七日後に神罰が落ちる。上層部は「下を切り捨てろ」と言った——私は全員を逃がす

蒼月よる

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第11話 当日・正午

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 当日正午前、東工廠の外壁は掌が焼けるほど熱かった。

 正規避難路が閉じた以上、増幅そのものを止めるしかない。
 イオナとガルムは、クロウが示した排熱坑から工廠裏へ潜った。坑道には古い煤と新しい油の匂いが混じる。

「ここから先は二手」

 ガルムが囁く。

「メラ班は避難導線維持。俺たちは中枢停止」

 坑道の終点で合流したメラは、イオナの肩を一度だけ叩いた。

「戻ってこい。今日はそれだけ守れ」

 中枢室へ出ると、三基の補助柱が白く発光し、計器盤は危険域の縁で震えていた。
 イオナは即座に停止手順を読み上げる。

「第一遮断、第二逆位相、第三で基幹導体を落とす」

 ガルムが第一ハンドルを倒す。柱の一基が沈黙。
 第二へ。針がわずかに下がる。

 だが第三手順で赤灯が点滅し、注記が浮かぶ。

 第三遮断は手動保持中のみ有効。
 保持者離脱時、即時再増幅。

 イオナの喉が凍る。

「誰かが保持し続けないと停止できない」

 ガルムは迷わない。

「俺が残る。あんたは避難班へ戻れ」
「それじゃあなたが死ぬ」
「港を残すなら必要な損耗だ」

 その言葉がローデンと同じ語彙であることに、二人とも気づいていた。

 背後の扉が開く。ローデンが警備を従えて現れる。

「そこまでだ。停止手順の実行を禁ずる」

 彼は計器盤を見たまま言う。

「限定被害で全体を守る。管理とはそういうものだ」

 イオナは睨み返した。

「管理の名で欠落台帳を作った。人を数字から消して」

 ローデンは肩をすくめる。

「全員を救う設計は、現実には存在しない」

 計器が鳴る。閾値まで時間が削れる。
 議論している余裕はない。

 イオナは操作卓下の配線図を引き抜いた。潮汐連動機構の古い回路が残っている。
 手動保持を代替する機械式錘が使えるかもしれない。

「黄昏まで持たせる。潮汐錘で手動保持を置き換える」

 ガルムが低く問う。

「成功率は」
「まだ出せない。でも、ゼロじゃない」

 ローデンが一歩前へ出る。

「賭けで港を動かすのか」

 イオナは配線図を握りしめた。

「最初から誰かを捨てる計画よりはまし」

 正午の鐘が鳴る。
 中枢室の白光がさらに強くなった。
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