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第8話 あの子の目
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ハルスは宿に戻り、ヨルンとテッサは丘の野営地で交代制の見張りに就いている。集落の外れ、畑と樹海の境にある石塀のところに、おれたちは並んで座っていた。何度も来た場所だ。ドルクが査定の結果を伝えた場所であり、おれが初めて処理命令の重さを飲み込んだ場所でもある。
焚き火は起こさなかった。ドルクが「いらん」と言った。明かりは目立つ。もっとも、誰に見つかるというわけでもない。ラステンの人々は、おれたちが夜番をしていることすら知らないのだから。
闇の中で、集落の灯りだけが見えていた。蜂蜜色の光が、窓という窓に点《とも》っている。あの光の一つ一つの下で、人が眠りに就こうとしている。明日がある、と信じて。
明後日の朝には——期限が来る。
三十六時間を切っていた。昨日の朝は四十八時間だった。数字が減るたびに、おれの中で何かが軋《きし》む。
ドルクは石塀に背を預けて、脚を投げ出していた。手元に短い枝を持っている。何をするでもなく、指の間で転がしている。暗くて表情は見えない。だが気配でわかった。今夜のドルクの沈黙には、何かが底に溜まっていた。
虫の声がしていた。樹海のほうから、途切れることなく。
「エルト」
ドルクの声は低かった。
「ん」
「おまえに——もう一つ、話しておくことがある」
おれは隣を見た。暗がりの中で、ドルクの横顔が星明かりにかすかに浮かんでいた。目は集落の灯りを見ている。いつもの目だ。だが「もう一つ」という言葉が、空気を変えた。
七年間の偽造。四百人。あれ以上の話があるのか。
「昨日——いや、おとといか。おれが偽造を始めた理由を、おまえは聞いたな」
「ああ」
「あの目をもう一度見ることに耐えられなかった、と言った」
おれは頷いた。あの朝の丘の上で、ドルクはそう言った。あの目。それが何の目なのか、おれはまだ聞いていなかった。ドルクもそれ以上は語らなかった。
「——話す」
短い二文字だった。だがその二文字を出すまでに、ドルクの喉が動いたのが見えた。暗がりの中でも、それだけは見えた。
おれは何も言わなかった。座ったまま、膝の上に手を置いて、待った。
ドルクは枝を弄《もてあそ》ぶのをやめなかった。指の間で転がし、止め、また転がす。沈黙が長かった。虫の声が夜の底を埋めていた。
「十二年前のことだ」
声が変わった。
乾いた短文のドルクではなかった。どこか遠い場所から声を出しているような——井戸の底で話しているような響き。
「おれは二十六だった。処理班の二番手だ。班長は別の男で——まあ、名前は要らん。もう死んだ」
「北東の山地に、集落があった。八十人」
八十人。ラステンより少ない。だが少なくはない。
「任務は通常の処理だった。遺物の使用が報告されて、査定が済んで、命令が下りた。おれたちは行って、命令を遂行した」
遂行した。
その三文字が夜の空気に落ちて、沈んだ。ドルクはそれ以上の説明をしなかった。どう遂行したのか。何をしたのか。おれの想像だけが、その空白を這い回った。
「終わった後のことしか覚えていない」
ドルクの声が、一段低くなった。
「嘘だな。覚えている。だが——語るのは、終わった後のことだけにする」
おれは頷いた。声が出なかった。
ドルクが空を見上げた。星が散っていた。だがドルクの目は星を見ていなかった。もっと遠くの、十二年前の空を見ていた。
「静かだった」
最初の一語がそれだった。
「何の音もしなかった。さっきまで——」
ドルクの声が途切れた。枝が指の間で止まった。
「——さっきまで音があった場所が、何も聞こえなくなる。犬も鳴かない。鳥も飛ばない。風の音だけがしていた」
おれの胸の奥で、何かが冷たく軋《きし》んだ。
「煙が出ていた」
ドルクの声は平坦だった。報告書を読み上げているようだった。だが読み上げているのは、報告書に書かなかったことだ。
「何の煙かは言わん。ただ——匂いがあった。おれは知らない匂いだった。知らない匂いのはずだった。だが身体が知っていた。身体のほうが先に知っていて、おれの膝が折れた」
ドルクの膝が折れた。あの大柄な、任務完遂率が高いと評される男の膝が。
「立ち上がって——自分の手を見た」
沈黙。
