10 / 14
第10話 当日・未明
しおりを挟む
当日未明、東監察庫の裏門は霧で濡れていた。
見張り二名、交代空白三分。
メラの組合員が正門側で荷車転倒を装い、怒鳴り合いを始める。兵の視線が逸れた瞬間、イオナと二人の荷運びは裏門へ滑り込んだ。
鍵はクロウ図面どおり、第三扉の蝶番が甘い。音を殺して外し、最奥拘置室へ到達する。
ガルムは壁にもたれ、手枷のまま座っていた。右頬に新しい裂傷が一本増えている。
「遅い」
「迎えに来る時間を計算してた」
イオナは手枷を外し、四時間窓の計算紙を渡した。
「救出、避難、停止を同時に回す。猶予は正午前まで」
ガルムは一読し、立ち上がる。
「無茶だが、筋は通ってる」
外へ出ると、東の空がわずかに白み始めていた。三人はそのまま下層西区画へ走る。
メラが鐘楼下で拡声筒を握った。
「一次避難開始! 荷は一袋、歩ける者は高台へ。老人と子どもを先に通す!」
広場演説の紙を読んだ住民たちは、半信半疑ながら動き出す。疑いながらでも、列になれば強い。
イオナは列の先頭と末尾を走り、潮位に合わせて経路を切り替えた。
「西路冠水、北階段へ! 列を崩さない!」
喉が焼ける。声を止めれば列が止まる。
夜明けを越えた頃、一次集合点三箇所のうち二箇所は搬出を終えた。だが第三列が正規避難門で止められる。
「通行許可なし。引き返せ」
「緊急避難だ!」
「命令は命令だ」
押し問答の最中、港中枢側の警鐘が三連で鳴った。
非常封鎖の合図。
ガルムが顔を上げる。
「来た。正規避難路が閉じる」
次の瞬間、東門、西門、中央門の鉄格子が順に落ちた。
デルガ港の正規避難路は全面閉鎖。
群衆のざわめきが悲鳴へ変わる。
イオナは即座に地図を破って配り、怒鳴った。
「正規路は捨てる! 組合潮路へ切替! 高台北面へ流せ!」
メラ班が列頭を受け取り、荷運び網の私道へ住民を誘導する。違法導線だが、今はそれしかない。
ガルムがイオナへ短く告げた。
「避難はメラに預ける。次は工廠だ」
未明の空が白くなる中、二人は東工廠へ向けて走り出した。
見張り二名、交代空白三分。
メラの組合員が正門側で荷車転倒を装い、怒鳴り合いを始める。兵の視線が逸れた瞬間、イオナと二人の荷運びは裏門へ滑り込んだ。
鍵はクロウ図面どおり、第三扉の蝶番が甘い。音を殺して外し、最奥拘置室へ到達する。
ガルムは壁にもたれ、手枷のまま座っていた。右頬に新しい裂傷が一本増えている。
「遅い」
「迎えに来る時間を計算してた」
イオナは手枷を外し、四時間窓の計算紙を渡した。
「救出、避難、停止を同時に回す。猶予は正午前まで」
ガルムは一読し、立ち上がる。
「無茶だが、筋は通ってる」
外へ出ると、東の空がわずかに白み始めていた。三人はそのまま下層西区画へ走る。
メラが鐘楼下で拡声筒を握った。
「一次避難開始! 荷は一袋、歩ける者は高台へ。老人と子どもを先に通す!」
広場演説の紙を読んだ住民たちは、半信半疑ながら動き出す。疑いながらでも、列になれば強い。
イオナは列の先頭と末尾を走り、潮位に合わせて経路を切り替えた。
「西路冠水、北階段へ! 列を崩さない!」
喉が焼ける。声を止めれば列が止まる。
夜明けを越えた頃、一次集合点三箇所のうち二箇所は搬出を終えた。だが第三列が正規避難門で止められる。
「通行許可なし。引き返せ」
「緊急避難だ!」
「命令は命令だ」
押し問答の最中、港中枢側の警鐘が三連で鳴った。
非常封鎖の合図。
ガルムが顔を上げる。
「来た。正規避難路が閉じる」
次の瞬間、東門、西門、中央門の鉄格子が順に落ちた。
デルガ港の正規避難路は全面閉鎖。
群衆のざわめきが悲鳴へ変わる。
イオナは即座に地図を破って配り、怒鳴った。
「正規路は捨てる! 組合潮路へ切替! 高台北面へ流せ!」
メラ班が列頭を受け取り、荷運び網の私道へ住民を誘導する。違法導線だが、今はそれしかない。
ガルムがイオナへ短く告げた。
「避難はメラに預ける。次は工廠だ」
未明の空が白くなる中、二人は東工廠へ向けて走り出した。
0
あなたにおすすめの小説
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
婚約破棄?いいですけど私巨乳ですよ?
無色
恋愛
子爵令嬢のディーカは、衆目の中で婚約破棄を告げられる。
身分差を理由に見下されながらも、彼女は淡々と受け入れようとするが、その時ドレスが破れ、隠していた自慢のそれが解き放たれてしまう。
ある、義妹にすべてを奪われて魔獣の生贄になった令嬢のその後
オレンジ方解石
ファンタジー
異母妹セリアに虐げられた挙げ句、婚約者のルイ王太子まで奪われて世を儚み、魔獣の生贄となったはずの侯爵令嬢レナエル。
ある夜、王宮にレナエルと魔獣が現れて…………。
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】離縁ですか…では、私が出掛けている間に出ていって下さいね♪
山葵
恋愛
突然、カイルから離縁して欲しいと言われ、戸惑いながらも理由を聞いた。
「俺は真実の愛に目覚めたのだ。マリアこそ俺の運命の相手!」
そうですか…。
私は離婚届にサインをする。
私は、直ぐに役所に届ける様に使用人に渡した。
使用人が出掛けるのを確認してから
「私とアスベスが旅行に行っている間に荷物を纏めて出ていって下さいね♪」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる