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第10話 魔力枯渇、連鎖暴走
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「アアアアッ!」
「『氷結の槍』!」
地下水路の奥深く。
エレナが凄まじい速度と精度の魔法で、次々と湧き出す粘液の魔獣を凍らせては粉砕していく。
「すごいな、あいつ……」
俺は彼女の後ろを、ただ歩いてついていくだけだった。エレナの魔力は無尽蔵かと思えるほどで、俺に出番など全くない。
「ハァッ……ハァッ……」
しかし、十数分も戦闘を続けると、さすがのエレナの肩が上下に揺れ始めていた。
「大丈夫か、エレナ?」
「い、いえ……問題ございません! アッシュ様の大いなる御業に比べれば、この程度の消耗など……!」
強がっているが、額には汗が浮かんでいる。
【System:対象(エレナ・アークライト)の生体接続回路に中等度の負荷を検知。魔素枯渇(マナ・エンプティ)まであと12%】
視界のアラートが、彼女の限界が近いことを告げていた。
そして最悪のタイミングで、広大な地下空洞——旧浄水プラントの中枢エリアへと辿り着いてしまった。
「な、なんですか……あれは……」
エレナが絶望的な声を漏らした。
空洞の中央には、巨大な肉山のような不気味な塊が鎮座していた。これが『中枢コア』だろう。
そしてその肉山を護衛するように、これまでとは桁違いの大きさと魔力を放つ、3体の異形の巨人が立ち塞がった。
「クラスA……いや、特級の変異魔獣が3体も……っ!」
エレナが杖を構え直すが、その手が微かに震えている。魔力が枯渇寸前の彼女では、とても防ぎきれないだろう。
『警告:中枢コアの防衛システムが起動しました』
『対象(変異巨人)への遠隔パッチ適用は不可。マニュアル操作での無効化が必要です』
またそれだ。どうすればいいんだ。
「アッシュ様……」
エレナが覚悟を決めたような声で言った。
「私が、残る命を燃やして奴らを足止めします。その隙に、アッシュ様の『奇跡』で中枢の核を破壊してください」
「バカ言え、お前が死ぬだろ!」
「アッシュ様のためならば、この命など安いもの——」
「却下だ! 俺がなんとかする!」
俺はエレナをかばうように前に出た。
とはいえ、俺の魔力はゼロ。遠隔デリートボタンは効かない。
3体の巨人が、一斉に俺たちに向かって魔法の光をチャージし始める。
『マニュアル操作要件:対象に直接接触し、脳内インターフェースからコマンドラインでの部分パージを指示してください』
視界に流れたシステムメッセージ。
「脳内インターフェースからコマンドライン」……?
——その時、俺の中で直感のようなものが閃いた。
かつて図書室の地下で管理デバイスに触れた時の感覚。
俺の脳髄そのものが、世界(システム)と繋がっているという圧倒的な全能感。
「コマンドライン……つまり、俺の頭で思い描いた『指定』の通りに、ピンポイントで事象を消すってことか……?」
巨人が三方向から、極大の炎球、氷槍、雷撃を同時に放ってきた。
エレナが悲鳴を上げる。
俺は押し寄せる三種の死を前にして、極限の集中状態で脳内に『命令(コマンド)』を打ち込んだ。
『Target: Incoming_Magic_All』
『Action: Delete_Process』
『Exception: Ignore_Physical_Impact (物理衝撃のみ相殺せずパス)』
——直後。
三方向からの魔法の奔流が俺たちに直撃する寸前。
魔法を構成していた『炎の熱』『氷の冷気』『雷の電流』という有害な事象パラメータだけが、空間から綺麗に【削除】された。
「……え?」
エレナが間抜けな声を出す。
魔法の破壊力は完全に消え失せ、あとに残ったのは「魔法が放たれた際の風圧(物理衝撃)」だけだった。
生ぬるい突風が、俺たちの髪を揺らして通り過ぎていく。
「な、なにを……何をされたのですか!? 3つの極大魔法を、相殺ではなく、完全に『無害な風』へと変換した……!?」
エレナは床にへたり込み、神に祈るように目を閉じた。
よし、上手くいった。俺は初めて「マニュアルでのデバッグ作業」を成功させた。
「待ってろ、エレナ。今のはただの防御だ」
俺はそのまま、唖然として動きを止めた3体の巨人——魔獣に向かって駆け出した。
『Target: Enemy_Core_All』
『Action: Override & Format』
「消えろっ!!」
俺が両手を巨人の両足に張り手のように叩きつけた瞬間。
巨人たちの構成情報(ナノマシンの凝集)がルート権限によって真っ白にフォーマットされ、一瞬にしてただの土塊へと崩れ去った。
「おっしゃあああ! マニュアル操作、完全理解!」
ガッツポーズを決める俺。
しかし、中枢コア(肉山)はまだ残っている。
俺は意気揚々とコアに手を触れ、完全に『デリート』のコマンドを実行した。
【System:クリティカルエラーの修正を確認。王都地下ネットワークの正常化を完了しました】
【System:報酬として、ユーザーに『空間把握領域(Ping)』のアクセス権限を付与します】
視界がふっと切り替わった。
暗い地下水路の中にあって、自分の周囲100メートル以内の地形、生物の位置、魔素の流れが、丸わかりのワイヤーフレームのように脳内に浮かび上がったのだ。
「えっ……なにこれ、見えすぎる……酔いそう……」
「アッシュ様ぁぁっ!!」
俺が視界の情報の多さにフラついていると、エレナが感極まった顔で抱きついてきた。
「ついに、魔力(事象)の変換すら無詠唱で……! ああ、アッシュ様。神よ……!」