虫の声が遠のいた気がした。世界がドルクの声だけに縮まっていく。おれの知らない十二年前の夜に、引きずり込まれていく。
「手のことも——言わん。ただ、見た。自分の手を。そのとき初めて、おれは自分が何をしたのかを理解した。命令を遂行しているあいだは——」
また途切れた。今度は長かった。
枝が折れた。ドルクの指の間で、乾いた音を立てて。ドルクはそれを地面に落とした。
「——遂行しているあいだは、考えていない。訓練がそうさせる。身体が動いて、頭は止まっている。終わった後に、頭が動き出す。そうなると——」
「止められない」
おれが言った。ドルクが少しだけ、こちらを見た。
「ああ。止められない」
沈黙が降りた。おれは自分の手を見た。暗くてほとんど見えない。ただ指の輪郭だけが、集落の灯りに薄く浮かんでいた。ドルクもあの夜、同じようにして自分の手を見たのだろうか。
いや——同じではない。ドルクの手にはおれの手にはないものが残っていたはずだ。何が残っていたのか、ドルクは言わない。おれも聞かない。聞けない。
「壁が崩れていた」
ドルクが再び語り始めた。
「家のだ。石と土の壁が——半分落ちていた」
声が、ほんのわずかに揺れた。ドルクの声が揺れるのを、おれは初めて聞いた。
「その下に——子供がいた」
おれの息が止まった。
「四つくらいだった。壁が落ちたとき、隙間に入ったんだろう。石の庇《ひさし》が——」
ドルクが右手を持ち上げた。暗がりの中で、大きな手が何かの形をつくった。屋根か、庇か。石が傾いて空間ができた、その形。
「——かぶさって、空間ができていた。そこにいた。無傷《むきず》だった」
無傷。八十人の集落で。処理が終わった後に。
おれの想像が、その一語の周りで渦を巻いた。静寂と煙の中に、四歳の子供が無傷でいた。
「おれがその子を見つけた」
ドルクの声から報告書の硬さが消えていた。痛みとも悔恨とも違う、名前のつかない何かが滲んでいた。
「瓦礫《がれき》をどけて——手を伸ばした。抱き上げようとした」
「子供は——」
おれの声が掠《かす》れた。
「泣かなかった」
ドルクが言った。
「叫ばなかった」
また言った。
そして——長い、長い間があった。虫の声。遠い樹海の風。ラステンの灯りが、視界の端でじっと光っている。
「ただ——こちらを見ていた」
ドルクの声が、夜の底に落ちた。
「おれの顔を。おれの手を。おれの——」
止まった。
「——理解しようとしていた」
おれの胸の中で、何かが割れた。音もなく、静かに。
四歳の子供が、ドルクを見つめていた。泣かずに。叫ばずに。この男は何者なのか。なぜ周りが静かなのか。——四歳の頭で、その全てを理解しようとして。
おれは目を閉じた。見たこともない子供の目が、瞼の裏に浮かんだ。想像だけで十分だった。十分すぎた。
「その子は」
おれの声は震えていた。抑えようとしたが、抑えられなかった。
「どうなったんですか」
「騎士団が引き取った」
ドルクの声は再び乾いていた。報告書の声に戻っている。だがその乾きは、さっきの乾きとは違った。感情を消したのではなく、感情がすり減って乾いた声だった。何度も何度もこの記憶を通り抜けて、声が磨耗《まもう》したのだとわかった。
「処理後の孤児は騎士団が引き取る。規定だ」
「その後は——」
「知らない」
「名前も知らない。男か女かも——暗かったから、よくわからなかった。四つくらいだということだけ。それと——」
ドルクが自分の目のあたりを、右手でかすかに触れた。
「——あの目」
沈黙が落ちた。
おれは何も言えなかった。十二年前に四歳だった子供の目を、この男は今もまだ見ている。その目が、ドルクという人間を変えた。七年間にわたる報告書偽造に駆り立てた。
四つの集落、四百人——その全ては、あの子供の目から始まっていた。
「その処理の後——すぐにか。偽造を」
「いや」
ドルクが首を振った。
「五年かかった。すぐには何も変わらなかった。任務をこなした。命令に従った。全部、前と同じだった」
「五年」
「おれは鈍い。すぐには壊れない。だが——五年のあいだ、あの目が消えなかった」
ドルクが両手を開いて、掌を見た。暗がりの中で、あの大きな手が夜の空気にさらされている。
「飯を作るときに、あの目を思い出した。剣を磨くときに思い出した。報告書を書くときに——一番、思い出した」
「報告書を」
「処理の報告書を書くたびに、あの目が紙の上にいた。文字を書くおれの手を——あの子が見ていた。おまえは何を書いているのか、と」
おれは息を呑んだ。
