25の夜

ケィ

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扉の先

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田中悠斗は25番目の扉を開いた瞬間、眩い光に飲み込まれた。目を開けると、そこは見慣れた東京の街角のはずだった――だが、どこか違う。ネオンの光が異様に鋭く、空気には緊張感が漂っている。まるで現実と夢が交錯するような世界だ。
「よう、田中悠斗。遅かったな」
低く落ち着いた声が響いた。悠斗が振り返ると、そこには見知らぬ男が立っていた。20代後半くらい、黒いレザージャケットに鋭い目つき。髪は少し乱れ、口元には軽い笑みが浮かんでいる。男の左手の薬指には、銀のリングに「25」と刻まれたものが光っていた。
「誰だよ、お前?」悠斗は身構えた。だが、男は軽く手を振って笑う。
「俺はカイト。25番目の扉の案内人、ってとこかな。お前が選んだ未来を、ちょっと手伝ってやるよ」
「案内人? 何だそれ。ていうか、ここどこだよ!」悠斗の声は焦りに震えた。カイトは肩をすくめ、ポケットから何かを取り出した。小さな金属製のデバイスで、表面には「25」の文字が刻まれている。
「これが『鍵』だ。25番目の扉の先には、お前の可能性が詰まってる。ただし、欲しい未来を手に入れるには、試練を乗り越えなきゃいけない」
「試練?」悠斗が聞き返す前に、背後で爆音が響いた。振り返ると、黒い影のような人形たちが街角から這い出てくる。無機質な目、異様に長い手足。まるで悪夢から抜け出した怪物だ。
「動け、悠斗!」カイトが叫び、デバイスを投げつけた。悠斗が反射的に受け取ると、デバイスは光を放ち、彼の手の中で短剣の形に変わった。刃には「25」の刻印。
「戦うしかない。25の試練をクリアしろ!」カイトはそう言うと、自身のデバイスを剣に変え、影に飛び込んだ。動きは鋭く、まるで戦いに慣れた戦士のようだ。悠斗は呆然としながらも、迫りくる影に短剣を構えた。心臓がバクバク鳴る。戦う? 俺が? でも、カイトの背中を見ていると、なぜか逃げられない気がした。
戦いは熾烈だった。影は素早く、攻撃をかわすたびに悠斗の体力を奪った。だが、カイトが隣で戦う姿に、悠斗は不思議な力を感じた。カイトの剣さばきは無駄がなく、時折振り返って「そこだ、悠斗!」と叫ぶ声に、悠斗は自分でも驚くほど動けた。25番目の影を倒した瞬間、辺りは静寂に包まれた。
「やるじゃん、新人」カイトが息を切らしながら笑った。額に汗が光り、いつもより人間らしい表情に見えた。悠斗はなぜかドキッとした。カイトの目が、まるで自分を試すように、でもどこか優しく見つめている。
「な、なんだよ、その目は」と悠斗は照れ隠しにつぶやいた。カイトは一瞬目を細め、近づいてきた。
「お前、25歳になった今、何が欲しい? 夢か? 金か? それとも…」カイトは言葉を切り、悠斗の頬に軽く触れた。「何か、もっと深いものか?」
悠斗の心臓が跳ねた。カイトの指先は冷たく、でもその距離に熱を感じた。こんな気持ち、初めてだ。男に、こんな風に心をかき乱されるなんて。18歳の頃、初恋の女の子に告白して振られた記憶が蘇る。あの時も、こんな風に胸が苦しかった。でも、これは違う。もっと、複雑で、深い。
「俺…わかんねえよ。25歳になって、何か変わりたかった。でも、何をどうすればいいのか…」悠斗は目を逸らし、言葉を絞り出した。
カイトは静かに笑い、デバイスを悠斗の手に握らせた。「なら、俺と一緒に探せよ。25番目の扉の先には、お前の答えがある。俺も…お前と見つけたい」
その言葉に、悠斗はカイトの目を見返した。そこには、戦士の鋭さとは裏腹な、どこか脆い光があった。カイトもまた、25という数字に縛られた人間なのかもしれない。
突然、地面が揺れ、新たな影が現れた。今度は巨大で、まるで街全体を飲み込むような威圧感。「行くぞ、悠斗!」カイトが叫び、悠斗の手を握った。その瞬間、悠斗は感じた――この戦い、この出会いが、自分の25歳を変える何かになる。
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