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「伝書バト」が完成したことに喜んだ私は、習ったことをすぐ実践したがる子供のように、誰かに手紙を出したいと思った。まずは父と母に、育ててくれてありがとうと書いた内容の手紙を送る。私という記憶が混じったせいで、純粋な「ユーフィ」ではなくなった「私」を愛してくれてありがとう。
次に、お世話になった乳母と召使たちに、短く「いつもありがとう」的な内容の鳩を送る。便箋の形をハートにして皆をちょっとびっくりさせた。とても喜んでくれたのでウキウキしながら次の手紙のことを考えた。
次はどうしようかと首を傾げた。
身の回りの人には全員送ってしまったから、手紙を書く相手が他に思いつかない。
悩んだ私は、「じゃあ、知らない人に鳩を送ってみよう」と便箋に文字を書き始めた。ちょうど、前世でも趣味だった執筆活動を再開し、誰かに作品を読んで欲しい欲が出てきたところだった。知り合いに見せるのは恥ずかしくて、前世ならネットの投稿サイトがあったけど、今世はネットワーク環境はまったくない。その代替案として無差別に手紙を送ることを考えた。
私は短編の童話を便箋に書き、「伝書バト」で顔の知らない誰かへ届くように念じた。本来特定の相手だけに使える魔法だから、成功するかドキドキしながら鳩を飛ばした。海へメッセージボトルを投げ入れるときのようだ。波に打ち返され戻ってくるように、魔法が失敗して身内に拾われてたら恥ずかしいなと思いながら、毎晩一羽ずつ飛ばしていった。
ある日、私のもとに「伝書バト」が来た。やっぱり魔法が失敗して自分のもとに手紙が返ってきたしまったのか、とションボリしながら受け取ると、鳩は見たことのない封筒の形になる。蝋も私が使っているものと違う。私は驚きながら封を開け、手紙を取り出した。
『初めまして。物語を読みました。とても面白かったです。』
手紙の内容はそれだけだった。
私は驚いて、もう一度文章を読み返した。内容は変わらず、私の物語を褒めてくれるものだった。手紙を持つ手が震え、力が入りそうになる指を緩める。
大きな紙に26文字で綴られた感想メール。
舞い上がるほど私は嬉しかった。
私はその手紙を持ちながら飛んだり跳ねたり、くるくる回って興奮した。こんな風に感想がもらえると思っていなかった。初めてもらった感想メッセージ。一体誰が書いてくれたのだろう。喜びがあふれて、体がしっちゃかめっちゃかに動く。たった3文を何度も読み返し、指でなぞる。とうとうじっとしているのに耐えきれなくなり、便箋を引き出しに大事にしまってから、木刀を引っ掴んで中庭に出た。文字を書く人間のわりには脳筋な行動だったが、この状態は筆がとれるほど思考が動いていなかった。型をなぞり、しばらく無心で打ち込むと、頭が冷えてきた。腕を下ろし、深呼吸を行う。
「よし、返信を書こう」
廊下をバタバタと行ったり来たりする私に使用人たちが目を白黒させていたが、私は気にせず自室に飛び込んだ。すぐさま椅子につき、机に上に便箋を広げた。
『感想ありがとうございました。このような形で頂けるなんて思っていなかったので驚きました。とてもうれしかったです。おもわず舞い踊るほど興奮してしまい、何度も読み返しました。少し涙が出ました。
よかったら、また物語を送ってもいいですか?感想はいりません。面白いと言ってくれた貴方に物語を送りたいのです。返信お待ちしています』
読み返して、う~んと唸り、紙を丸めた。新しい紙を取り出して書き直す。
頭を抱えて1日中悩んだが、どう返信すれは自分の気持ちを失礼のないよう送れるのか分からず、そのうちゲシュタルト崩壊してきた。ぐるぐる目が回り、自分がどんな文章を書いているのか分からない。
『感想ありがとうございました。とてもうれしかったです。良かったら、また手紙を送ってもいいですか?」
書きあがったそれは、相手と同じ3文だけだった。
次に、お世話になった乳母と召使たちに、短く「いつもありがとう」的な内容の鳩を送る。便箋の形をハートにして皆をちょっとびっくりさせた。とても喜んでくれたのでウキウキしながら次の手紙のことを考えた。
次はどうしようかと首を傾げた。
身の回りの人には全員送ってしまったから、手紙を書く相手が他に思いつかない。
悩んだ私は、「じゃあ、知らない人に鳩を送ってみよう」と便箋に文字を書き始めた。ちょうど、前世でも趣味だった執筆活動を再開し、誰かに作品を読んで欲しい欲が出てきたところだった。知り合いに見せるのは恥ずかしくて、前世ならネットの投稿サイトがあったけど、今世はネットワーク環境はまったくない。その代替案として無差別に手紙を送ることを考えた。
私は短編の童話を便箋に書き、「伝書バト」で顔の知らない誰かへ届くように念じた。本来特定の相手だけに使える魔法だから、成功するかドキドキしながら鳩を飛ばした。海へメッセージボトルを投げ入れるときのようだ。波に打ち返され戻ってくるように、魔法が失敗して身内に拾われてたら恥ずかしいなと思いながら、毎晩一羽ずつ飛ばしていった。
ある日、私のもとに「伝書バト」が来た。やっぱり魔法が失敗して自分のもとに手紙が返ってきたしまったのか、とションボリしながら受け取ると、鳩は見たことのない封筒の形になる。蝋も私が使っているものと違う。私は驚きながら封を開け、手紙を取り出した。
『初めまして。物語を読みました。とても面白かったです。』
手紙の内容はそれだけだった。
私は驚いて、もう一度文章を読み返した。内容は変わらず、私の物語を褒めてくれるものだった。手紙を持つ手が震え、力が入りそうになる指を緩める。
大きな紙に26文字で綴られた感想メール。
舞い上がるほど私は嬉しかった。
私はその手紙を持ちながら飛んだり跳ねたり、くるくる回って興奮した。こんな風に感想がもらえると思っていなかった。初めてもらった感想メッセージ。一体誰が書いてくれたのだろう。喜びがあふれて、体がしっちゃかめっちゃかに動く。たった3文を何度も読み返し、指でなぞる。とうとうじっとしているのに耐えきれなくなり、便箋を引き出しに大事にしまってから、木刀を引っ掴んで中庭に出た。文字を書く人間のわりには脳筋な行動だったが、この状態は筆がとれるほど思考が動いていなかった。型をなぞり、しばらく無心で打ち込むと、頭が冷えてきた。腕を下ろし、深呼吸を行う。
「よし、返信を書こう」
廊下をバタバタと行ったり来たりする私に使用人たちが目を白黒させていたが、私は気にせず自室に飛び込んだ。すぐさま椅子につき、机に上に便箋を広げた。
『感想ありがとうございました。このような形で頂けるなんて思っていなかったので驚きました。とてもうれしかったです。おもわず舞い踊るほど興奮してしまい、何度も読み返しました。少し涙が出ました。
よかったら、また物語を送ってもいいですか?感想はいりません。面白いと言ってくれた貴方に物語を送りたいのです。返信お待ちしています』
読み返して、う~んと唸り、紙を丸めた。新しい紙を取り出して書き直す。
頭を抱えて1日中悩んだが、どう返信すれは自分の気持ちを失礼のないよう送れるのか分からず、そのうちゲシュタルト崩壊してきた。ぐるぐる目が回り、自分がどんな文章を書いているのか分からない。
『感想ありがとうございました。とてもうれしかったです。良かったら、また手紙を送ってもいいですか?」
書きあがったそれは、相手と同じ3文だけだった。
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