ドルクが掌を閉じた。ゆっくりと。
「五年目の冬に、北の山裾の集落に行った。六十人。遺物は暖房が三つ。住民は何も知らない。石の箱が温かいから冬を越せる。それだけの人間だった」
あの朝に聞いた、最初の偽造だ。
「報告書を書こうとした。いつも通りに。処理を推奨、と。——書けなかった」
ドルクの声が、かすかに震えた。おれが聞いた二度目の揺れだった。
「あの子の目が見えた。紙の上に。おまえはまた書くのか、と。おまえの手で、また——」
途切れた。
夜風が吹いた。石塀の角を回って、冷たい空気がおれの首筋を撫でた。ドルクの外套の裾が揺れた。
「——書けなかった。代わりに、『証拠不十分』と書いた。それが最初だ」
おれは唇を噛んでいた。血の味がした。
「信仰をなくしたからじゃない」
ドルクが言った。声が——低く、硬く、地面を這うような声だった。
「教義を疑ったからでもない。百二十人と数千人、どちらが多いかはわかっている」
「だが——」
ドルクの声が止まった。世界が止まった。
「——あの目を、もう一度見ることに耐えられなかった」
その一文が、夜の空気を貫いた。
おれはようやく理解した。ドルクが偽造を始めた理由は、理屈ではなかった。教義への反抗でも、制度への批判でもなかった。もっと原始的な——もっと人間の根のほうにある何かだった。あの子の目。理解しようとする、四歳の目。その目をもう一度見るくらいなら——。
おれの中で、いくつかのものが繋がった。
ドルクが集落を長く見つめていた理由。蝶番を直した手。飯を作る手。報告書を書く手。あの手は全部——瓦礫をどけて、子供を抱き上げようとした手の延長だった。その手が返せなかったものを、七年間かけて返そうとしていた。
おれは掌を開いた。自分の手を見た。薪を割った手。水を汲んだ手。子供に型を教えた手。だが——処理はしていない。ドルクの手が知っていることを、おれの手はまだ知らない。
知りたくなかった。だが知らなければならないのだとも思った。ドルクが十二年間抱えてきたものの一端でも、受け取らなければ。この男がおれに語った意味がなくなる。
「班長」
声が震えていた。もう抑えなかった。
「はい」
「その子は——今、いくつですか」
ドルクが少しだけ、目を細めた。暗がりの中でも、それがわかった。
「十六だろう」
十六。おれより四つ下だ。騎士団に引き取られたなら——おれがかつてそうだったように、訓練生として白い回廊を歩いているかもしれない。
あるいは——処理班に配属される日が来るかもしれない。別の集落の処理に向かい、別の壁の下に、別の子供がいて、同じ目で見つめる。
繰り返す。
おれは頭を抱えた。吐き気に似たものが喉元まで上がってきて、そこで止まった。
「班長——おれは——」
「吐くな」
ドルクの声は乾いていた。だが——そこには、硬い優しさがあった。おれには聞き取れた。乾いた声の底に、枯れた井戸の底に残った水のような——かすかな温度。
「吐いても何も出ない。おれが保証する」
その言葉に、十二年分の夜が詰まっていた。ドルクは吐いたことがあるのだろう。何度も。そして何も出なかったのだろう。何度も。
おれは手を下ろした。呼吸を整えた。冷たい空気を肺に入れて、吐いた。もう一度。
ラステンの灯りが、滲んで見えた。
「……すみません」
「謝るな。聞かせたのはおれだ」
時間が過ぎた。どのくらい過ぎたのか、おれにはわからなかった。集落の灯りが一つ消え、また一つ消えた。ラステンが眠りに落ちていく。
おれはようやく、問いを口にした。
「ラステンを——どうするんですか」
ドルクは答えなかった。
長い沈黙があった。灯りがまた一つ消えた。集会所の窓だ。レンネが帰ったのだろう。明日の授業の準備を終えて。石板に算術の問題を書いて。子供たちが朝、走ってくるのを待つために。
「それはもう、おれの問いじゃない」
ドルクの声は静かだった。静かになるほど本気だと、おれは知っている。
「おれは七年間、おれの方法で答えを出してきた。四百人。——だがここでは通用しない。ハルスがいる。連署もした。おれにできることは——もう、ない」
その声には悔いも苦しみも聞こえなかった。ただ事実があった。七年間の方法が尽きた。
「だが」
ドルクがおれを見た。
「おまえの問いは、まだ生きている」
おれは何も言えなかった。
「おまえは何も偽造していない。連署もしていない。おまえの手はまだ——」
ドルクの視線がおれの手に落ちた。暗がりの中で、おれの手は膝の上に置かれていた。
