、1分でも、時間は時間。
有限かつ価値あるものです。
無駄遣いは、よくありません。
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