25の夜

ケィ

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25の扉

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  25歳の誕生日を迎えた夜、田中悠斗はアパートの狭い部屋で缶チューハイを握りつぶしていた。
  東京の雑居ビルに挟まれた部屋の窓からは、街の喧騒が遠く聞こえる。25歳。節目の年齢のはずなのに、悠斗の心は重かった。
  何か、足りない気がする。悠斗の人生は、なぜか「25」という数字に縁があった。小学校のサッカーチームで背番号25番だった。中学のバスケ部では、25点差で負けた試合が忘れられない。大学受験では25点足りず志望校に落ち、社会人になってからは「25歳までに何かでかいことをやる」と心に決めていた。でも、現実は違う。IT企業の平社員、残業続きの毎日、彼女なし、貯金ほぼゼロ。
25歳になった今、夢も目標もぼやけていた。
「25って、なんかなぁ…中途半端だよな」と、悠斗はつぶやき、チューハイを一口飲んだ。ふと目に入ったのは、机の引き出しにしまっていた古いノート。18歳、大学受験の頃に書いた日記だ。懐かしさからページをめくると、乱暴な字でこう書かれていた。
「25歳の俺へ。デカいことやってるか? 夢、掴んだか?」
 悠斗は鼻で笑った。「デカいこと? んなわけねえだろ。」でも、胸の奥がざわついた。18歳の自分は、25歳の自分に何を期待していたんだ?
その夜、奇妙なことが起きた。部屋の電気を消した瞬間、暗闇の隅に小さな光が浮かんだ。最初はスマホの光かと思ったが、光は数字の「25」を形作り、揺らめきながら悠斗に語りかけてきた。
「悠斗、25番目の扉を開く準備はできてるか?」
「は? 何だよ、それ」と悠斗は目をこすった。幻覚か、酔ったか。でも、光は消えず、声は続いた。
「25は始まりの数字だ。お前の人生の25番目の扉が、今、開こうとしてる。選ぶのはお前だ。入るか、逃げるか」
悠斗は動揺した。扉? 始まり? バカバカしいと思いつつ、その声には妙な力が宿っていた。彼は吸い寄せられるように光に手を伸ばした。瞬間、視界が真っ白になり、気がつけば見知らぬ空間に立っていた。
そこは、悠斗の記憶の断片が集まったような場所だった。子供の頃に描いた未来の絵、初めての告白で振られた瞬間、会社で上司に怒鳴られた夜。それらが、25の扉として並んでいる。1番目の扉は幼い頃の記憶、15番目は初恋、20番目は大学での挫折。そして、25番目の扉は真っ白で、何も書かれていない。
「これがお前の未来の扉だ」と声が響く。「25歳の今、お前が何を選ぶかで、この扉の中身が決まる」
悠斗は立ち尽くした。自分で未来を選ぶなんて、重すぎる。でも、18歳の自分が書いた「デカいことやってるか?」という言葉が頭を離れない。親や上司や世間の期待に縛られ、どこかで自分を諦めていた。でも、今、この瞬間だけは、自分で選べる気がした。
悠斗は深呼吸し、25番目の扉に手を伸ばした。ドアノブを握る瞬間、心臓がバクバクと鳴った。開けた先には何がある? 新しい挑戦、成功、失敗、自由? わからない。でも、25歳の今、初めて自分の足で踏み出す覚悟ができた。
扉が開く。光が溢れ、悠斗を包み込んだ。
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