「——何も持っていない」
何も持っていない。おれの手は——まだ空だ。空であるということは、これから何を掴むかを選べるということだ。
「班長」
「ん」
「あの子供の——目は」
おれは言葉を探した。暗闇の中で、手探りで。
「今もまだ、見えるんですか」
ドルクは答えなかった。
答えなかったことが、答えだった。
灯りがまた一つ消えた。ラステンの窓に残っている光は、もうわずかだった。
おれは星を見上げた。十二年前、ドルクが見た星空と同じものかもしれない空を。
おれは神に祈ろうとした。祈りの言葉が浮かばなかった。昨日も浮かばなかった。ラステンに来てから、祈りが少しずつ遠のいている。教義の言葉が、すり減った銅貨のようにぼやけていく。
代わりに浮かんだのは——レンネの声だった。算術やるんでしょ、と走ってくる子供の声。ミーネの声。やっぱり騎士でしょ。そして——四歳の子供の、声にならない目。
暗闇の中で、二つの集落が重なった。十二年前の八十人。静寂と煙。そして今のラステン。蜂蜜色の灯りが窓に点《とも》る、百二十人の集落。
おれは知ってしまった。もう知らないふりはできない。
「班長」
「ん」
「おれは——まだ、答えが出ていません」
正直に言った。嘘をつけなかった。ドルクの前で嘘をつくことに、意味はなかった。
「ああ」
「でも——」
おれは言葉を探した。石塀の冷たさが背中を通して伝わってくる。夜の空気が肺を満たす。遠くで樹海の葉が擦れる音がする。
「おれの手は——まだ空です」
ドルクが横を向いた。おれを見た。暗がりの中で、目だけが光を映していた。ラステンの最後の灯りを。
「ああ」
ドルクの「ああ」は短かった。いつもと同じ、乾いた肯定。だがその一音が——おれには、許しのように聞こえた。何に対する許しかはわからない。まだ何も決めていないおれに、何を許すこともできないはずだ。だがそう聞こえた。
最後の灯りが消えた。
ラステンが闇に沈んだ。窓の光が全て消えて、星明かりだけが残った。屋根の輪郭が、空との境界線としてかろうじて見える。三十軒ほどの家。百二十人の寝息。明日がある、と信じて眠る人々。
おれとドルクは、闇の中で並んで座っていた。
言葉はもうなかった。語るべきことは語られた。
おれは——明日、何を選ぶのだろう。
答えはまだなかった。だが問いの形が変わっていた。「どうすればいいのか」ではなく——「おれは何を選ぶのか」に。ドルクが渡してくれたのは、答えではなく、問いの形だった。
虫の声が途切れた。冷え込みが強い。冬が近い。ラステンの冬は長い。遺物の暖房がなければ——。
おれはその先を考えなかった。おれの身体はとうに答えを知っている。薪を割ったとき。水を汲んだとき。子供に型を教えたとき。——身体が先に動いた。頭はまだ追いつかないが、手が知っている。
ドルクの声が、闇の中に落ちた。
「交代まであと二刻か」
「ああ」
「寝ろ。ここでいい。おれが見ている」
おれはドルクを見た。大柄な体が闇の中に溶けかけている。だが目だけは——ラステンの方を向いている。灯りの消えた、暗い集落を。それでもドルクは見ている。
十二年間、ずっとそうしてきたように。
「班長」
「ん」
「——ありがとうございます」
何に対する礼なのか、おれにもわからなかった。話してくれたことか。選択肢を渡してくれたことか。それとも——おれの手がまだ空であると、認めてくれたことか。
ドルクは何も言わなかった。
おれは石塀に背を預けて、目を閉じた。眠れるとは思わなかった。だが身体が限界だった。頭の中はまだ渦を巻いていたが、瞼が重い。
闇の中に、子供の目が浮かんだ。
見たことのない目だ。四歳の、名前も性別も知らない子供の目。だがおれの想像の中で、その目はまっすぐにこちらを見ていた。理解しようとして。泣かずに。叫ばずに。ただ——見ていた。
おれはその目に、何を返せるだろう。
意識が薄れていく。ドルクの気配がすぐそばにあった。大きく、静かで、揺るがない。十二年分の夜を背負った男の気配。
最後に浮かんだのは、ラステンの灯りだった。消えたはずの灯りが、瞼の裏にまだ残っていた。蜂蜜色の、揺らがない光。あの光の下で、人々が眠っている。レンネが石板に書いた算術の問題がある。ミーネが考えてきた問題がある。
三十六時間後には——。
おれはその先を振り払った。今夜は眠る。明日、目を開ける。そして——選ぶ。
夢は見なかった。だが夢と現《うつつ》の境目で、おれは一つだけ確かなものを感じていた。