こうして、初めての「マニュアルデバッグ作業」は、俺の能力のアップデートと、エレナの勘違いのさらなる悪化という結果で終幕したのだった。
「『氷結の槍』!」
地下水路の奥深く。
エレナが凄まじい速度と精度の魔法で、次々と湧き出す粘液の魔獣を凍らせては粉砕していく。
「すごいな、あいつ……」
俺は彼女の後ろを、ただ歩いてついていくだけだった。エレナの魔力は無尽蔵かと思えるほどで、俺に出番など全くない。
「ハァッ……ハァッ……」
しかし、十数分も戦闘を続けると、さすがのエレナの肩が上下に揺れ始めていた。
「大丈夫か、エレナ?」
「い、いえ……問題ございません! アッシュ様の大いなる御業に比べれば、この程度の消耗など……!」
強がっているが、額には汗が浮かんでいる。
【System:対象(エレナ・アークライト)の生体接続回路に中等度の負荷を検知。魔素枯渇(マナ・エンプティ)まであと12%】
視界のアラートが、彼女の限界が近いことを告げていた。
そして最悪のタイミングで、広大な地下空洞——旧浄水プラントの中枢エリアへと辿り着いてしまった。
「な、なんですか……あれは……」
エレナが絶望的な声を漏らした。
空洞の中央には、巨大な肉山のような不気味な塊が鎮座していた。これが『中枢コア』だろう。
そしてその肉山を護衛するように、これまでとは桁違いの大きさと魔力を放つ、3体の異形の巨人が立ち塞がった。
「クラスA……いや、特級の変異魔獣が3体も……っ!」
エレナが杖を構え直すが、その手が微かに震えている。魔力が枯渇寸前の彼女では、とても防ぎきれないだろう。
『警告:中枢コアの防衛システムが起動しました』
『対象(変異巨人)への遠隔パッチ適用は不可。マニュアル操作での無効化が必要です』
またそれだ。どうすればいいんだ。
「アッシュ様……」
エレナが覚悟を決めたような声で言った。
「私が、残る命を燃やして奴らを足止めします。その隙に、アッシュ様の『奇跡』で中枢の核を破壊してください」
「バカ言え、お前が死ぬだろ!」
「アッシュ様のためならば、この命など安いもの——」
「却下だ! 俺がなんとかする!」
俺はエレナをかばうように前に出た。
とはいえ、俺の魔力はゼロ。遠隔デリートボタンは効かない。
3体の巨人が、一斉に俺たちに向かって魔法の光をチャージし始める。
『マニュアル操作要件:対象に直接接触し、脳内インターフェースからコマンドラインでの部分パージを指示してください』
視界に流れたシステムメッセージ。
「脳内インターフェースからコマンドライン」……?
——その時、俺の中で直感のようなものが閃いた。
かつて図書室の地下で管理デバイスに触れた時の感覚。
俺の脳髄そのものが、世界(システム)と繋がっているという圧倒的な全能感。
「コマンドライン……つまり、俺の頭で思い描いた『指定』の通りに、ピンポイントで事象を消すってことか……?」
巨人が三方向から、極大の炎球、氷槍、雷撃を同時に放ってきた。
エレナが悲鳴を上げる。
俺は押し寄せる三種の死を前にして、極限の集中状態で脳内に『命令(コマンド)』を打ち込んだ。
『Target: Incoming_Magic_All』
『Action: Delete_Process』
『Exception: Ignore_Physical_Impact (物理衝撃のみ相殺せずパス)』
——直後。
三方向からの魔法の奔流が俺たちに直撃する寸前。
魔法を構成していた『炎の熱』『氷の冷気』『雷の電流』という有害な事象パラメータだけが、空間から綺麗に【削除】された。
「……え?」
エレナが間抜けな声を出す。
魔法の破壊力は完全に消え失せ、あとに残ったのは「魔法が放たれた際の風圧(物理衝撃)」だけだった。
生ぬるい突風が、俺たちの髪を揺らして通り過ぎていく。
「な、なにを……何をされたのですか!? 3つの極大魔法を、相殺ではなく、完全に『無害な風』へと変換した……!?」
エレナは床にへたり込み、神に祈るように目を閉じた。
よし、上手くいった。俺は初めて「マニュアルでのデバッグ作業」を成功させた。
「待ってろ、エレナ。今のはただの防御だ」
俺はそのまま、唖然として動きを止めた3体の巨人——魔獣に向かって駆け出した。
『Target: Enemy_Core_All』
『Action: Override & Format』
「消えろっ!!」
俺が両手を巨人の両足に張り手のように叩きつけた瞬間。
巨人たちの構成情報(ナノマシンの凝集)がルート権限によって真っ白にフォーマットされ、一瞬にしてただの土塊へと崩れ去った。
「おっしゃあああ! マニュアル操作、完全理解!」
ガッツポーズを決める俺。
しかし、中枢コア(肉山)はまだ残っている。
俺は意気揚々とコアに手を触れ、完全に『デリート』のコマンドを実行した。
【System:クリティカルエラーの修正を確認。王都地下ネットワークの正常化を完了しました】
【System:報酬として、ユーザーに『空間把握領域(Ping)』のアクセス権限を付与します】
視界がふっと切り替わった。
暗い地下水路の中にあって、自分の周囲100メートル以内の地形、生物の位置、魔素の流れが、丸わかりのワイヤーフレームのように脳内に浮かび上がったのだ。
「えっ……なにこれ、見えすぎる……酔いそう……」
「アッシュ様ぁぁっ!!」
俺が視界の情報の多さにフラついていると、エレナが感極まった顔で抱きついてきた。
「ついに、魔力(事象)の変換すら無詠唱で……! ああ、アッシュ様。神よ……!」
こうして、初めての「マニュアルデバッグ作業」は、俺の能力のアップデートと、エレナの勘違いのさらなる悪化という結果で終幕したのだった。
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