虐げられた黒髪令嬢は国を滅ぼすことに決めましたとさ

くわっと

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四章 呪いと反乱

82.煽って、燃やして

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「俺が、父上の、代わりを?」

「そうです、お兄様。今こそ、自身がマーテルロ家を統治するに値する人間であると証明する絶好の機会です」

私は心にもないことを言います。
励ますように、偽りの気持ちを言います。

「何を馬鹿な。俺には無理だ。父上のように、なんて。とても無理だ」

「でも、やるしかありません。私は年端もいかない少女の身。マーテルロ家を統治する資格を持つ人間、というのはお兄様しかいないのです」

「だ、だがーー」

まだお兄様は踏み出せないご様子です。
どうしてここまでヘタレに育ってしまったのでしょうか。
いえ、違いますね。
私の言い方が悪いのでしょう。
慣れない言葉、
慣れない行動、
未熟故に、期待する効果が薄いの仕方がありません。

こうした『どうでもいい』タイミングで、慣れていきましょう。
場数を踏んで、練度を上げていきましょう。
大事な時に、上手くできるように。
必要な時に、失敗しないように。

「じゃあ、どうしましょうか?分家の方でも探し出して、引っ張り出して、統治を任せるのですか?」

「そんな馬鹿なっ!ありえない!父上の築いた統治を他の連中に奪われるなどあってはならない」

「では、忠節を尽くして頂いている、使用人の誰かに任せましょうか?例えばーー」

私は言いながら、視点をゆったりとゆっくりとずらします。
隣で動揺している彼の方へと。

「ペントレイアさんとか」

「え?……私、ですか?」

私は彼の疑問符ににっこりと笑顔で答えます。

「はい、貴方です。貴方の能力、人柄は毎日尽くして頂いて理解しています。元々はお父様直属の使用人だった経験もありますし、お兄様が分家の方が嫌というのであれば、彼に任せるのが適任かな、と思います」

火種をぶち込みます。
燻っている人間関係。
それをきちんと、可視化できるように燃やします。

燃えて、
燃えて、
全てを灰燼に。

それはきっと楽しいこと。
国を滅ぼす片手間に、
国が滅びかけているこの合間に、
私の暇と心の空虚を満たすには、
程よい道楽なのかもしれません。
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