隣に、ドルクがいる。起きているドルクが、闇の中で集落を見つめている。あの子供の目を抱えたまま、百二十人の寝息を守るようにして。
——おれの手は、まだ空だ。
その一つだけを握りしめて、おれは眠りに落ちた。
焚き火は起こさなかった。ドルクが「いらん」と言った。明かりは目立つ。もっとも、誰に見つかるというわけでもない。ラステンの人々は、おれたちが夜番をしていることすら知らないのだから。
闇の中で、集落の灯りだけが見えていた。蜂蜜色の光が、窓という窓に点《とも》っている。あの光の一つ一つの下で、人が眠りに就こうとしている。明日がある、と信じて。
明後日の朝には——期限が来る。
三十六時間を切っていた。昨日の朝は四十八時間だった。数字が減るたびに、おれの中で何かが軋《きし》む。
ドルクは石塀に背を預けて、脚を投げ出していた。手元に短い枝を持っている。何をするでもなく、指の間で転がしている。暗くて表情は見えない。だが気配でわかった。今夜のドルクの沈黙には、何かが底に溜まっていた。
虫の声がしていた。樹海のほうから、途切れることなく。
「エルト」
ドルクの声は低かった。
「ん」
「おまえに——もう一つ、話しておくことがある」
おれは隣を見た。暗がりの中で、ドルクの横顔が星明かりにかすかに浮かんでいた。目は集落の灯りを見ている。いつもの目だ。だが「もう一つ」という言葉が、空気を変えた。
七年間の偽造。四百人。あれ以上の話があるのか。
「昨日——いや、おとといか。おれが偽造を始めた理由を、おまえは聞いたな」
「ああ」
「あの目をもう一度見ることに耐えられなかった、と言った」
おれは頷いた。あの朝の丘の上で、ドルクはそう言った。あの目。それが何の目なのか、おれはまだ聞いていなかった。ドルクもそれ以上は語らなかった。
「——話す」
短い二文字だった。だがその二文字を出すまでに、ドルクの喉が動いたのが見えた。暗がりの中でも、それだけは見えた。
おれは何も言わなかった。座ったまま、膝の上に手を置いて、待った。
ドルクは枝を弄《もてあそ》ぶのをやめなかった。指の間で転がし、止め、また転がす。沈黙が長かった。虫の声が夜の底を埋めていた。
「十二年前のことだ」
声が変わった。
乾いた短文のドルクではなかった。どこか遠い場所から声を出しているような——井戸の底で話しているような響き。
「おれは二十六だった。処理班の二番手だ。班長は別の男で——まあ、名前は要らん。もう死んだ」
「北東の山地に、集落があった。八十人」
八十人。ラステンより少ない。だが少なくはない。
「任務は通常の処理だった。遺物の使用が報告されて、査定が済んで、命令が下りた。おれたちは行って、命令を遂行した」
遂行した。
その三文字が夜の空気に落ちて、沈んだ。ドルクはそれ以上の説明をしなかった。どう遂行したのか。何をしたのか。おれの想像だけが、その空白を這い回った。
「終わった後のことしか覚えていない」
ドルクの声が、一段低くなった。
「嘘だな。覚えている。だが——語るのは、終わった後のことだけにする」
おれは頷いた。声が出なかった。
ドルクが空を見上げた。星が散っていた。だがドルクの目は星を見ていなかった。もっと遠くの、十二年前の空を見ていた。
「静かだった」
最初の一語がそれだった。
「何の音もしなかった。さっきまで——」
ドルクの声が途切れた。枝が指の間で止まった。
「——さっきまで音があった場所が、何も聞こえなくなる。犬も鳴かない。鳥も飛ばない。風の音だけがしていた」
おれの胸の奥で、何かが冷たく軋《きし》んだ。
「煙が出ていた」
ドルクの声は平坦だった。報告書を読み上げているようだった。だが読み上げているのは、報告書に書かなかったことだ。
「何の煙かは言わん。ただ——匂いがあった。おれは知らない匂いだった。知らない匂いのはずだった。だが身体が知っていた。身体のほうが先に知っていて、おれの膝が折れた」
ドルクの膝が折れた。あの大柄な、任務完遂率が高いと評される男の膝が。
「立ち上がって——自分の手を見た」
沈黙。
虫の声が遠のいた気がした。世界がドルクの声だけに縮まっていく。おれの知らない十二年前の夜に、引きずり込まれていく。
「手のことも——言わん。ただ、見た。自分の手を。そのとき初めて、おれは自分が何をしたのかを理解した。命令を遂行しているあいだは——」
また途切れた。今度は長かった。
枝が折れた。ドルクの指の間で、乾いた音を立てて。ドルクはそれを地面に落とした。
