高校デビューに失敗した私、なぜかクラスの3大美少女に懐かれる。

寄り目のねこ

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見ざる聞かざる言わざる

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「皆、絶対私のこと変な目で見てたよね……」

昼休憩。喫煙スペースで一人で遠い目をする少女が一人。入学して2週間でできた女子グループで私は浮きを感じ、その居たたまれなさから逃亡してきたのだ。牢屋から脱獄してきた囚人みたいに誰かに見られている気がしてならない。ああー、これで戻ったらどんな目で見られるんだろ……。後のことを考えると胃がキリキリして痛い。

陰キャには2つの種類が存在する。一つは自分に没頭してるタイプで、もう一つは自意識過剰なタイプだ。何かと自分のことじゃないかと考えてしまい、笑っている人間が居ようものなら、自分のことを嘲笑しているんじゃないかと勘違いする種族がこれにあたる。ちなみに私は後者。全員敵。それが生まれてこの方16年、陰キャ生活を極めし人間のモットーである。かかってこい、全員めった刺しにしてやるー!あ、ごめんなさい、殺さないで。

とまあだからこそ色々と考えてしまうわけなんです。。。今の発言で空気悪くしてないかなーとか。相槌のタイミング、ミスってないかなーとか。

でも今だけは忘れられる。入学して2週間。唯一見つけたお気に入りのスポットでだったら、ちっぽけなことのように思える。お日様はあんなに大きいのに、私はどんな小さなことで悩んでたんだろーって。
あー、今日も平和だな。お天道様、いつもありがとうございますぅー!

そうして太陽に媚びていた矢先――

「ボクと付き合ってくれ」

ん?こ、こここ、こくはくぅー!?
いやまあ確かにここなら誰かに見られる心配もないので告白にはうってつけではあるけど。
よくも、よくも私の平穏を乱しやがって……。
くそぅ。
けしからん!
誰だ、出てこい!ぶん殴ってやるー!
私が今居る喫煙スペースからは男子の姿しか見えない。
美人寄りのイケメン男子で、男の子にしては少し長い髪だ。
ん、いやあの外見、どこかで……。あ、3年のバスケ部の先輩だ。イケメンでスポーツ万能。バスケで大活躍。女子からはモテモテ。って誰かが言ってた!(人づて)
よ、陽キャだ!眩しいぃぃ……。
駄目だ、ぶん殴れない。というか、むしろ陽キャ特有のオラオラオーラで骨の髄まで溶かされそう。
そんな人間が告白しているのだ、女子のほうも、きっとそちらも超がつくほど可愛くて一軍女子で、青春を謳歌してる陽キャなんだろう!

「ごめんなさい、今はそういうのに興味なくって……」

さ、桜凪さんっ!?
私はこの声を知っている。大自然のせせらぎみたいな、透き通る声なのに、どこか冷たいこの声を……。
え、なんで大人しそうな桜凪さんがバスケ部のエースに目をつけられてるの……?
うーん、謎は深まるばかりだ。
喫煙スペースから身を乗り出して二人を観察する。

「じゃあ、友だちからはじめないか?」
「ごめんなさい無理です」

そして案の定というか、女子のほうは緑色の髪にサクラの花飾りをつけていて、やっぱり桜凪さんだった。そして先輩が非常に執拗でいらっしゃいます。。。
というか、私これ盗み聞きになるのでは……?
バレたら一触即発……バスケ部の先輩はフラれた事実を隠ぺいするために私をバスケットボールとかいう凶器で「次はお前がボールになる番だ」って言いながらりにきて、桜凪さんに関しては特に恨みはなさそうだけど、なんだろ、家族ごと殺害予告とかされそうだ。
うっ。
これが究極の板挟み状態かっ……!
胃がキリキリして痛い。
一刻も早くこの場から逃げ出したい。
というかなんだよ、クラスで居たたまれないからここに来たのに、追い詰められた先でも居場所を失うとか……。どんだけ居場所ないんだよ伏見あかね。
もはや自分を憐れむことしかできない私は、せめて彼らにバレないように―――

「「……」」

二つの真っ黒な目ん玉がこちらを捉えた。鋭い眼光が刺さる。

「あ……」

三猿の言わ猿みたいに口に両手を当てるも後の祭り。ご先祖様のお猿さんは偉大だったんだなーなんて現実逃避していても情報は頭に入ってくる。

(え……今絶対桜凪さんと目合ったよね!?)

あー終わった。

お母さん今までありがとう。今日のお弁当も美味しかったよ。あといつも靴下を裏返しで洗濯機に入れてごめんなさい。途中から洗われた靴下はそのまま帰ってきて、きっとお母さんも表に返すの面倒くさくなっちゃったんだよね。来世はちゃんとするから……!

品定めするような、獲物をじっとり舐めまわすような目で桜凪さんに見つめられて、もう私のメンタルはぐっちゃぐちゃにかき乱されたお豆腐さん。私を見つめても何もないですよ!!

「伏見さん、ちょっとこちらに来てもらって構わないかしら?」
「あっはい」

超・展・開!

なんだろう、劇で木の枝として出演していた私に急に一番のスポットライトが当たるみたいな、そんな妙な感覚を覚える。

大船の前で小舟は為す術もないように、桜凪さんの前では私――伏見あかねは無力だ。とりあえず借りてきた猫みたいに大人しくして波風を立てないようにしよう……。

彼女のほうに向かう途中すれ違った先輩に睨まれたような気がしたけど、どの道彼によって私はバスケットボールの仲間入りを果たす。今更睨まれることくらい、どうでもよかった。あとすごい良い匂いがした。これはほんとにどうでもいい情報だけれど。。。

桜凪さんの隣に立って体感数十秒。彼女は私の腕に突然抱き着いて、そしてとんでもないことを言い放った。



ハイハイソーデスネー。


は……?
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