虐げられた黒髪令嬢は国を滅ぼすことに決めましたとさ

くわっと

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三章 領主と領民

77.仕立屋 オルコット=マーテルロの朝御飯

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レオリーゼさんの脱走は、予想通り翌日に発覚しました。
まあ、当然ですよね。
別段、隠匿する手段を講じている訳でもありませんし。
食事を持ってくる方がいるのですから、確実に1日3回ーーいえ、1回はあの場所を誰かが訪れるのですから。

その話題は、朝のお食事会でも話題になりました。

「お前を誘拐した罪人の片割れが脱走したらしいな」

お父様は、事もなげに、興味がないような口ぶりで言葉にしました。

「そうみたいですね。私も今朝ペントレイアさんから聞いて、初めて知りました」

私は演技過剰にならないよう、注意しつつ、普通に嘘をつきます。

「まだこのお屋敷内に潜んでいるのかもしれません。私はあの方に一度殺されかけていますし、まだ命を狙っているのかもしれません。あの方のお仲間が亡くなったのは私のせいと思っているかもしれませんし、困ったものです」

ふんわりと疑惑の種を投げ込みます。
既に彼女はこのお屋敷内にはいないのは明白ですけれど。
だって、私の案内で外まで逃したのですから。

……ですが、彼女の意思でここに潜んでいるのなら、話は別ですけれど。

「そういえば、オルコット。昨日はどこへ行こうとしていたんだ?」

「どこに?いつものようにお屋敷内を探検していただけですよ。お兄様と違って、私は自由の身になって日が浅いのです。お屋敷内くらい、自由気ままにお散歩するぐらい許して欲しいです」

「お前があの罪人を逃したんじゃあないのか?」

疑念の言葉をお兄様は向けます。
きっと、私の行動から犯行を察知したーーという訳ではなく、単なる当てずっぽうなのでしょう。
お兄様は、賢くありません。
ただ名家の長男に生まれ、
ただ名家の長男として生きている。
何も特別でない、ただの人間なのですから。

「自分を殺しかけたーー自身に殺意を持っている人間を逃す理由とはなんでしょうか?」

「そ、それは……」

「あの人を逃がす事で、私も同じく罪人となります。そうすれば、またあの時に逆戻りです。私は、今のオルコット=マーテルであることを楽しんでいます。それをみすみす捨てる愚行は致しません」

「だけど、いや、だがーー」

「私が罪人となり、かつての扱いになれば、得をするのは寧ろ誰でしょうか?自由に虐げられる存在、ストレス解消相手を見つけられるのは、誰でしょうか?」

空気が固まり、周囲の温度が下がります。
数瞬の沈黙。

「理由があるのは、誰なのでしょうか?」

犯人自ら、犯人探し。
真実を知っているのは、私だけ。
実行犯である、私だけです。
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