「——遂行しているあいだは、考えていない。訓練がそうさせる。身体が動いて、頭は止まっている。終わった後に、頭が動き出す。そうなると——」
「止められない」
おれが言った。ドルクが少しだけ、こちらを見た。
「ああ。止められない」
沈黙が降りた。おれは自分の手を見た。暗くてほとんど見えない。ただ指の輪郭だけが、集落の灯りに薄く浮かんでいた。ドルクもあの夜、同じようにして自分の手を見たのだろうか。
いや——同じではない。ドルクの手にはおれの手にはないものが残っていたはずだ。何が残っていたのか、ドルクは言わない。おれも聞かない。聞けない。
「壁が崩れていた」
ドルクが再び語り始めた。
「家のだ。石と土の壁が——半分落ちていた」
声が、ほんのわずかに揺れた。ドルクの声が揺れるのを、おれは初めて聞いた。
「その下に——子供がいた」
おれの息が止まった。
「四つくらいだった。壁が落ちたとき、隙間に入ったんだろう。石の庇《ひさし》が——」
ドルクが右手を持ち上げた。暗がりの中で、大きな手が何かの形をつくった。屋根か、庇か。石が傾いて空間ができた、その形。
「——かぶさって、空間ができていた。そこにいた。無傷《むきず》だった」
無傷。八十人の集落で。処理が終わった後に。
おれの想像が、その一語の周りで渦を巻いた。静寂と煙の中に、四歳の子供が無傷でいた。
「おれがその子を見つけた」
ドルクの声から報告書の硬さが消えていた。痛みとも悔恨とも違う、名前のつかない何かが滲んでいた。
「瓦礫《がれき》をどけて——手を伸ばした。抱き上げようとした」
「子供は——」
おれの声が掠《かす》れた。
「泣かなかった」
ドルクが言った。
「叫ばなかった」
また言った。
そして——長い、長い間があった。虫の声。遠い樹海の風。ラステンの灯りが、視界の端でじっと光っている。
「ただ——こちらを見ていた」
ドルクの声が、夜の底に落ちた。
「おれの顔を。おれの手を。おれの——」
止まった。
「——理解しようとしていた」
おれの胸の中で、何かが割れた。音もなく、静かに。
四歳の子供が、ドルクを見つめていた。泣かずに。叫ばずに。この男は何者なのか。なぜ周りが静かなのか。——四歳の頭で、その全てを理解しようとして。
おれは目を閉じた。見たこともない子供の目が、瞼の裏に浮かんだ。想像だけで十分だった。十分すぎた。
「その子は」
おれの声は震えていた。抑えようとしたが、抑えられなかった。
「どうなったんですか」
「騎士団が引き取った」
ドルクの声は再び乾いていた。報告書の声に戻っている。だがその乾きは、さっきの乾きとは違った。感情を消したのではなく、感情がすり減って乾いた声だった。何度も何度もこの記憶を通り抜けて、声が磨耗《まもう》したのだとわかった。
「処理後の孤児は騎士団が引き取る。規定だ」
「その後は——」
「知らない」
「名前も知らない。男か女かも——暗かったから、よくわからなかった。四つくらいだということだけ。それと——」
ドルクが自分の目のあたりを、右手でかすかに触れた。
「——あの目」
沈黙が落ちた。
おれは何も言えなかった。十二年前に四歳だった子供の目を、この男は今もまだ見ている。その目が、ドルクという人間を変えた。七年間にわたる報告書偽造に駆り立てた。
四つの集落、四百人——その全ては、あの子供の目から始まっていた。
「その処理の後——すぐにか。偽造を」
「いや」
ドルクが首を振った。
「五年かかった。すぐには何も変わらなかった。任務をこなした。命令に従った。全部、前と同じだった」
「五年」
「おれは鈍い。すぐには壊れない。だが——五年のあいだ、あの目が消えなかった」
ドルクが両手を開いて、掌を見た。暗がりの中で、あの大きな手が夜の空気にさらされている。
「飯を作るときに、あの目を思い出した。剣を磨くときに思い出した。報告書を書くときに——一番、思い出した」
「報告書を」
「処理の報告書を書くたびに、あの目が紙の上にいた。文字を書くおれの手を——あの子が見ていた。おまえは何を書いているのか、と」
おれは息を呑んだ。
ドルクが掌を閉じた。ゆっくりと。
「五年目の冬に、北の山裾の集落に行った。六十人。遺物は暖房が三つ。住民は何も知らない。石の箱が温かいから冬を越せる。それだけの人間だった」
あの朝に聞いた、最初の偽造だ。
「報告書を書こうとした。いつも通りに。処理を推奨、と。——書けなかった」
ドルクの声が、かすかに震えた。おれが聞いた二度目の揺れだった。
「あの子の目が見えた。紙の上に。おまえはまた書くのか、と。おまえの手で、また——」
途切れた。
夜風が吹いた。石塀の角を回って、冷たい空気がおれの首筋を撫でた。ドルクの外套の裾が揺れた。
「——書けなかった。代わりに、『証拠不十分』と書いた。それが最初だ」
おれは唇を噛んでいた。血の味がした。
「信仰をなくしたからじゃない」
ドルクが言った。声が——低く、硬く、地面を這うような声だった。
「教義を疑ったからでもない。百二十人と数千人、どちらが多いかはわかっている」
「だが——」
ドルクの声が止まった。世界が止まった。
「——あの目を、もう一度見ることに耐えられなかった」
その一文が、夜の空気を貫いた。
おれはようやく理解した。ドルクが偽造を始めた理由は、理屈ではなかった。教義への反抗でも、制度への批判でもなかった。もっと原始的な——もっと人間の根のほうにある何かだった。あの子の目。理解しようとする、四歳の目。その目をもう一度見るくらいなら——。
おれの中で、いくつかのものが繋がった。
ドルクが集落を長く見つめていた理由。蝶番を直した手。飯を作る手。報告書を書く手。あの手は全部——瓦礫をどけて、子供を抱き上げようとした手の延長だった。その手が返せなかったものを、七年間かけて返そうとしていた。
おれは掌を開いた。自分の手を見た。薪を割った手。水を汲んだ手。子供に型を教えた手。だが——処理はしていない。ドルクの手が知っていることを、おれの手はまだ知らない。
知りたくなかった。だが知らなければならないのだとも思った。ドルクが十二年間抱えてきたものの一端でも、受け取らなければ。この男がおれに語った意味がなくなる。
「班長」
声が震えていた。もう抑えなかった。
「はい」
「その子は——今、いくつですか」
ドルクが少しだけ、目を細めた。暗がりの中でも、それがわかった。
「十六だろう」
十六。おれより四つ下だ。騎士団に引き取られたなら——おれがかつてそうだったように、訓練生として白い回廊を歩いているかもしれない。
あるいは——処理班に配属される日が来るかもしれない。別の集落の処理に向かい、別の壁の下に、別の子供がいて、同じ目で見つめる。
繰り返す。
おれは頭を抱えた。吐き気に似たものが喉元まで上がってきて、そこで止まった。
「班長——おれは——」
「吐くな」
ドルクの声は乾いていた。だが——そこには、硬い優しさがあった。おれには聞き取れた。乾いた声の底に、枯れた井戸の底に残った水のような——かすかな温度。
「吐いても何も出ない。おれが保証する」
その言葉に、十二年分の夜が詰まっていた。ドルクは吐いたことがあるのだろう。何度も。そして何も出なかったのだろう。何度も。
おれは手を下ろした。呼吸を整えた。冷たい空気を肺に入れて、吐いた。もう一度。
ラステンの灯りが、滲んで見えた。
「……すみません」
「謝るな。聞かせたのはおれだ」
時間が過ぎた。どのくらい過ぎたのか、おれにはわからなかった。集落の灯りが一つ消え、また一つ消えた。ラステンが眠りに落ちていく。
おれはようやく、問いを口にした。
「ラステンを——どうするんですか」
ドルクは答えなかった。
長い沈黙があった。灯りがまた一つ消えた。集会所の窓だ。レンネが帰ったのだろう。明日の授業の準備を終えて。石板に算術の問題を書いて。子供たちが朝、走ってくるのを待つために。
「それはもう、おれの問いじゃない」
ドルクの声は静かだった。静かになるほど本気だと、おれは知っている。
「おれは七年間、おれの方法で答えを出してきた。四百人。——だがここでは通用しない。ハルスがいる。連署もした。おれにできることは——もう、ない」
その声には悔いも苦しみも聞こえなかった。ただ事実があった。七年間の方法が尽きた。
「だが」
ドルクがおれを見た。
「おまえの問いは、まだ生きている」
おれは何も言えなかった。
「おまえは何も偽造していない。連署もしていない。おまえの手はまだ——」
ドルクの視線がおれの手に落ちた。暗がりの中で、おれの手は膝の上に置かれていた。
「——何も持っていない」
何も持っていない。おれの手は——まだ空だ。空であるということは、これから何を掴むかを選べるということだ。
「班長」
「ん」
「あの子供の——目は」
おれは言葉を探した。暗闇の中で、手探りで。
「今もまだ、見えるんですか」
ドルクは答えなかった。
答えなかったことが、答えだった。
灯りがまた一つ消えた。ラステンの窓に残っている光は、もうわずかだった。
おれは星を見上げた。十二年前、ドルクが見た星空と同じものかもしれない空を。
おれは神に祈ろうとした。祈りの言葉が浮かばなかった。昨日も浮かばなかった。ラステンに来てから、祈りが少しずつ遠のいている。教義の言葉が、すり減った銅貨のようにぼやけていく。
代わりに浮かんだのは——レンネの声だった。算術やるんでしょ、と走ってくる子供の声。ミーネの声。やっぱり騎士でしょ。そして——四歳の子供の、声にならない目。
暗闇の中で、二つの集落が重なった。十二年前の八十人。静寂と煙。そして今のラステン。蜂蜜色の灯りが窓に点《とも》る、百二十人の集落。
おれは知ってしまった。もう知らないふりはできない。
「班長」
「ん」
「おれは——まだ、答えが出ていません」
正直に言った。嘘をつけなかった。ドルクの前で嘘をつくことに、意味はなかった。
「ああ」
「でも——」
おれは言葉を探した。石塀の冷たさが背中を通して伝わってくる。夜の空気が肺を満たす。遠くで樹海の葉が擦れる音がする。
「おれの手は——まだ空です」
ドルクが横を向いた。おれを見た。暗がりの中で、目だけが光を映していた。ラステンの最後の灯りを。
「ああ」
ドルクの「ああ」は短かった。いつもと同じ、乾いた肯定。だがその一音が——おれには、許しのように聞こえた。何に対する許しかはわからない。まだ何も決めていないおれに、何を許すこともできないはずだ。だがそう聞こえた。
最後の灯りが消えた。
ラステンが闇に沈んだ。窓の光が全て消えて、星明かりだけが残った。屋根の輪郭が、空との境界線としてかろうじて見える。三十軒ほどの家。百二十人の寝息。明日がある、と信じて眠る人々。
おれとドルクは、闇の中で並んで座っていた。
言葉はもうなかった。語るべきことは語られた。
おれは——明日、何を選ぶのだろう。
答えはまだなかった。だが問いの形が変わっていた。「どうすればいいのか」ではなく——「おれは何を選ぶのか」に。ドルクが渡してくれたのは、答えではなく、問いの形だった。
虫の声が途切れた。冷え込みが強い。冬が近い。ラステンの冬は長い。遺物の暖房がなければ——。
おれはその先を考えなかった。おれの身体はとうに答えを知っている。薪を割ったとき。水を汲んだとき。子供に型を教えたとき。——身体が先に動いた。頭はまだ追いつかないが、手が知っている。
ドルクの声が、闇の中に落ちた。
「交代まであと二刻か」
「ああ」
「寝ろ。ここでいい。おれが見ている」
おれはドルクを見た。大柄な体が闇の中に溶けかけている。だが目だけは——ラステンの方を向いている。灯りの消えた、暗い集落を。それでもドルクは見ている。
十二年間、ずっとそうしてきたように。
「班長」
「ん」
「——ありがとうございます」
何に対する礼なのか、おれにもわからなかった。話してくれたことか。選択肢を渡してくれたことか。それとも——おれの手がまだ空であると、認めてくれたことか。
ドルクは何も言わなかった。
おれは石塀に背を預けて、目を閉じた。眠れるとは思わなかった。だが身体が限界だった。頭の中はまだ渦を巻いていたが、瞼が重い。
闇の中に、子供の目が浮かんだ。
見たことのない目だ。四歳の、名前も性別も知らない子供の目。だがおれの想像の中で、その目はまっすぐにこちらを見ていた。理解しようとして。泣かずに。叫ばずに。ただ——見ていた。
おれはその目に、何を返せるだろう。
意識が薄れていく。ドルクの気配がすぐそばにあった。大きく、静かで、揺るがない。十二年分の夜を背負った男の気配。
最後に浮かんだのは、ラステンの灯りだった。消えたはずの灯りが、瞼の裏にまだ残っていた。蜂蜜色の、揺らがない光。あの光の下で、人々が眠っている。レンネが石板に書いた算術の問題がある。ミーネが考えてきた問題がある。
三十六時間後には——。
おれはその先を振り払った。今夜は眠る。明日、目を開ける。そして——選ぶ。
夢は見なかった。だが夢と現《うつつ》の境目で、おれは一つだけ確かなものを感じていた。
隣に、ドルクがいる。起きているドルクが、闇の中で集落を見つめている。あの子供の目を抱えたまま、百二十人の寝息を守るようにして。
——おれの手は、まだ空だ。
その一つだけを握りしめて、おれは眠りに落ちた。
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